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売り上げ8%増、ブランド好感度20%増を実現した、大手食品企業のサッカー支援を通じたマーケティング戦略とは

写真:アフロ


・食品大手企業とスコットランドサッカー協会のパートナーシップ
・過去に社会課題に取り組むことで売り上げとブランド好感度が向上することを証明し、全ての人にサッカーを楽しむ機会を提供する活動を支援
・契約対象は男子代表、女子代表、各種障がい者代表チームで、同様の契約をイングランド協会とも締結しておりイギリスで広くマーケティング活動が可能


男子だけでなく女子、各種障害者チームもサポートする理由

M&Mやスニッカーズなどのお菓子やペットフードを製造、販売する食品大手マース社は、2011年に開始したスコットランドサッカー協会とのパートナーシップを2022年まで延長することを発表した。さらに、これまで男子代表チームのみを対象としていたのが、女子代表に各種障がい者サッカー代表チームと範囲が拡張された。

今回、同社が支援するカテゴリーを拡大したのには幾つかの理由がある。まず、スコットランド国内における女子サッカーの盛り上がりだ。先日閉幕した女子ワールドカップに初出場したことで、壮行試合には過去最高となる1万8千人以上の観客を集めるほど注目が高まっており、同協会は「重要な過渡期だ」と女子リーグプロ化の流れも示唆する。こうした流れの中で、女子サッカーの新たなファン層にリーチし、マーケットの開拓につなげる狙いがあると見られる。本件の発表が、最も注目を集めるワールドカップ開幕直前に行われたのも、こうした背景があるからだろう。

社会課題に取り組むことで売上増加とブランド好感度向上を証明

そしてもう1点、障がい者サッカーのパートナーシップについては、ある成功体験が関係している。きっかけは2016年のリオパラリンピックの際に行われた同社のチョコレート『モルティーザーズ』のキャンペーンだ。ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容)をテーマに障がい者を起用し、シリーズで制作された一連のコマーシャルでは、健常者と障がい者が日常の中で共に違いを受け入れ楽しむ様子をコミカルに描き、共生社会の推進を訴えた。

こうした取り組みの結果、モルティーザーズは当初の目標(売り上げ4%増、好感度10%増)をはるかに超える売り上げ8.1%増、好感度20%増という実績を残した。これには同社も「10年間で最も効果的な成果で、素晴らしいROI(投資対効果)を出した」とコメントする成果だった。以降、障がい者だけでなく、LGBTや女性の社会進出といった社会課題に対しても支援のメッセージを積極的に発信している。

そして昨年、以前からパートナーシップを締結していたイングランドサッカー協会と契約を更新し、女性と障がい者まで範囲を拡張した。それに続いての今回のスコットランド協会との契約拡大だ。マース社は”ジャスト・プレイ(Just Play)”という、競技レベルや年齢、性別、そして障害の有無などにかかわらずサッカーを楽しむ機会を提供する活動をパートナーシップの一環として支援している。イギリス4地域(イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド)の内、大きな2地域の協会との契約締結で、大半を網羅した活動を展開できる。それは普及活動だけでなく、マーケティングも同様だ。今回、同社の全ブランドが対象となっているため、チョコレートガムやバー、さらにはペットフードとカテゴリーを超えてのコラボレーションを可能としていることも特長的である。

このように社会課題に対して企業や製品ブランドとして取り組む姿勢を積極的に伝えるマーケティング手法のことを”コーズマーケティング(Cause Marketing)”という。マース社はこの手法を生かし、来年の東京パラリンピックやその他のイベントに関連してどのようなキャンペーンをうってくるのか、注目していきたい。

ライター:中澤薫

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