昨年の12月17日、第10回SSJセミナー「アイリスオーヤマの考える“事業を成長させるため”のスポンサーシップ戦略」が開催された。アイリスオーヤマのスポーツ事業を統括する石田敬取締役と、日本サッカー協会(JFA)マーケティング本部の根本敦史氏をお招きし、同社のスポーツに対する考え方、まさに“事業を成長させるため”のスポンサーシップ戦略と、今回のパートナーシップでの取り組みについて、お話いただいた。

はじめに、石田取締役にアイリスオーヤマの事業について説明いただいた。同社は生活用品の製造・卸を手掛け、年間で約1000点もの新商品を世に出している。商品開発は生活の中の課題を商品で解決していくという視点で社員が開発にあたる。この考え方はBtoB事業でも共通しており、BtoBでは日本が抱える課題解決を目的に商品開発を行う。2019年3月に本格参入したスポーツ施設事業では、サッカー場の整備やプレー環境の改善などスポーツの抱える課題を、競技特性に配慮した人工芝やLED照明などの開発で解決を図っていく。

同社は様々なスポーツのスポンサーを務めるが、大きく3つの目的に分けられるという。1つは地元仙台のチーム、ベガルタ仙台や楽天イーグルスなど、地域貢献として支援するもの。2つ目は事業への投資として捉えてパートナーシップ提携するもので、JFAとの提携もこれに該当する。3つ目はオフィシャルスポンサーとして協賛し、商品を納入する権利を得るものだ。

JFA Youth & Development Programmeについて

続いて、JFA Youth & Development Programme(JYD)について根本氏に説明いただいた。JYDは日本サッカー界の次世代の育成とサッカーの裾野を広げる普及を目的としたプログラムだ。具体的には、ユース育成のためにトレセン制度の運用や、指導者資格のライセンス制度を設け小学校にも資格を持った指導者がいる環境作りなどを行う。その他に、JFAグリーンプロジェクトとしてプロだけでなく子供達が芝生でプレーできるよう、サッカー場の整備も行っている。これらの活動をパートナー企業と協働で実施しすることで、サッカー界の課題と企業の経営課題を両方とも解決する姿を目指す。

アイリスオーヤマとJYDのパートナーシップについて

石田取締役と根本氏に今回のパートナーシップについて締結の経緯や、効果について伺った。2018年12月に石田取締役がJFAが定める人工芝の規格について調べる中で、当時JFA施設担当だった根本氏と出会った。根本氏から人工芝の水はけや耐久性の課題などを教えてもらうことで、石田取締役はこれを解決できる商品を開発することでビジネスに繋がる確信に至ったという。

その後、根本氏が現在のマーケティング部に異動し、昨年4月に石田取締役へJYDとのパートナーシップを提案された。内容はJFAの最大のリソースである、JFAや都道府県サッカー協会、登録する約9万のチームが全員サッカーで繋がる“ネットワーク”を活用するものだった。

パートナーシップの価値を徹底的に検証

提案を受けた当初、石田取締役は金額を見て絶対に無理だと思ったそうだ。しかし、パートナーシップを広告でなく投資ととらえ、JFAのブランドやロゴ使った営業活動にどれくらい効果があるか計算し、考えが変わった。スポーツ界のネットワークがない中で地道な営業活動を行った場合のコストと、JFAのネットワークを使ってターゲットに確実に営業活動を行った場合のコストを比較した。さらに広告効果の計算を行い、試合会場やパンフレットに掲載されるロゴの露出価値やメディア露出価値を換算。すると契約の金額に対して、営業活動も広告効果も十分採算が取れることがわかり、社内を説得するきっかけになった。

実際にパートナーシップ締結後、石田取締役はこのネットワークを使った営業力は想像を遥かに超えるものだったと話された。試合会場では様々な地区のサッカー協会の方にお会いすることでビジネスマッチに繋がり、営業時間の短縮に成功した。

今後効果測定していく上では2つ重視している点があり、1つは認知度の向上だ。スポーツ施設事業の認知が低かったが、ダイレクトマーケティングを行い、さらにJYD主催のカンファレンスに登壇する機会もあり、新規引合に繋がっている。もう1つは共創で、同じJYDスポンサーと協力することで多角的なソリューションを可能にしていくことだ。例えば、同じスポンサーのモルテン社と協力し、天皇杯決勝記念ボールのケースに本物の人工芝を敷いたりと新たなコラボレーションも生まれている。

最後に今後どのような活動を行っていくか伺った。根本氏は、JYDパートナー10社にサッカー界の発展に寄与していただいているので、今あるリソースを使って企業に何ができて、どんな貢献できるか考え取り組んでいくと語った。石田取締役は、一過性の支援ではなく、自社がサッカー界を支えていると一般の方にも認知を広げていきたいとおっしゃった。この数か月で得た意見やアイデアを基に商品開発を行い、メーカーとしてモノづくりでサッカー界の支援に繋げていきたいと締め括っていただいた。

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