・ホテル大手企業とプロスポーツチームのパートナーシップ
・買収した系列グループのポイントシステム統合、新システム導入の情報発信、利用率向上、という目的
・貯めたポイントによって、VIPルームでの観戦の他、スタジアムアナウンサー体験、スタジアムに到着した選手の出迎え、用具マネージャーとなり選手の着替えの準備が体験できる(他スポーツとのパートナーシップでも同様のプログラムを実施)


人気クラブのスタッフを体験できる豪華サービス

米国に本部を置き、130の国と地域におよそ6900ものホテルを有する世界有数のホテルグループ、マリオット・インターナショナルが、世界中にファンを持つイングランドの人気サッカーチーム、マンチェスター・ユナイテッド(以下、ユナイテッド)とパートナーシップ契約を結んだ。この契約を利用し、同社は自社会員システム『マリオット・ボンヴォイ』の利用者にお金では買えない特別な体験を提供、競合他社との差別化を図ることで、顧客の拡大および囲い込みを狙うとみられる。

この会員制度は誰でも無料で登録可能で、全世界の系列ホテルを割引価格での予約や客室Wifiの無料利用、宿泊や提携クレジットカードの利用などでポイントを貯められるシステムだ。航空会社のランクのように利用頻度や支払い金額が増えれば会員のステータスが上がり、ポイントの還元率も高くなる。そして様々な形での特典が用意されている。

そして、今回のパートナーシップで注目すべきは、この特典にユナイテッドが関連していることだ。専用サイトから保有ポイントによる入札制でホームゲーム観戦に応募できる。ラグジュアリーなVIPルームでの観戦が約束されるだけではなく、スタジアムアナウンサー体験や、ホームスタジアムに到着した選手の迎え入れ、さらにはチームの用具マネージャーとなって更衣室で選手の着替えの準備といった生涯忘れられない体験ができる点である。ファンであればまさに喉から手が出るほど羨ましい権利で、このチャンスを得るにはマリオット・ボンヴォイのロイヤル会員になる以外に方法はないのだ。

3ブランドを統一した新しいポイントシステム

実はこの会員制度は今年2月13日にローンチされたばかりの新しい制度だ。それまではマリオット系列と傘下のリッツカールトン系列、さらに2016年に買収したシェラトンやウェスティンを擁するスターウッド系列と、それぞれ別々の会員制度が運用されていた。この3つのブランドを統一して利便性を高め、プラットフォームも刷新する新システムの導入は、同社にとって非常に重要な経営の変革であろう。だからこそ、より多くの人に認知してもらおうと、アカデミー賞にノミネートされた映画監督を起用したコマーシャルを制作するなどPRに力を入れている。

それに加えて世界有数のフットボールクラブのブランドを活用することにより、ターゲットである富裕層はもちろん、潜在的な顧客にまで同社の存在および会員制度の情報を拡散することが、このタイミングでパートナーシップを締結した理由だと考えられる。

なお、同社は旧来のポイントシステムでも北米プロバスケットボールNBAや世界最高峰の自動車レースF1といった人気のスポーツ組織と提携し、観戦サービスを提供してきた。今回のユナイテッドとの契約は、こうした戦略が十分な投資対効果を積んできた証拠でもあるだろう。

昨年末に経済メディアのブルームバーグが発表した調査によると、ユナイテッドは全世界に6億5900万人ものファンを持つという。ここまでグローバルなマーケットを有するスポーツコンテンツは他に例を見ない。マリオット・ボンヴォイは旧システムからの移行会員が述べ1億2千万人いるが、新たなパートナーの力を借りてこのコミュニティをどこまで拡大してくことができるのか、注目していきたい。