・ラグビー女子代表チームと食パンブランドのパートナーシップ。
・女子ラグビー人口の急増に着目。
・女性の支援、ダイバーシティを積極的に受け入れるといった企業イメージアップが狙い。


Goodman Fielder社によって製造販売されている、ニュージーランドの有名な食パンブランドMolenbergがニュージーランドラグビー女子代表のスポンサーとなる事が発表された。ラグビーには15人制と7人制があるのだが、その両方の女子代表チームの試合ユニフォームと練習ウェアに今後2年間Molenbergのロゴが付けられる予定だ。

また、この契約が注目されているのには、もう一つ理由がある。それは、今回のスポンサー契約は女子代表にだけスポンサーする、というものであること。ニュージーランドはラグビー王国として知られているが、女子を単独でスポンサーする企業が現れるのは初めての事だ。これまでは、「オールブラックス」の愛称で世界的に知られる男子代表のスポンサーが、女子代表もついでにするケースが多かった(女子代表の愛称は「ブラックファーンズ」。”ファーンズ“は植物のシダ)。従って、今回の女子代表のみをスポンサーする、と言うニュースはニュージーランド女子ラグビー界にとって画期的なものであり、それには女子ラグビーを取り巻く環境の変化が大きく関係していると見られる。

2017年の世界ラグビー協会の報告書によると、2013年以降、世界的な女子のラグビー競技人口は60%増加し、女子の競技登録者数は150%増加している。現在の女子の割合は世界のラグビーの競技登録者数の実に4分の1という状況だ。

そして、ニュージーランドの女子代表に至っては、15人制ラグビーは、今まで8回開催されている女子ラグビーワールドカップのうち5回の優勝を飾っている(男子は8回開催中3回優勝)。7人制ラグビーもワールドラグビー女子セブンシリーズという国際大会で6回中4回優勝している(男子は19回開催中12回優勝)。

ラグビー女子代表の契約や報酬条件の改善への動き

これらの素晴らしい実績も踏まえて、今年3月に、ニュージーランドラグビー協会と選手会はある歴史的な覚書を交わした。その内容は、女子の15人制のラグビー代表30名と、上限45,000NZ$(約340万円)の雇用契約で、その契約には産休の権利も含まれている。もちろん、男子選手との格差はまだあり、生活費を全てカバー出来る程の報酬ではないのでセミプロフェッショナルと言えるが、女子代表選手の一人は「スタートとしては素晴らしい」と語っている。オーストラリアでも似たような動きがあり、今年1月に協会と選手会が、7人制ラグビー代表の男女の基本報酬を同じにする、という発表がなされた。

他の女子チームスポーツと比較しても、このラグビー協会の女子への取り組みはかなり進んでいると言える。ニュージーランドやオーストラリアでは、今後、少女達の将来の選択肢として「ラグビー選手になる」がより現実的になる事が期待できる。

スポーツ界のトレンドにアンテナを張る事の重要性

今回のニュージーランド女子代表をスポンサーする、というMolenbergの試みは、今年に入って女子ラグビーが大きく注目されている中、「女子代表を応援」、ひいては「スポーツする女性を応援する企業」、「ダイバーシティ(多様性)を積極的に受け入れる企業」としてポジティブな企業イメージをアピールするのにとても良いタイミングと言える。今回の発表はメディアにも好意的に取り上げられており、今後も女子代表をスポンサーする企業が増えると予想されるが、「最初の」スポンサーになったインパクトも大きい。また、ニュージーランド女子代表の場合、世界大会で安定的な強さを誇っている事から、世界規模での露出も十分期待できる。

世界的なトレンド(女性のスポーツ市場での存在感の増加)や、今はマイナーながらも良い成績を収めている競技を把握する事は、成功するスポンサーやパートナーシップを結ぶ上で欠かせない要素であろう。