6月4日、SSJの第3回セミナー「米国スポンサーシップ最前線」が行われた。ニューヨークに拠点を置くスポーツマーケティング会社トランスインサイト代表の鈴木友也氏をゲストスピーカーに招き、アメリカにおけるスポーツスポンサーシップの最新状況をレクチャーいただいた。また、セミナーの後半には鈴木氏、SSJの運営会社であるフラッグ取締役の大塚泰造が4月にシカゴで開催されたスポンサーシップに特化したカンファレンス「IEG2018」で感じたトレンドを紹介した。

メディアドリブンからイシュードリブンへ

まず、鈴木さんからアメリカにおけるスポーツスポンサーシップの現状について語ってもらったが、そこで強調されていたのが露出の確保を主体としたメディアドリブンから、経営課題、社会問題への解決を主目的としたイシュードリブンへとスポンサーシップの流れが変わっていることだ。

イシュードリブンの事例として紹介されたのが、デイリーズ(Daily’s)社のNFLジャクソンビル・ジャガーズとのスポンサーシップ。同社はガソリンスタンド(GS)とコンビニチェーンを経営している。アメリカにおいてコンビニはGSに併設されているケースが多いためだが、競合との差別化が難しい。GSではセルフ給油中心でコンビニまで足を運んでもらえないという問題を抱えていた。

その解決策の1つとして、ジャガーズと「Jag Dollar」という仮想通貨を開発し、一定の条件を満たすと「Jag Dollar」がもらえる施策を実施した。引き換えの条件はガス10ガロンで1Jag Dollar、コンビニでのサンドイッチ購入で2Jag Dollar、洗車サービスで3Jag Dollarといった内容だ。ジャガーズは地元の人気チームであることから、Jag Dollarという特典はガスを給油するなら同業他社ではなくデイリーズに行く。そのついでにコンビニで何かを買おうという動機づけにつながるものだ。

そして企業の社会貢献活動への考え方として、CSR(企業の社会的責任)からCSV(共通価値の創造)へと取り組みが変化してきている。その例として、SSJでも紹介したハリケーンの被害者救済と大手通信会社のT-MobileがMLBと一緒に行った#HR4HRプロモーションを取り上げた。
https://www.sports-sponsorship.jp/2018/06/4/

一方通行から双方向へのスポンサーシップ

そしてIEG2018で体感した最新トレンドとして従来のInventory(目録)、Demographics(属性)、Impressions(露出・印象)、Visibility(認知度)と言ったキーワードを軸とした一方通行であったスポンサーシップが、現在はSolutions(解決)、Experiences(経験)、Engagement(関与)、Passions(愛情)らを重視する双方向へと変化している。そして、イベント参加者は体験したブランドを他者に紹介したくなる。友人からのブランド体験に関する情報に接することで、そのブランドの商品を購入したくなる、といった声が多いことから体験型マーケティングがより重視される時代となっている。他にソーシャルスポンサーシップへの高まりと、ともに投資対効果の測定についてより細分化されたデータが求められている点を挙げた。

スポンサー側の「人」の影響力

また、メディアドリブンからイシュードリブンへと変化することで、スポンサーをする側の担当者により企画力、調整力が求められる時代となっている。その代表的な例として日本でも大きな話題となった楽天が、サッカーのバルセロナの胸スポンサーとなった事例を紹介。この契約締結には楽天の担当者であるラウル・カダバコル氏(Executive Director Global & Group Marketing & Branding / Sports & Entertainment Partnerships)の存在が大きかった。ラウル氏は前職がインドのIT企業でスポンサーシップを担当しており、当時からバルセロナ側の担当者と懇意にしていた。この信頼であり繋がりが、契約交渉においてプラスに働いたことは間違いないだろう。組織全体だけでなく、”個々の人間”の契約締結に与える影響力が強まっていることを示している。

今後もSSJでは、サイトだけでなく今回のようなセミナーとオンライン、オフラインの両方で世界のトレンドを紹介していく機会を作っていけたらと考えている。