・世界的アルコール会社と、プロスポーツリーグ+選手会とのマーケティング契約
・欧米ではアルコール依存症が社会問題であるため、長年アルコール飲料の広告への選手の出演はリーグによって禁止されてきた(が、昨年9月に選手の肖像管理が選手会側に移った)
・ビールを飲む間に水を飲むと選手が反応し、節度を持って飲むことを啓蒙するCMを制作(アルコール依存症という社会問題に対する啓蒙活動になっている)
・試合会場ではビール購入者に水を配布し、SNSでは飲み過ぎ注意を促すハッシュタグ投稿をするなど、CM、オフライン、デジタルと統一した情報発信を行う
アルコールCMにNBA選手が出演
北米バスケットボールリーグNBAの公式スポンサーで、世界最大手の酒造メーカーのアンハイザー・ブッシュ・インベブの看板ビールブランドであるバドワイザーが、アルコール飲料への広告規制解禁後初となるNBA選手が出演するCMを作成した。
CMにはカイル・クーズマ、ティム・ハーダウェイ・ジュニア、スティーブン・アダムスといった選手が出演している。ビールを飲む間に水を飲むと彼らが反応し、飲み過ぎに注意して節度を持って飲むことを啓蒙する内容となっている。そして、レギュラーシーズンの中でも多くの視聴者が期待できるクリスマスに全米中継されたオクラホマシティ・サンダー VS ヒューストン・ロケッツ、ロサンゼルス・レイカーズ VS ゴールデンステート・ウォリアーズの2試合の合間に放映された。
.@kylekuzma is the gift that keeps on giving. And the elf that reminds you to stay hydrated between Buds this holiday season!@BudweiserUSA | #DrinkWiser pic.twitter.com/nRmdBJK7nY
— Los Angeles Lakers (@Lakers) December 24, 2018
Hydrate, mate. @RealStevenAdams @BudweiserUSA #DrinkWiser pic.twitter.com/f4HcoxIBhk
— OKC THUNDER (@okcthunder) December 22, 2018
欧米ではアルコール依存症が大きな社会問題の1つと捉えられていることから、アメリカのプロスポーツ界では選手の酒類への広告出演をリーグ側が禁止するのが一般的であった。しかし、NBAにおいてはリーグ側が管理していた選手の肖像権やブランド契約を、現在は選手会でコントロールできるようになっている。そして昨年9月、同社が選手会とマーケティング契約を締結したことで、今回のような広告出演は予想されていた。
また、このプロモーションにあわせ同社は試合会場でバドワイザーを購入したファンに水を配布する取り組みも行なっている。他にもSNSでのPRでは、”Happy H₂OLIDAYS”と水(H₂O)を強調したフレーズを入れたり、 #DrinkWiser(節度を持って飲もう) というハッシュタグも活用し、飲み過ぎに注意してほしい、と自分たちの届けたいメッセージを明確にしている。
Fans were able to #DrinkWiser on us tonight. Happy H₂OLIDAYS, everyone. #dripdrip pic.twitter.com/wxnULg6ypy
— Budweiser (@budweiserusa) December 26, 2018
社会問題を意識したCMでブランドイメージ向上へ
今回のCMでは、積極的にビールを飲むことを後押しするような内容にはなっていない。自社の商品を宣伝すると共に、社会問題であるアルコール依存症に対して配慮しているというイメージをNBAのファンに訴求することを重視したものとなっている。
その影響力を考えると、アルコール依存症などの社会問題の解決にスポーツを活用することは効果的だ。そして、アルコール飲料を販売しているメーカーとしては、プロモーションにおいても社会的責任が求められる。そうした意味で、この広告はCSRの要素を含むアクティベーションとも言える。
ちなみにアンハイザー・ブッシュ・インベブはNBAだけでなく、北米プロ野球リーグMLBでも選手を起用した広告を作成できる契約を締結しており、どのようなものが完成するか気になるところだ。一方、アメリカ1の人気スポーツリーグであるアメリカンフットボールのNFLではいまだ認められておらず、全てのスポーツで承認されている訳ではない。米国スポーツとアルコールブランドの今後の動きにはこれからも注目していきたい。