・オンラインギャンブル企業とプロスポーツチーム(2部リーグ所属)のパートナーシップ
・新シーズンユニフォームにたすき状に企業名を掲示し、批判が殺到。後日フェイクだったことを発表し、本物には社名を掲示しないことを宣言。
・フェイク版はチャリティーオークションに出品し、さらにユニフォームは企業の宣伝の場ではないとして”Save Our Shirt(シャツを守れ)”キャンペーンを展開
・2部リーグでメディア露出が多くないことから、話題作りを行い注目を惹いた


ユニフォームにたすき状に大きくスポンサーロゴを掲出

イングランドのフットボールクラブ、ハダースフィールド・タウンが7月17日に新シーズンのユニフォームをお披露目したが、そのデザインが物議を呼んだ。なぜなら、クラブの伝統である青と白のストライプを斜めに横断するように胸スポンサーであるオンラインギャンブル会社パディ・パワーのロゴが大きく掲示され一際目を引くものだったのだ。加えて、アウェー用では、全体が大量の細かな同社のロゴで埋め尽くされていた。

2部にあたるチャンピオンシップに所属するクラブは、このユニフォームについて「メインスポンサーであるパディ・パワーは大変先進的かつ革新的だ。この最先端のデザインは非常にキャッチーで、我々もイノベーターであるという評判を維持してくれる」とコメント。ところが、このデザインには予想通りというべきかファンから批判が殺到した。

しかし、実際にこのユニホームを着用して行った7月18日のプレシーズンマッチの翌日、これが実はフェイクだったことを発表したのだ。さらにパディ・パワーは「サッカーのユニフォームスポンサーシップは行き過ぎている。スポンサーとして、自分の居場所をわきまえるべきであり、それはユニフォーム上ではないことを我々は理解している」と、自社名やロゴを一切掲出しないと宣言。また、この考えを他のスポンサーにも伝播させるべく“Save Our Shirt(シャツを守れ)”キャンペーンを開始している。

一方、クラブは改めてスポンサー名が一切付いていない本物のユニフォームを公開した上で、プレシーズンマッチで着用されたフェイク版の15着は地元に還元するチャリティオークションにかけることを明らかにするなど、こうした一連の”ネタばらし”が再び大きな話題となったのだ。

メディアへの露出機会が多くないならば話題づくりを

本来、ユニフォームへのロゴ掲出はクラブスポンサー権益の中でも上位に位置付けられ高額だ。その権利を自ら手放すことは、一見すると費用の回収が危ぶまれるようにも思える。しかしながら、チームは2部に降格したためそもそも1部のプレミアリーグと比較すればメディアの露出機会は大きく劣る。

そうであれば、煩わしいとネガティブな声も少なくないロゴ掲出をシーズンを通して続けるより、ユニークな戦略でメディアやSNSを引きつけ、爆発的な話題作りおよびファンの認知度や好感度の向上に活用した方が効果的という判断があったと推察できる。実際に、クラブがユニフォームを初めて掲載したTwitterとInstagramの投稿には、合わせて7500件を超えるコメントが寄せられており、関心を集めることに成功した。こうしたマーケティングの考え方は、必ずしも知名度や注目度が高くないスポーツコンテンツのスポンサーシップにおいて、特に参考になるだろう。

ちなみにその後、このフェイクユニフォームについては、ロゴのサイズが規定違反だったとして、イングランドサッカー協会がチームに説明を求める事態に発展している。恣意的なプロモーション施策だったと明らかになったこともあり、これから何かしらの罰則や罰金等が課される恐れがあるが、チームからすればお陰で話題が継続できるとも言える。これも計算のうちなのかはわからないが、本件はまだしばらく注目を集めることになりそうだ。