・ファーストフード大手と人気スポーツリーグ(アイスホッケー)のパートナーシップ
・ブランド戦略上、”ファーストフード”→”コーヒーチェーン”としての認知を獲得するため社名から”ドーナツ”を削除
・過去二年間の協賛で証明されたコーヒーとホッケー観戦の相性の良さをベースに、屋外スタジアムで行う試合でイベントを実施
・ユニークなCM制作の他に、リーグ公式サイトに同社のサービスがスタッフにとってもいかに重要かを語る記事を投稿
・同社のマーケティング戦略を担うのは、ボストン・レッドソックス、リバプールFC、レブロン・ジェームズをクライアントに抱えるフェンウェイ・スポーツ・マネジメント社。
店名から“ドーナツ”を外し、飲料を充実させる経営戦略の変更
アメリカ国内に9000以上の店舗を展開するファーストフードのダンキンが、2017年に開始した北米アイスホッケーリーグNHLとのパートナーシップを延長している。契約は複数年で金額などの詳細は明かされていないが、アメリカ国内のコーヒー、ドーナッツ、朝食サンドイッチが契約の対象カテゴリーとされている。
ダンキンは元々ダンキンドーナツのブランド名で展開していたが、アメリカにおいてはドーナツ店というよりもコーヒーショップとしてのイメージが強い。よく競合として比較されるのはスターバックスのようなコーヒーチェーンで、今年1月に店舗名から“ドーナツ”を取り“ダンキン”として、飲料の販売により注力していく方針を掲げた。
こうした戦略の影響もあってか、同社のアメリカ副社長は「ホッケーの世界でコーヒーが欠かせないということが、過去2年間のパートナーシップでより明確になった」と、コーヒーとホッケーの相性の良さを語っている。特に、通常の室内ではなく、屋外スタジアムにリンクを作って試合を行うことでホットドリンクの需要が一層高まる『NHLウィンタークラシック』や『NHLスタジアムシリーズ』において、積極的な露出やアクティベーションを仕掛けてきた。
ホッケーと関連付けたPRを展開
同社はスローガンに「Where There’s Hockey, There’s Dunkin’.(ホッケーがあるところに、ダンキンあり)」を掲げており、ホッケーに絡めたPRを行う。例えば、アイスホッケーで反則を犯すと一時退場として、数分間ペナルティボックスに入らなければない場合がある。これに則って有名選手が同ボックスに入っている間、同社のコーヒーを飲むユニークなCMを制作している。他にも、商品のメインカラーであるピンク色でホッケー選手のシルエットをあしらったロゴを各種キャンペーンやオリジナルグッズに展開する。
それに加え、ホッケーファンの注目が最も集まるスタンレーカップ(プレイオフファイナル)に関連付け、NHL公式サイトのコラムで編集者が、選手や観客だけでなくスタッフにとってもいかにダンキンが欠かせない存在かを語る記事を投稿した。期間中は練習や試合のたびに会場となる出場チームの1つボストン・ブルーインズの本拠地TDガーデンに通う記者たちが、その道向かいのダンキン店舗に立ち寄りお茶や朝食を済ませているという内容だ。一見すると舞台裏紹介のような記事だが、商品をアプリで手軽に購入きること、昨年新しく導入されたバーのタップ(ビールサーバーと繋がる注ぎ口)を連想させる最新のコールドドリンク提供システムのこと、そしてボストン近郊には126もの店舗が存在することが、さりげなく言及されている。
このコラムコーナーは通常選手の情報やチームの最新情報などが更新されるページで、ファンの多くが目にすると推測される。いわゆる直接的な広告露出やキャンペーン告知ではなく、スタッフの日常に登場させることで「Where There’s Hockey, There’s Dunkin」のメッセージを印象付ける狙いが伺える面白い手法だ。
ダンキンは来シーズンに向けてすでに新たなアクティベーションの計画に着手しているという。同社のマーケティングを担うのは、メジャーリーグ球団のボストン・レッドソックスを始め、英サッカープレミアリーグのリバプールFCやNBA(北米プロバスケットボール)選手のレブロン・ジェームズなどをクライアントに抱えるフェンウェイ・スポーツ・マネジメント(FSM)である点も特筆すべきだろう。今回の契約もFSMが代理店を務めており、スポーツコンテンツを活用したアクティベーションに精通するFSMがどのような手を打ってくるのか注目したい。