・世界的アルコール会社とプロスポーツ選手会とのマーケティング契約
・元々、アルコール依存症が社会問題である欧米では、選手のアルコール企業の広告出演は否定的であった(スポーツによっては禁止)
・選手の肖像権やブランド契約の管理が、リーグ→選手会に変更(2017年)
・今後、若年層にアプローチするために、ローカル毎に各チームの選手を起用した(彼らの生い立ちなどのストーリー性を強調)広告を実施予定
世界最大手の酒類会社が、NBA選手会、MLB選手会とパートナーシップを締結
世界最大手の酒造メーカーであるアンハイザー・ブッシュ・インベブがNBA選手会、MLB選手会とマーケティング契約を締結。これにより、同社の看板ビールブランドであるバドワイザーの広告に現役のNBA、MLB選手たちが本格的に登場することになる予定だ。
日本ではアスリートがアルコール飲料のCMに出演するのは一般的であるが、アルコール依存症が大きな社会問題の1つと捉えられている欧米においてスポーツ界は酒類の広告出演に否定的な態度をとってきた歴史がある。そしてアメリカプロスポーツにおいて、NFLは明確に選手の酒類への広告出演を禁止している。ただ、NBAとMLBでは消極的ではあったが、規則で禁止としていない。
従来の選手が登場しない広告
また、この両リーグの中でも、より積極的に選手の広告起用を行うと予想されているのがNBAだ。それは、これまでリーグ側が管理していた選手の肖像権やブランド契約について、昨年から選手会自身でコントロールすることになったからだ。ちなみに、NBA、MLBの現役選手が主役としてビール会社の広告に登場するのはアメリカにおいて約60年ぶりと見られている。
ただ、これはあくまでビールのCMや広告に選手のプレーしている写真などが使われるのみで、彼らが実際にビールを飲んだり、ビールの入ったグラスを持ったりする絵が使われることは社会通念的にもない状況だ。古くはイチローが、日本でビールのCMに出て美味しそうに飲んでいる映像を見たアメリカ人が驚いたという逸話があるが、それは前述のような社会的背景があるからだ。
若年層へのPR強化、ローカル重視の戦略
少なくとも今回のアンハイザー・ブッシュの広告戦略の変更にあるのは、より若者層へのPRを意識したものであると推測できる。特定の選手を起用することで、それぞれの生い立ちや背景を生かしたよりストーリー性、メッセージ性を持ったプロモーションを行いやすい。それは自然と従来に比べSNSなどでの拡散力を持つコンテンツとなってくることが期待できるだろう。
選手を登場させた広告
また、NBAにおいてまずは16の異なる都市をフランチャイズとするチームの16選手を使った広告を実施。将来的にはさらに増やしていきたい意向を同社は示しており、“おらが街のヒーロー”にスポットライトを当てたキャンペーンを増やすローカル重視の戦略の意図も伺える。
ちなみに同社はMLBとは1980年、NBAとは98年からリーグのスポンサーを務め、それぞれの多くのチームとも契約。リーグロゴ、チームロゴを使っての広告を行うことは可能だった。それが選手も使用できることで、どういうプラス効果が期待できるのか。それともアスリートのアルコール飲料の広告出演は好ましくないと、社会から反発を受けるのかその反響には大きな注目をしていきたい。