- 大手飲料、食品メーカーがスポーツスポンサーシップを1つの分野に多く投資するのではなく、様々な競技、アスリートに投資していく方針に変更
- 長年勤めたスパーボウル、ハーフタイムショーの冠スポンサーを降り、リーグとの契約は継続。今後はNFL選手専用のドリンクを開発し、今年は選手にのみ提供し来年から一般販売を予定している。
- 若年層や女性へのアプローチとして大学生アスリートとのNIL(肖像権)契約 を増加。
10年に渡って続けてきたスーパーボウル、ハーフタイムショーの冠スポンサーを降りることを発表
ペプシを筆頭に様々な飲料、スナック菓子のブランドを傘下に持つペプシコは、積極的にスポーツスポンサーシップを行なっている代表的な企業の1つだ。様々な施策を行なってはいるが、その中心となるのはビッグイベントや人気リーグのスポンサーとなることで、自分たちのブランドを大々的に宣伝する手法。同社のブランドはすでに高い認知度を誇っており、商品の内容について細かく説明する必要性は高くない。だからこそ多くの人々が足を運んだり、TV観戦する舞台で大々的にブランド名をPRしてきた。
だが、近年は人々の好みがより細分化し、多くの人々が一緒になって関心を持つ国民的イベントは減ってきている。また、若者のテレビ離れが進んでいることで、スーパーボウルのように多くの人々が視聴するイベントも大半の人々がテレビで観戦する時代は終わりつつある。そういった時代の背景を受けてか、ペプシコはここに来てアクティベーションの在り方を変えてきている模様だ。
アメリカにおけるペプシ最大のスポーツスポンサーシップとして有名なのは、超一流アーティストがパフォーマンスを行うスーパーボウルのハーフタイムショーでの冠スポンサーだった。しかし、昨シーズン終了後、ペプシを含む複数のブランドが対象となるペプシコグループとしてNFLとのスポンサー契約を更新した一方で、10年続けていたハーフタイムショーから降りることが発表された。
そしてペプシはリリースでこの理由を「音楽やエンターテインメントの体験をファンに直に届けることで、彼らがブランドに期待することに対する大きな戦略的変更における最初の動き」と述べており、これからプロモーションで抜本的な改革を行う可能性があることを示唆している。
傘下のゲタレードが押し進めるマスよりも若手、多様性重視など細分化されたスポンサーシップ
その1つとして注目したいのは、NFLと共同で行う新商品の開発でありPRだ。ペプシコ傘下のゲタレードはアメリカを代表するスポーツ飲料ブランドで、NFLを筆頭に様々な競技のチームのベンチにゲタレードのロゴ入りの巨大飲料タンクが置かれている光景を目にする。『CNBC.com』によると今秋から始まる新シーズンに向けて、ゲタレードはNFL選手がワークアウト前に使用するための製品を開発。これはまずNFL選手のみに提供した後、2023年になってからの一般販売が予定されている。NFL選手が使っているというブランド価値をつけることで売り上げ増に繋げたいと思われるが、これは商品の性質上、一般層ではなくトレーニングへの意識が高い限られた層がターゲットになるだろう。
このゲタレードについては北米アイスホッケーリーグNHLにおいてペプシがスポンサー契約延長に合意と報じられている一方、2006年から継続していたスポーツドリンク部門の契約更新をしなかったことが明らかになっている。ゲタレードのスポーツマーケティングにおけるグローバル部門の代表は、『Boardroom』の取材に対して、「ひとつの分野に多くをコミットするのではなく、多くのアスリートにリーチすることを集中したい」と発言。さらに自身のLinkedInのページで、若く多様なアスリートであり、そのコミュニティーへの投資を重視する意向を示している。その流れとして今、大学女子バスケットボールで一番のスター選手であるペイジ・ベッカーズを筆頭に学生アスリートとのNIL(肖像権)契約を増やしている。彼らはNHLに比べると全体的な露出効果は少ないが、若者や女性への高い訴求力を持っている。
ペプシコといえば、スポーツスポンサーシップに巨額の資金を投入している代表的な企業の1つ。それだけに今回、徐々に顕在化してきた戦略の変更が、どのような結果をもたらすのか興味深い。