・地元出身有名アーティストがプロスポーツチームのアンバサダーに就任(きっかけはチームのホームゲームのフリーパス)
・アーティストのプロデュースするファッションブランドとコラボし様々なプロモーション活動を行う(①限定ユニフォームを制作、②市と連携し、地域のコート改修に寄付、③ユース世代を支援するために寄付)
・その他、チーム練習施設を命名権取得し、ブランドロゴのついた練習着を選手に着用させてシーズン後に販売。
・インフルエンサーに留まらず、共にストーリーを築くことで双方に効果がある


2013年に地元人気ラッパーがチームアンバサダーに就任

北米プロバスケットボールNBAに所属するトロント・ラプターズは、2013年9月に同郷出身で世界的な人気ラッパーのドレイクを、チームのグローバルアンバサダーに任命した。元々ドレイクはラプターズの大ファンであることを公言しており、ホームゲームのコートサイドで頻繁に目撃されていた。

そんなドレイクがアンバサダーに起用されたのは、2016年のNBAオールスターがトロント開催に決定したことがきっかけだった。彼はラプターズホームゲームのフリーパスだけを謝礼に、無償でこのポジションに就任。オールスターの企画制作に参画したところ、彼の知名度は大きな反響を集める助けとなった。こうした経緯を経て、両者は2017-18シーズン中に実施したプロモーション『ウェルカム・トロント』を共同で展開していくと発表し、向こう5年間で具体的に3つの計画に取り組むことを確約している。

1点目はドレイクがプロデュースする人気ストリート系ファッションブランド『オクトーバーズベリーオウン(OVO)』とのコラボレーション企画だ。現在NBAでは毎年各チームが通常のユニホームとは別に、それぞれの地元をテーマにしたシティエディションを制作し数試合だけ着用する。2018-19シーズン、ラプターズの同エディションはOVOが手がけ、ブランドカラーであるブラックとゴールドの仕様となった。ドレイクがトロントの通称「THE 6」を浸透させたことにちなんで6試合で着用され、その6試合はコートもOVO仕様のデザインに彩られた。

<OVOが手がけたシティエディションジャージ>

2点目はトロント市とタッグを組み、地元コミニュティのバスケットボールコート改修に2年間で100万CAドル(約8千万円)を寄付する計画だ。すでに2018年11月までに老朽化した4つの施設がOVO仕様に生まれ変わっており、さらに今年4つのコートを改修予定としている。それに加え、3点目としてユース世代の環境をより良くするため、バスケットボールの普及目的で5年間200万CAドル(約1憶6千万円)を寄付するという。

2019年3月には上記に加えてOVOがラプターズの練習施設の命名権を取得、2016年にオープンした施設は『OVOアスレチック・センター』と改名された。選手達はOVOロゴが胸についた練習着を着用してトレーニングを行う。なお、この練習着は今シーズン終了後に販売予定だ。

<OVOアスレチック・センターの紹介動画>

宣伝に留まらないアンバサダーの起用方法

ラプターズとしてはドレイクの知名度を借りて、世界中の彼のファンにリーチすることができる。OVOとのコラボレーションでは物販の促進が期待でき、前述したチームの地域貢献活動などもより広く認知してもらえるはずだ。ドレイクとしても、自身ブランドのプロモーション機会を得られると同時に、一貫して地元への愛を表現し続けることで好感度アップを期待できる。

NBAではこの事例以外にも、ブルックリン・ネッツが地元に根ざした人気ラッパーJay.Zプロデュースのもとチームブランディングを一新するなど、バスケットボールと親和性の高いヒップホップアーティストを起用している。いわゆるインフルエンサーとしての看板役にとどまらず、共にストーリーを築き、より深い活動を行うパートナーとなることで、双方にプラスの効果を生むこうしたタレントの起用方法は、日本のスポーツ組織にも大いに参考になる。