2020年2月6日、第11回SSJセミナー「大学によるプロ野球球団へのスポンサーシップとアクティベーション~九州産業大学×福岡ソフトバンクホークスの事例~」を開催した。同大学は、スポーツをビジネス面から支えるスポーツマネジメント人材の育成を目指し、2018年4月に人間科学部スポーツ健康科学科を新設。そして、プロ野球球団である福岡ソフトバンクホークスとスポンサーシップ契約を締結し、様々な取り組みを展開している。

今回は、その九州産業大学(以下、九産大)人間科学部准教授である福田拓哉氏をお招きし、同大学のスポンサーシップ戦略からそのアクティベーション内容についてお話いただいた。

スポーツを活用して他の大学との差別化を図る

福田氏は、大学の教員でありながら、Jリーグの京都サンガや福岡ソフトバンクホークスなどのスポーツコンテンツホルダー側で働いた経験を持ち合わせ、2019年からはVリーグのヴォレアス北海道の社外取締役を務めている。さらには、現在大学がホークスにスポンサードしているため、大学准教授、コンテンツホルダー、スポンサー、と3つの側面でスポーツビジネスに携わってきた。

九産大は、福岡県の私立大学で9学部21学科、5研究科で構成され、学生は約1万500人が在籍する。”産業と大学は両輪のように一体となって時々の社会のニーズを満たすべきである”という『産学一如』を建学の理想とし、社会課題を解決できる実践力のある人材づくりを目指している。

地方私立大学の同校にとって最も重要な課題の1つが学生の獲得だ。そのために、学生にとって魅力的であり、意欲的に取り組める教育研究のテーマを示す必要があった。スポーツビジネスが政府の成長戦略の1つに組み込まれている状況下で、地元・福岡市にはプロ野球・Jリーグ・Bリーグの3大プロスポーツ球団が存在する。しかし、こうした恵まれた環境の中で、ビジネスの観点から球団・クラブと連携した活動を打ち出す大学は皆無に等しい状態であった。そこで、日本一の売上を誇るホークスへの協賛を通じた特別講座を2018年から立ち上げた。これにより「九産大では、ホークスと連携した講座を通してスポーツビジネスを学べる」という特徴を作り、他校との差別化を図っている。

ホークスとのスポンサー権利を活かした講座内容

最初の取り組みとして、2018年4月の学部開講のタイミングで、①特別講座、②インターン、③共同研究、の三本柱でスタートした。特別講座は、学部横断型で芸術や理工学部の学生も含め、ホークス職員の方に登壇いただき講義を開催した。インターンは、九州初の取り組みとして、芸術学部に在籍する写真専攻の学生が、3軍公式戦でホークスオフィシャルカメラお二人の直接指導によるスポーツフォトグラファー体験を実施した。共同研究では、スタジアムでの生観戦、映画館での試合上映、VRによる試合観戦という3つのスポーツ観戦体験を通して、観戦者にどのような脳波の違いが表れるかといった研究を行った。

そして次年度には、新たに大学、学生、球団、地域が協力して行う野球教室を開催した。こうした野球教室は通常であれば球団が実施するものであるが、学生が一から企画し実現させた。そのために、学生たちは球団オフィスに何度も足を運び、球団へ直接プレゼンテーションするなど貴重な学びの場になったという。結果的に、現役選手2人とコーチ2人を九産大野球場に招き、福岡の少年野球チームに所属する130人の子供たちが参加した。また、プロアマ規定の垣根を超えて大学の野球部員が参加した意味でも、大きな意義のある取り組みとなった。

大学側のメリットを伝え、投資の合理性を説明

こうしたカリキュラムを実現する上で、大学をどう説得し、予算を獲得するかが重要であったと福田氏は語った。まずは、「九州でスポーツビジネスといえば、九産大」のイメージを確立することと、学部横断的なプロジェクトにすることで学内連携を促進し相乗効果を生み出すことの2つのコンセプトを掲げ、大学側にメリットを伝える提案を行った。それに加えて、他大学とプロスポーツの取り組み事例を調査し、九産大とホークスの取り組みがより魅力的なコンテンツとなることを説明し、投資の合理性をアピールすることで予算を獲得したそうだ。

この取り組みの効果測定をするために、学生満足度、広告効果、学生の獲得の3つの評価軸を設定している。学生満足度は、カリキュラムの最後に行う学生への授業アンケートにおいて4点満点中3.93を獲得し、他の授業と比べても好結果となった。また、連携講座や野球教室が新聞やウェブメディアなどで紹介され、これを広告換算すると投資金額に対して十分なリターンを獲得することに成功している。学生の獲得については、面接系入試において志望理由に球団との取り組みを上げた人が24%にのぼり、着実に効果を見せている。福田氏は今後については、他の学部との学内連携をより強化し、球団との取り組みを拡張させていきたいと語った。

最後に、プロスポーツと大学がお互いにリソースを持ちわせた教育や研究がスタンダードになるために、色々な大学でこうした取り組みが広がってほしいと締めくくった。