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セミナー情報

第7回SSJセミナー「米国スポンサーシップ最前線」レポート

1月22日、SSJの第7回セミナー「米国スポンサーシップ最前線 2019年トレンド予測」が行われた。アメリカのスポーツビジネスに精通するトランスインサイト代表鈴木友也氏に、昨年ニューヨークで開催されたカンファレンス『2018 Octagon Sports Marketing Symposium』に出席いただき、そこであった内容を整理し発表いただいた。前半では、伝統的なブランド企業~IT関連企業まで様々なタイプの企業に応じたスポンサーシップ活用の考え方とその実践方法について解説し、後半では、アメリカにおけるスポーツビジネスの最新状況をお話いただいた。

まず、スポーツマーケティング会社オクタゴンが提唱したスポンサーシップの考え方について語っていただいた。スポンサーをする企業は大きく2種類に分けられ、それぞれスポンサーの仕方やアクティベーションの考え方が異なるという。一つは、一般的な企業である「伝統的ブランドスポンサー」、もう一つは、ユニフォームなど競技で使用するものを供給する「スポーツ商材スポンサー」である。後者には近年新しく登場したテクノロジーを使って新しい顧客体験を生み出す企業も含まれる。

自社の課題をスポーツで解決する伝統的ブランドスポンサー

アプローチの方法は、伝統的ブランドスポンサーに該当する場合は、自社の経営課題を把握することが最も重要となる。業界特性や問題点、自社独自の問題点を整理し、サポートするスポーツ組織(リーグやチーム)と問題を解決できるホットボタンが何かを考える必要がある。

例えば、保険会社の課題として想定されるのは、他社商品とサービスや価格での差別化がしにくくブランド力が重要となる点、競合会社が乱立し熾烈なシェア争い等が挙げられる。これらを解決するためのホットボタンは、企業認知度や親和性を高め新規顧客の獲得に繋げること、潜在顧客である保険未加入の若年層との接点作り、ファンの顧客化が考えられるだろう。

ここでアメリカの保険会社ステートファームが北米プロ野球リーグMLBとのパートナーシップ(2008~2012年)で行ったアクティベーション事例が紹介された。同社はMLBオールスターゲーム前日に開催される『ホームラン競争』の命名権を取得し、このイベントに合わせてオンライン版ホームラン競争ゲームを約10週に渡り行った。ゲーム内容は実際のホームラン競争同様に10回アウトになるまで打席に立つことができ、ホームランの数を競うというものだ。ゲームでは参加者の中から毎週1名が選ばれ、選ばれた人が指定する慈善団体へホームラン1本ごとに100$を同社から寄付する仕組みになっている。また、参加者の中から毎週2名にワールドシリーズ招待券がプレゼントされ、ファンの参加意欲を引き出した。ゲームの最後には自分の通算記録が表示され、SNSで共有することも可能だ。この結果、2010年の実績では12万人のファンが述べ160万回ゲームに参加し、合計20万$以上の寄付金を集めることができた。参加登録時には「保険に加入しているか」「保険見直しのため、代理店からの連絡を希望するか」など質問が用意され、これらのデータは顧客開拓に活用された。オンラインゲームを活用することで若年層を早期に取り込むことが可能となり、チャリティを行うことでブランド力向上にも繋げているのである。

スポーツ組織の課題を自社サービスで解決する商材スポンサー

一方、商材スポンサーに該当する場合は、企業側ではなくスポーツ組織が抱える経営課題を把握し、自社の商品・サービスを活用してその解決策を検討することが重要となる。支援するスポーツ組織が盛り上がれば商品も売れるためだ。スポーツ組織の“過去”を知ることでスポーツ組織が抱える本質的な問題の理解を深め、次に“未来”を知ることでスポーツの変化を先取りし、予想される課題への解決方法を一緒に考える必要がある。

日本ではこれまで企業保有のチームが多く、稼ぐことが求められなかったため、収益活動を外注化し効率的な運営行ってきた。しかし、現在は親会社が赤字を抱える時代ではなくなり、収益化のため外注していた事業を内製化する動きにある。プレイガイドに委託していたチケット販売をネット販売により直販比率を高めたり、スタジアムやアリーナ施設を借りて使用するのではなく、指定管理者の資格取得や買収などによる一体経営が指向されている。商材スポンサーはこうしたスポーツチームの課題を踏まえることで適切な取り組みに繋げることができる。

アメリカスポーツビジネスのトレンド

セミナー後半では、アメリカスポーツ界の変化の兆しとして3つ紹介いただいた。1つ目は、試合中座って観戦だけを楽しむ観戦形態(Watch)から観戦もしながら他のことも楽しむ観戦形態(Snack)への変化だ。試合観戦の機会を提供するだけでは、顧客満足度はチームの勝敗に左右されるリスクがあり、さらに“ながら視聴”が当たり前となったミレニアム世代を惹き付けることができなくなった。近年は、試合を観戦するだけではなく、入場から退場までの全ての顧客体験が売り物になっている。この流れの中で、アメリカでは『Topgolf』が人気を博している。Topgolfはゴルフの練習スペースの後ろにソファやテーブルが配され、ゴルフをしながら友人と食事や音楽を楽しむことができる。カフェやバー、ゲーム施設など様々なエンターテイメントが充実し、ゴルフ初心者や苦手な人でも飽きずに過ごせるのが人気の理由だ。

2つ目は、アナリティクス(統計データ分析)が発展したことによる変化だ。これまで戦術分析のために使用されていたデータを応用し、スタッツを可視化することでファンに新たな楽しみを提供している。また、同時に商材スポンサーにあたるデータ分析が得意な企業としては、協賛することで自社サービスの強味をPRすることができるだろう。

3つ目は、スポーツの人気や知名度を使って社会課題を解決することが強く求められていることだ。企業の社会貢献への考え方もCSR(企業の社会的責任)からCSV(共通価値の創造)へと取り組みが変化しており、スポーツは支援を求める団体と企業を結び付ける役割を担っている。今後もこの流れは加速していくだろう。

<社会貢献については下記の記事もご参考ください>
第6回「スポーツスポンサーシップと社会貢献活動」

最後に、伝統的なブランドスポンサーと商材スポンサーという軸で、自社の取り組みを整理し評価するのもおもしろいのではないだろうかと締めくくった。2020年に東京オリンピックを控え、日本のスポンサーシップ活用がどのように発展していくか注目したい。

ライター:編集部

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