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シアトル・マリナーズ本拠地の新名称は『Tモバイルパーク』に。携帯キャリア業界の異端児、Tモバイルの狙いとは

https://twitter.com/Mariners/status/1075436112296976393


・携帯通信キャリア会社がプロスポーツチームの本拠地の命名権を購入
・携帯サービス本体で実施しているキャンペーンと連動し、毎週火曜日に球場でも割引チケットや無料特典の提供、席のアップグレードが可能になる
・ビール割引、専用入り口からの入場(並ぶ必要なし)や、自社名を付けた観客席エリアは30分早く開場し、試合前の練習風景を見ながら地元有名シェフが監修した食事を楽しめるといった自社携帯ユーザーを優遇した施策を実施。


Tモバイルが命名権を取得した理由とは

北米プロ野球リーグMLB、シアトル・マリナーズの本拠地セーフコフィールドは、イチローなどの活躍のおかげで日本人にも馴染み深い球場のひとつである。ところが、そのセーフコフィールドが今はもう存在しないということは、意外と知られていないのではないだろうか。

実は、球場の誕生から20年間ネーミングライツ(命名権)を有していたセーフコ社との契約が2018年末をもって満期を迎え、2019年からは携帯通信キャリアのTモバイルが権利を取得し、『Tモバイルパーク』となった。契約は25年で8750万ドル(350万ドル/年)と報じられている。同社は何故この契約に踏み切ったのか。

Tモバイルはシアトルにアメリカ本社を置き、米国内ではシェア3番手の携帯通信キャリア企業だ。業界内では後発であることから当初は、低迷してきた歴史がある。しかし2013年に自らを“Un-carrier(非キャリア)”と称し、これまでの大手競合他社が築いてきた業界の慣習を打ち壊す数々のキャンペーンを開始した。それまで当たり前だった2年契約の縛りを撤廃したことに始まり、他社からの乗り換え時に前キャリアの解約費用等を負担する制度や、海外ローミングの完全無償化、さらにiPhone人気機種を1週間無償でお試しレンタルする試みなどだ。この大胆な戦略が功を奏して2015年に国内3位にのし上がり、その後も着実にシェアを拡大している。

そんな同社が、この独自性のある姿勢をより多くの人に広めようと選んだ新たな一手が、マリナーズ本拠地の命名権取得だ。といっても施設の名称に企業名を付けることは、アクティベーション全体のほんの一部に過ぎない。メディア露出の広告効果以上に、自らの名称を冠した施設で様々なファン体験を提供し、自ブランドに対する好意形成を行うことこそが真の目的ではないだろうか。

携帯キャンペーンと連動した試みを積極展開

昨年末に発表したリリースでも既にいくつかの施策が伝えられ、その1つは前述のUn-carrierキャンペーンと連動した『Tモバイルチューズデー』である。Tモバイルは、毎週火曜日にアプリを通じてユーザーへ多種多様なクーポンを配信している。例えば、ガソリンスタンドやファストフード店、オンラインショップなどで使える割引券、コーヒーショップのコーヒー1杯無料券、映画の割引チケットなど多岐にわたる。

Tモバイルパークでも、このキャンペーンを踏襲し、毎週火曜日に割引チケットや無料特典の提供、席のアップグレードなどを予定していることが明らかにさている。また、センターからレフトの観客席エリアを『Tモバイルペン』と名付け、他のゲートより30分早く開場するという。ここでは、ブルペンの投球練習やフィールドでの打撃練習を見ながら、地元の有名シェフが監修したローカルフードなどを楽しむことができる。日によってはギブアウェイが用意されたり、DJが場を盛り上げ、試合開始前からパーティー気分を味わうこともできるようだ。

ちなみに、プレーボール1時間前までをハッピーアワーとし、ビールもお買い得になる。その他、専用の入り口を用意し快適な入場を可能にするなど、Tモバイルユーザー限定の施策も予定している。こうした体験を通じて同社の強みとメリットを伝えていき、ブランドのイメージアップ、さらには加入者増加に繋げていくことが、今回の命名権取得の本質的な狙いと見られる。

昨今ではスマートフォンやタブレットなどモバイル端末で情報を収集しながらスポーツ観戦を楽しむ“セカンド・スクリーン”と呼ばれる観戦方法がトレンドにもなっている。そうした側面からも携帯キャリアとスポーツコンテンツの親和性は高まっていると言えよう。Tモバイルパークについて現時点で明らかにされているアクティベーションはまだごく僅かだ。これからどんな試みが行われ、同社のビジネスにどれだけの追い風となるのか、今後の展開にも期待していきたい。

ライター:中澤薫

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