・化粧品ブランドによる男女格差解消を求めたキャンペーン
・昨年NASAが史上初、女性のみのチームによる宇宙遊泳を実現したことに着目し、過去に宇宙飛行をテーマにした映画に出演した女優を起用したCMを制作。
・女性が全体の28%しかいないテクノロジー系学問分野の教育に対する女性支援(設定したキーワードのハシュタグ投稿がされる毎に寄付をするという仕組み)
・全国的に注目の集まるスポーツイベントにおいて、TVCMをOA。(同社のYoutubeアカウントでの再生回数は1200万回を超える)


化粧品メーカーが試合中のCMで男女格差是正を訴求

基礎化粧品ブランド大手のオレイは、スーパーボウル(北米アメリカンフットボールリーグNFLの決勝)の試合中にCMを放映した。これは昨年10月にNASAが史上初となる女性のみのチームによる宇宙遊泳を実現させたことにかけ、女性だけが乗船する宇宙船を打ち上げ、なぜ女性だけが宇宙船に乗船したのか、その理由は試合中のCMで明かしている。このCMには元宇宙飛行士の女性に加え、2016年公開の映画「ドリーム(原題;Hidden Figures)」の主人公で、アメリカ人が初めて宇宙飛行を実現した際に、軌道計算の責任者として重役を果たした実在の女性キャサリン・ジョンソン氏を演じた女優らが起用された。

スーパーボウルといえば全米が熱狂する国民的一大イベントであり、普段はフットボールに興味がない層も家族、友人たちとTV観戦する。そのため、ニールセン社の調査によると試合視聴者の半数にあたる約47%は女性ファンとされている。しかしながら、男性の娯楽としてのイメージがあるせいか、過去の試合中継時のCMでは女性の起用は27%にとどまる。そこでオレイは「メイク・スペース・フォー・ウーマン」(Make Space for Women)、「女性の居場所を作ろう」というメッセージを込めたキャンペーンを展開し、女性しか登場させないことで、まずはCM出演者の男女格差を是正しようと試みた。

さらに同社は実際の社会にある男女格差の解消に向けて動いた。具体的には、女性が全体の28%しかいないテクノロジー系学問分野、通称STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematicsの略で、科学、技術、工学、数学の分野を総称する)教育に対する女性支援だ。 キャンペーンを告知した1月25日から試合翌日の2月3日までの間、#MakeSpceForWomenのハッシュタグがツイートされるごとに1ドル、最大で50万ドルを、主に大学生以下の女子を対象に科学技術教育の機会を提供する非営利組織、『Girls Who Code』に寄付した。このCMは話題となる同社のYoutubeで放送しているものの再生回数は1200万回以上に達している。

社会課題に対してアプローチし競争優位性を生み出す狙い

同社の狙いはスーパーボウルという全米が注目する機会を活用し、化粧品の機能性や品質をアピールすることではない。一連のキャンペーンによって男女格差是正という女性が関心を寄せる社会課題に対する取り組む姿勢を示し、同社製品のターゲットに対する好感度を高めることがこのキャンペーンの最大の目的である。

こうした社会還元型の手法は、コーズマーケティングと呼ばれ、2010年頃からアメリカでは特にコンシューマー向け販促戦略として浸透している。ただ、昨今は世界的なSDGsの普及なども影響し、地球環境保全や人権の保護など自社の利益に直結しない社会貢献に積極的な企業は、長期的な経営体力が見込める”サステナブル投資銘柄”として金融メガトレンドになっている。

こうした側面からも、企業のマーケティング戦略はただ効率的に商材の利点や差別化を訴えるだけではなく、組織として社会課題に対してアプローチを仕掛けることが、イメージ向上のために求められる状況となっている。そこに今回のケースのように注目度の高いスポーツイベントを絡めることで企業の姿勢をより広くアピールすることは、有効な一手といえるだろう。