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スポンサー事例

オーストラリアの国民食、Vegemiteが全豪オープンのボールキッズパートナーに

https://twitter.com/AustralianOpen/status/937499356126593024

・長く保有していた海外企業から地元企業が買収したタイミングで国民的スポーツコンテンツへの協賛を決定
・独特な風味を伴う健康発酵食品のため、子供の頃から慣れ親しませることが重要であり、あらゆる活動において子供が戦略的ターゲット
・テニスをする子供なら誰もが憧れる世界4大大会での”ボールキッズ”という夢のような機会を提供


 2018年1月に開催される、テニスの世界4大大会の一つである全豪オープンにおいて、オーストラリアで人々に深く愛されている食品ブランド、Vegemiteが、ボールキッズパートナーになる事が発表された。このパートナーシップにより、Vegemiteは世界各国から集められた350人のボールキッズ達の、トレーニングから大会中の活動全般をサポートをすることになる。一流選手の近くで大会の手伝いが出来るだけでなく、チームワークやコミュニケーションスキルを学ぶチャンスでもあり、今回2500名以上の応募があった。

 日本人にはあまり聞き慣れないVegemiteだが、オーストラリアでは約8割の家庭に必ず常備されていると言われるペースト状の発酵食品で、味はとても塩辛く、少し漢方薬の様な風味を伴う健康食品として知られる。パンなどに塗って食べるのが一般的で、オーストラリアで育った人なら幼い頃より親しみのある調味料だ。Vegemiteの製造販売会社であるベガ・フーズのジェネラルマネージャーは「私達は全豪オープンで最も目に留まる存在の一つであるボールキッズチームとパートナーシップを組めてとても嬉しい。全豪オープンの様なオーストラリア人にとって象徴的なイベントで、同じくオーストラリア人に最も愛されているスプレッド(Vegemite)をボールキッズのサポートによって世界に披露する事が出来るのだ。」と述べている。

スポンサーシップに込められたブランドメッセージ

 ボールキッズのサポートは、子供の頃からVegemiteに慣れ親しんで欲しい、と言う同社のマーケティング戦略はもちろんのこと、Vegemiteの製造販売権をもつベガ・チーズ社(前出のベガ・フーズは一部門)には特別な意味がある。実はこれだけオーストラリア人にとっての国民食でありながら、その所有権は長い事アメリカの会社にあった。その昔、日本でも有名なアメリカの大手食品会社、クラフトフーズがオーストラリアの地元の会社から所有権を買い取ると、2012年からはクラフトフーズを買収したモンデリーズ・インターナショナルが保有していたのだ。しかし、地元の企業であるベガ・チーズが2017年1月に4億6000万オーストラリアドルでまた買収した。これはオーストラリア人にとって長い間望まれていた形であり、地元で大いに歓迎された。

 従って、オーストラリア人が世界に誇るビッグスポーツイベントのスポンサーを務めることは、オーストラリアブランド(Vegemite)がオーストラリア人の手に戻ってきたと華々しくアピールするのに最適なプロモーション。これにより、益々オーストラリア人に愛され、支持される事も狙いであろう。Vegemiteは、オーナーシップが変わる以前にもやはりオーストラリア人に文化として根付いているサーフィンの団体(サーフィン・オーストラリア)が行っている青少年の教育プログラムにスポンサーをするなど、オーストラリア国内では子供を対象としたスポンサー活動を行っていた。今回ベガ・チーズ社はVegemiteブランドを用いてさらに踏み込んだ大型のスポンサー契約を結ぶ事により、さらに「オーストラリアの代表的ブランド」という地位を確立し、FMCG(日用消費財)ビジネスでの飛躍を目指している。

食品会社や外食企業にとって青少年へのブランドアピールは重要

 スポーツイベントで子供を対象にしたプロモーションで有名な事例と言えば、マクドナルドによるサッカーW杯での「エスコートキッズ」がある。選手が入場する時に選手と手を繋いで一緒に入場出来る、というプログラムで2002年大会で開始して以来大変な人気を誇っており、各国で選ばれた子供達はその年の開催国へ親子で招待される。日本でも2014年の大会では11名の枠に9964通もの応募があった。この様なプロモーションについて、マクドナルドもVegemiteも「子供たちが成長する大切な時期に人生で一度の忘れられないような経験を提供したい」と共通のコメントを出している。

 食品会社や外食企業にとって、子供の頃から自社の食品に慣れ親しんでもらう事は、その後の食の嗜好を決めるにあたって大変重要で、その為にスポーツの魅力を借りて夢のある経験を提供する事は、企業にとってとても価値のある投資であると言えよう。

ライター:西牟田京子

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