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日本ハム、リバプールFCとのパートナーシップでフードバンクを支援

©LFC

2019年4月11日、日本ハム株式会社(NHフーズ)がサッカープレミアリーグの名門「リバプールFC」とのパートナーシップ締結を発表した。同社はこのパートナーシップにおいて、リバプールFCが社会貢献事業として運営するフードバンクをおもにサポートするが、その背景にはどのような狙いがあるのだろうか。

英プレミアリーグのリバプールFCは、これまでリーグ優勝18回、欧州制覇5回を果たした名門クラブ。200以上の国と地域で試合が放送されていることから、欧州、アジア、アフリカなど世界中に熱狂的なサポーターを持つことで知られており、その数は10.7億人に及ぶとも言われている。

かつては日本企業の日立が、企業名の世界的露出を狙って3年間にわたり胸スポンサーとして契約を結んでいたこともあったが、最近ではその露出力はもちろん、クラブのブランド力から生まれる信頼性の高さやファンとのエンゲージメントの強さにも世界中の企業が注目している。まさに、そこに着目したのが日本ハムだ。

きっかけはファイターズのレッドソックス本拠地視察

このパートナーシップの背景にあるのは、リバプールFCの親会社であり、メジャーリーグ球団ボストン・レッドソックスの親会社でもある「フェンウェイ・スポーツ・グループ(FSG)」と、日本ハムが保有するプロ野球球団「北海道日本ハムファイターズ」の出会いだ。2023年の新球場オープンに向け、ファイターズの職員がレッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークを視察に訪れたことがきっかけだった。

リバプールFCには、社会貢献事業を展開する「リバプール・ファウンデーション」が存在し、その中に地元リバプール市の課題解決に特化した「レッド・ネイバーズ」というプロジェクトがある。このプロジェクトにおいて特にクラブが力を入れているのが、地元の低所得者層向けに開放しているフードバンクだ。リバプール市、特にクラブの本拠地グラウンド「アンフィールド」近辺の地域は、イギリス国内でも貧困問題が深刻化した地域として知られている。まずはこのフードバンクの取り組みにおいて食のリソースや資金面を充実させ、ゆくゆくは地元だけでなく世界に食支援を届けることをミッションとしているリバプールFCに対し、ファイターズが食品会社である親会社を紹介したことが始まりだった。

日本ハムがリバプールのフードバンクを支援する理由

一方、日本ハムは「NHフーズ」としてグローバルにビジネスを展開する中で、食品会社としてさらなる知名度とブランド価値の向上、そして信頼の構築を狙っていた。すでに様々な食支援を展開してきた同社だが、「世界で一番の『食べる喜び』をお届けする会社へ」という理念をわかりやすく体現するためにも、より共感を得られる戦略が必要だった。日本ハム側は、フードバンクの支援によって貧困や飢餓といった社会課題解決にアプローチすることが、その理念の体現につながると判断。リバプールFCがこれまで培ってきた世界的ブランド力も、そのためのプラットフォームとして有効であると考え、二社の需要と供給が一致する形となった。

パートナーシップ締結発表を前に、日本ハムの畑佳秀社長がクラブのOBとともにリバプールのフードバンクを視察。現場のニーズなど状況を理解することからアクティベーションがスタートした。今後アジア地域で行われるファン感謝祭(LFC World)ではNHフーズが手掛ける食品のサンプリングも企画されており、初期の段階では“お披露目”的なアクティベーションがメインとなるが、「食べる喜び」を伝える選手やOBの映像コンテンツなど、ユニフォーム組を巻き込んだ施策も追って実施していくという。もちろん、スポーツスポンサーシップの定番であるLED看板での社名露出はもちろん、VIPラウンジでの試合観戦や練習見学などの特別体験も契約に含まれている。

日本ハム畑社長によるフードバンク視察。リバプールFCのレジェンドであるロビー・ファウラーとともに訪れ、担当者より現状をヒヤリングした。/写真©︎LFC

スポーツの価値を熟知し、ビジネスと社会貢献に活用

今回のパートナーシップのポイントとして、日本ハムがファイターズの親会社としてスポーツの価値を熟知していたことが挙げられるだろう。東京から北海道への本拠地移転によってチームブランドを再生させた経験を持つ同社は、さらなる自社コンテンツ(チーム)の成長のために、ビジネスと社会貢献の両フェーズにおいてスポーツの活用法を現在も貪欲に追求している様子が伺える。

実際、ファイターズとの連携を担当する同社のスポーツコミュニティ部は、リバプールやレッドソックスにおけるFSGのブランド構築スキームに大きな関心を抱いており、ノウハウのシェアも希望しているという。つまり、パートナーシップの先にある価値まで見据えているということだ。

リバプールFCのほうも、日本ハムとパートナーシップを組むことによる日本国内のサポーター開拓、さらにはNHフーズのマーケットであるASEAN地域にまでフードバンクの活動を広げることで、クラブの魅力を改めて世界に発信する機会を創造できる。

単なる広告宣伝ツールに留まらないこのパートナーシップにおいては、日本のプロ野球チームであるファイターズと、プレミアリーグの名門クラブであるリバプールFCの将来的なコラボレーションにも期待が膨らむ。FSGのスキームを日本ハムが習得すれば、ファイターズがグローバルブランドになる可能性もあるだろう。

ライター:岡田真理

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