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セミナー情報

第8回SSJセミナー「ミクシィの考えるスポーツスポンサーシップ」

4月11日、第8回SSJセミナー「ミクシィの考えるスポーツスポンサーシップ」を開催した。講演いただいたのは、株式会社ミクシィのスポーツ事業推進室に所属されている梶原駿さん。同社がなぜ様々なチームのスポーツ協賛を行い、実際にどのようなアクティベーションを実施しているのかお話を伺った。

◆講師プロフィール
梶原 駿
株式会社ミクシィ スポーツ事業推進室 事業開発グループ
プロ野球独立リーグ・BCリーグの運営会社(株)ジャパン・ベースボール・マーケティングのリーグ事業統括としてパートナーセールスをはじめマーケティング全般を担う。2018年12月より(株)ミクシィに転職、スポーツ推進事業室にて主に東京ヤクルトスワローズとのスポンサーアクティベーションのプランニングを担う。

友達や家族で盛り上がる『フレミリー市場』を作る

まず、ミクシィの事業についてお話いただいた。2004年に日本最初のSNSサービス『mixi』を開始し急成長。現在はスマートフォンアプリ『モンスターストライク(以下、モンスト)』が大きな売上の柱のひとつとなっている。ミクシィは「コミュニケーション創出カンパニー」と自社を定義付け、単にSNSサービスやゲームコンテンツを作るのではなく、コミュニケーションを活発化させる「触媒」となるサービスを提供することで、事業を拡大してきた。

モンストがマルチプレイ(最大4人で同時にプレイできる機能)で急成長を遂げたように、個の消費ではなく、友達や家族など親しい⼈と同じ体験の中で気持ちが高揚して発生する共感消費を、独自に『フレミリー消費(フレンドとファミリーの造語)』と名付けている。この隠れたフレミリー“市場”でのサービス展開が、近年の同社の主戦場となっているという。

親しい人のクチコミで広げるバイラルマーケティング

また、マーケティングにおいて、コア層はマーケットとしては狭いため、ライト層へフレミリー市場を広げていくことが最も重要だと語った。この構造を意識的に作ることで、コミュニケーションが盛り上げる企画やサービスを展開した際に、直接見知った人へ自然と広がる設計を心がけているそうだ。

その具体的な手法として、同社は「バイラルマーケティング」を重視している。バイラルとは、大きく拡散させることを目指すものの、一過性のブームのようなバズではなく、本当に近しい知人からの信頼度の高いクチコミで広げていくことだと捉えている。この手法のメリットは、親しい人からの反応や口コミであるがために、ターゲットにリーチするための広告費をかけずに周知が広げられることや、回りとの連帯感を感じることによりサービスの継続率が高まることだ。

モンストを例にすると、⽇ごろゲームに触れる機会がない⼈たちを含む層をターゲットとし、友達を招待すると得られるインセンティブ等「友達を誘いやすい仕掛け」を⽤意することで、ゲームをしない人を巻き込み、利用者を伸ばせたと感じているのだと言う。

SNS・mixiや、モンストで得たこのマーケティング手法をスポーツの「観戦の場」にそのまま生かすべく、次の新しい収益の軸となることを目的にスポーツ領域に力を入れている。

スポーツスポンサーシップを通してフレミリー市場を作る

そして現在、ライブやアニメなどのエンタメコンテンツを扱うミクシィ内のブランド『XFLAG』で、様々なスポーツチームや個人選手のスポンサードを行っている。

チームスポンサーを務めているのは、Bリーグの千葉ジェッツ、JリーグのFC東京、プロ野球の東京ヤクルトスワローズ、3×3バスケのTOKYO DIMEで、いずれもトップパートナーだ。既存のファン・サポーターのみならず、新しいファンの獲得や、新たな価値を提供するために、マーケティング支援も行っている。これらのチームを選んだ理由は、スポーツ界を盛り上げていくビジョンを共有でき、共に歩んでいくことに賛同してもらえたことが大きかった点だ。

個人アスリートについても、スポーツクライミングの野中生萌や、スケートボードの堀米雄斗など、2020新種目のスター選手を中心に所属契約を締結している。チームスポーツ同様に、同社のノウハウによって、「ニュースポーツ」と言われる種目をより盛り上げていきたい考えだ。

ヤクルトスワローズを盛り上げる

今年2月に東京ヤクルトスワローズとトップスポンサー契約を締結。自社の広告宣伝というだけではなく、チームをさらに盛り上げていく企業としてサポートを行う。ここまで、ファンや世の中とどのようにコミュニケーションを取ってきたか詳しく解説いただいた。

・ロゴ掲出
今シーズンより、XFLAGのロゴをユニフォームの右胸とヘルメットの側面に露出しているが、今までブランドとして統一されていた黒ロゴを、チームに寄り添う形でユニフォームに馴染むような色にこだわり、選手が動きやすいように角を削るなど、相性と機能性を最優先した。

・3月17日出陣式 キャンペーンブース
スワローズのレプリカのユニフォームにはスポンサーロゴは入っていないため、XFLAGロゴの圧着式ワッペンとステッカーを製作。球場の場外にブースを用意し、試合開始前に配布した。「選手と同じスタイルで、共に今シーズンを戦っていこう」とコミュニケーションをとり、その思いに賛同したファンがブースに殺到した。

・SNSキャンペーン
Twitterで「#応燕宣言」 をつけてメッセージや写真を投稿したファンに、抽選で選手のサイン入りユニフォームが当たるキャンペーンを実施。ハッシュタグに企業名や単発のキャンペーン名はつけず、キャンペーン告知も球団のTwitterアカウントから行った。また、当選者へのユニフォームの発送においても、オリジナルロゴ入りの化粧箱を製作し、当選者の投稿を選手が持っている生写真を同封した。当選者であるファンと選手がつながっている気持ちを意識し、SNSへの再投稿にもつながった。

現在は様々なチームや選手のサポートやマーケティング支援を行っている段階だが、今後ファンが応援の気持ちを形にしてアスリートに届けるためのサービスを展開予定だと語った。ミクシィはセミナーを開催した翌週に、千葉ジェッツと戦略的資本提携を発表。1万人規模のホームアリーナの建設計画も公表している。同社の今後のスポーツへの取り組みに、引き続き注目していきたい。

ライター:編集部

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