・映画館の大画面でアルコールを飲みながら観戦が可能になる。映画と違って途中で飲食を頼むケースが予想され、客単価も高くなる。
・映画興行収入が厳しい中、映画館の劇場動員数増加に繋がる。
・映画館という新たなチャネル獲得は、NFLにとってもカナダでのファン獲得戦略の一部。
・シネプレックス参加のesports部門ともパートナーシップ契約を締結。シネプレックス劇場にてNFLゲームの大会を実施。


 NFLがカナダのエンターテイメント・メディア企業であるシネプレックスと3年間のスポンサーシップ契約を結んだことを発表した。“日曜夜のNFLはシネプレックスで”と銘打たれた、これまでに類を見ないスポンサーシップの合意により、カナダ国内のシネプレックス傘下の映画館でNFLの日曜夜の試合とシーズン最終戦のスーパーボウルがライブ上映されることとなった。入場料は5米ドルで、大人のみ入場可能なVIP映画館での上映となる。このVIPでは通常の映画館に比べて幅の広いゆったりとしたリクライニングのシートで、ビール、ワイン、カクテルといったアルコールに加え、一般的な映画館と違って本格的な料理も味わえる。

 そして、フットボールの場合、1試合の時間は映画に比べると長い。さらにハーフタイムなど試合が止まる空き時間も多い。映画では一度始まると途中で飲食を注文することはないが、スポーツ観戦の場合は途中で新たな注文をすることが普通であり、映画館としては非常に高い客単価を計算できる利点もある。

 日曜夜の試合は11月12日を皮切りに、カナダ国内15の映画館で毎週上映され、来年開催の第52回スーパーボウルのライブ上映は国内50カ所の劇場に拡大される予定となっている。また、このパートーナーシップにより、シネプレックスはNFLブランドやトレードマークの使用が認められるほか、多様なイベント、スポンンサーシップ、そしてマーケティングの機会が得られることとなった。

 「この合意は、シネプレックスと1100万人を越えるカナダのNFLファンとの本当の意味での“タッチダウン”です」と述べたのは、シネプレックスの会長であり最高経営責任者でもあるエリス・ジェイコブ氏。シネプレックスは過去にNHL、NBA、オリンピック、そしてUFCやWWEの主催する格闘技イベントを映画館で上映した実績を持っており、今回の合意にはNFLというスポーツコンテンツと劇場動員数増加を結びつけようという狙いがあるようだ。事実、「今年は映画興行収入的には厳しい1年だった」とジェイコブ氏は認めた上で、「今回のNFLとの合意により、3年分のコンテンツは約束されたわけですので、次の映画はいつになるだろうと待っている必要はなくなったのです」と期待をのぞかせた。

 一方、NFLカナダ代表取締役のデビッド・トムソン氏は、「我々はカナダ市場に投資をしており、カナダにおけるNFLにとって突破口となるシネプレックスとのスポンサーシップ契約は、ユニークかつ魅力的でダイナミックな経験を提供することで次世代のNFLファンを獲得しようという我々の戦略の一部なのです」と述べており、新規ファン獲得の新機軸として今回の契約に期待を寄せている。現在、米国ではNFLの試合の視聴率が低下傾向にあるが、カナダでは増加傾向にある。カナダが、NFLにとって魅力的な市場となっていることが今回の合意の背景にあるようだ。

 今回のスポンサーシップでは、シネプレックスの映画館での試合上映に加え、シネプレックス傘下のEスポーツ部門であるワールド・ゲーミングがNFLと提携し、オンライン及びオフラインのゲーム競技トーナメント、マッデンNFL18カナディアンチャレンジを開催することが決定している。オンライン形式で行われる予選は既に開幕しており、この予選を勝ち抜いた8人のゲーマーが主催者負担でトロントへ行き、賞金2万ドルを懸けて決勝トーナメントを戦うことになっている。

 劇場ネットワーク、そしてEスポーツというゲームのプラットフォームを通じたオンラインネットワークを利用した今回のマーケティング戦略がどういう経済効果をもたらすのか、大変興味深いところだが、先ずは50カ所の劇場でライブ上映される来年2月のスーパーボウルでどのような盛り上がりを見せるのかが試金石となりそうだ。