・大手ビールメーカーとプロスポーツチームの長年続くパートナーシップ
・チームカラーと同じ赤色で原料にもこだわったオリジナルビールを製造し、ロゴラベルもパッケージも赤にして国内外で販売
・チームに深く根差したストーリー性の高い商品開発を行うことで、他社と差別化を図る
チームをイメージしたオリジナル商品を開発
デンマークの大手ビールメーカー、カールスバーグは長年に渡り英サッカープレミアリーグの強豪リバプールFCのスポンサーを務めている。そして、両者は5月23日付で2023-24シーズンまでの契約延長を発表した。これで1992年にスタートしたこのパートナーシップは、英プレミアリーグで最長となる31年間の継続が見込まれることとなった。
カールスバーグはこれに先立ち、リバプールFCのチームカラーと同じ真っ赤なビールを製造する独創的なアクティベーションを展開する。今でこそ全身赤いユニホームのイメージが定着しているが、実はかつてパンツとソックスは白だった。これを変えたのが、チームを強豪に仕立て上げた伝説の監督、ビル・シャンクリーだ。彼は1959年に監督に就任し、2部に低迷していたチームを3年目で1部に昇格させた。1964年には心理学的な見地から「敵を威嚇し、自らを鼓舞する」として全身赤いユニホームを採用すると、チームはそこから快進撃を続け黄金時代を築いた。名将として今でも本拠地アンフィールドには銅像が置かれている。同社は彼のこの英断を称えるとともに、昨今の学術調査により赤をチームカラーとするスポーツチームは統計的に勝率が良いという研究結果に基づき、真っ赤なビール『レッドバーレー』の開発に挑んだ。
Is science behind @Carlsberg's #allred beer?
Probably. pic.twitter.com/nwO1Odeb07
— Liverpool FC (@LFC) April 27, 2019
これは従来のレッドエールとは製造方法が異なり、より鮮明な赤色を追求するために収穫量の少ないアジア原産の麦芽から抽出した色素を使用している。完成までには1年以上の実験を重ねてきたという。本来同社のブランドカラーは鮮やかな緑だが、レッドバーレーはロゴラベルと限定パッケージボトルも赤色で、一層特別感を演出している。4月25日のホームゲームでお披露目されたのを皮切りに、イギリス国内にとどまらず同社の拠点であるデンマークに隣国スウェーデン、さらには中国やインド、香港と海外のファンに届けられている。
ストーリー性を重視し競合他社と差別化を
実は同社がこうしたビールの開発を行うのはこれが初めてではない。2017年には、パートナーシップ25周年記念にリバプールの歴史を閉じ込めた特殊なホップを使ったビールも製造していたのだ。コペンハーゲンにある工場で生育する赤いホップの土壌にはアンフィールドの土を使用し、さらに360度スクリーンで囲い、25年にわたるリバプールの勇姿や観客の歓声を見聞きさせ続けた。こうして生産されたホップを使用した記念ビールは、ファンならば一度は口にしたいと思ったことだろう。今回はいわばこの続編であり、同時に第1作が好評だったという裏返しとも捉えられる。
今月リバプールFCは欧州サッカー連盟(UEFA)が主催するチャンピオンズリーグを制し、ファンは勝利の美酒を堪能したことだろう。ビールは言わずもがなスポーツと好相性な商品の代表格であり、それゆえに多くのビールメーカーが様々なチームのスポンサーをしている。だからこそ、競合他社と明確な差別化を図り、優位性を担保するためには本件のようなストーリー性が重要だ。パッケージデザインの変更といった誰でもできるキャンペーンにとどまらず、“deep rooted(深く根ざした)”と評される独自性の極めて高いアクティベーションをすることで、話題を呼び、さらにファンの心理にもより深く刻まれる。加えて、リバプールFCはもとより、サッカーファンならずとも、ビール好きなスポーツファンの興味を誘うことは間違いない。