・通信会社と大型スポーツイベント(スーパーボウル)のパートナーシップ
・試合中のCMでは架空のゲーム内で自社の5GサービスをPRし、NFL選手も登場。これに連動し、試合会場の特設ステージをオンラインゲーム『フォートナイト』上に作成した。
・試合後に中小企業の支援を目的とし、人気アースティストが多数出演するコンサートを様々なチャネルで配信。
・オンラインゲームのユーザー向けに自社サービスをアピールし、法人顧客層向けには社会貢献活動を行うことでブランディングにも寄与。
スーパーボウル開催地の特設ステージを人気オンラインゲームに提供
スポーツ大国アメリカにおいても他を大きく引き離して圧倒的な人気を誇る国民的イベントが、北米アメリカンフットボールリーグNFLの王座決定戦となるスーパーボウルだ。この大きな注目を集める一戦は、NFLの公式パートナーにとって最大の露出機会でありCMだけでなく様々な形でのアクティベーションが行われている。しかし、今年は新型コロナウィルスの感染対策による制限により、リアルな場でのイベントを自粛せざるを得なくなった。ただ、そんな中でもオンラインを活用し、積極的なアクティベーションを展開した企業もあり、その代表的な存在が大手通信会社ベライゾンだった。
スーパーボウルの試合の合間に流されるCMでは、架空のビデオゲームに集まったキャラクターたちの前で、人気俳優サミュエル・L・ジャクソンがいかに同社の展開する最新通信サービスである5Gウルトラバンドネットが素晴らしいのかを力説。最後には、ジャクソンが背後から鮫に食べられてしまうという、彼が出演した人気映画「ディープブルー」のパロディで締めくくる内容で話題となった。
eSportsの先進国でもあるアメリカでは、オンライン対戦ゲームは多くの人々が楽しんでいる大人気のエンターテインメントだ。ユーザーにとって高速で安定した通信環境は言うまでもなく重要であり、サービスの質に大きな興味を持っている。だからこそ、ベライゾンは自社の5G通信をPRするCMの題材をビデオゲームとした。ちなみに最後、背中にのって鮫を操りジャクソンを葬ったのはNFLピッツバーグ・スティーラーズの人気選手ジュジュ・スミス・シュスター。彼はトップ選手であると共にゲーム配信者としても有名で、ビデオゲーム関連機器のメーカーとスポンサー契約を結んでいる。まさに今回のCMにうってつけの人物だった。
そしてベライゾンは、このCMに連動するかのような企画を行っている。人気対戦型オンラインゲーム『フォートナイト』の特設ステージとして、スーパーボウルの会場となったレイモンド・ジェームス・スタジアムそっくりのものを提供したのだ。そして多くのプレーヤーが、このステージを使用している模様を配信するなど大きな話題となった。このステージは、ベライゾン5Gスタジアムと名付けられており、自社サービスをPRしたい層への認知度向上に大きく寄与したことだろう。
スーパーボウルを地域貢献活動のためのプラットフォームとしても活用
さらに同社は、スーパーボウル終了後には『Verizon Big Concert for Small Business』と中小企業の支援を目的とし、人気アースティストが多数出演するコンサートをCBSスポーツネットワークなどのTVに加え、ヤフー、TikTok、Twitter、YouTubeなど様々なチャンネルを使ってオンライン配信。実際、コロナの被害に苦しむ中小企業をサポートする団体に1,000万ドルを寄付し、今回のコンサートを通して支援を幅広く募った。
中小企業のサポートを積極的に打ち出すことはベライゾンにとってCSR活動であると共に、同社の重要な顧客層を守ることにもつながる大きな意義のある行動だ。そして、スーパーボウルを通してこの活動を行うことの意義を同社のCEOは、CNBCの取材でこう語る。「私たちはスーパーボウルをコミュニティーと社会により大きな方法でインパクトを与えられるプラットフォームとしても使わないといけない」
国民的イベントを通して自社の商品、サービスをより多くの人々に告知できるのが、スーパーボウルを通してのスポンサーシップ活動の大きな魅力であることは間違いない。だが、当然それだけでない活用法があり、今回のベライゾンはビッグスポーツイベントにおけるアクティベーションの様々な可能性を提示してくれている。