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インタビュー

川崎ブレイブサンダースの目指すスポンサーシップの形(後編)ースポンサー企業とともに成長できることをセールスポイントにー

©KAWASAKI BRAVE THUNDERS

7月上旬、男子プロバスケットボールBリーグの川崎ブレイブサンダースは、オンラインによるスポーツビジネスセミナーを実施。同じDeNAグループであるプロ野球、横浜DeNAベイスターズの岡村信悟代表取締役社長、川崎の元沢伸夫代表取締役社長がそれぞれの球団、クラブの事業戦略について語った。スポーツチーム自体がこういったセミナーを主催することは時折見られても、参加者を法人対象として行うのは珍しい。そこには現在コロナ禍によって活動にいろいろと制限がある状況においても、スポンサーシップの新規開拓を図るクラブの積極的な姿勢が現れている。そこで今回はセミナー終了後、元沢社長に過去2シーズン連続でリーグ1位となる入場者数の伸び率を達成、さらに先日にはNTTドコモとの資本業務提携を締結するなど、右肩上がりの成長を見せている川崎がこれから目指しているスポンサーシップの形について伺った。

選手を使った濃密なアクティベーション

――デジタル以外で、スポンサーシップ においてこれから強調していきたい分野はありますか。

デジタルと同じく徹底的にやっていこうと思っているのは、私たちでソーシャルと呼んでいるSDGs(持続可能な開発目標)×スポーツの分野です。これはボランティアやCSR、地域のためにという意味ではなく、より事業に近い領域で、さらに、マーケティング戦略上の事業貢献として徹底的にやっていくことを指します。

現状は、まだまだ川崎の試合を見たことがない地元企業さんが圧倒的に多い。なんとなく川崎のことを耳にするようなったというくらいで、そんな方々といっしょに行っていくアクティベーション商材としてSDGsへの取り組みは非常に共感を得やすいと思っています。地元のスポンサーさんと新しいファン開拓のためのマーケティング活動としてSDGsをやっていきます。

――同じ神奈川を拠点とするプロ野球の横浜DeNAベイスターズ、Jリーグの川崎フロンターレといった他競技のチームにはない川崎の持ち味はどこにあると思いますか。

成長速度ですね。1年後の川崎はこんなふうに成長できていると、常に示し続けることしかないと思っています。先ほどのセミナーでもこの2年間、いろんな意味で事業的にもチームとしても成長したと言いましたが、これをずっと続けていかないと、ただの力のないスポーツクラブで終わってしまいます。今はまだ、弱小スポーツクラブですが、これからベイスターズ、フロンターレのような人気チームになると期待感を醸成していく。そこに対してプレゼンテーションをしていくことが、僕たちの商品価値だと思っています。すでに成功したチームを応援するよさはもちろんありますが、今の規模の川崎ブレイブサンダースを応援して、一緒に育ててやろうと思ってもらうスポンサーシップもあると思っています。

――チームの顔である選手たちを絡めたアクティベーションについては、どのように感じていますか。

選手は本当に協力してくれているので、彼らを使った濃密なアクティベーションは、とてもやりやすいです。チームと一緒にバスケットボール自体を盛り上げなければいけない、そこで根底から意識の共有ができています。日本代表のキャプテンを務めるチームリーダーの篠山竜青選手はチームを代表する存在ですが、自分にできることはなんでもやると言ってくれます。また、もっと事業貢献したいので、自分を使ってくれませんかと面談で言ってくれる選手もいます。実際、この2週間くらい一定額以上の料金をいただいているスポンサーさんには、オンラインで選手と一緒に訪問を行っています。篠山選手や、藤井(祐眞)選手、辻(直人)選手などの中心選手をアサインし、ざっくばらんに彼らと話せる機会を作っています。

選手とファンが近いファミリー感は、アクティベーションにも好影響

――バスケットボールは室内競技でコートと観客席が近く、選手とファンの距離感の近さが特徴です。そのあたりはどのように見ていますか。

そこは、ものすごくアピールできるポイントです。川崎では以前から試合後に選手が会場出口で、観客全員とハイタッチしてお見送りをしています。Bリーグが始まった当初は観客が1000人台の日もありましたが、今は5000人近くになって3倍近くの時間がかかるなど大変ですが、新しいアリーナができるまでやりたいです。僕たちはファンのことをブレイブサンダースからブレサンファミリーと呼んでいますが、このファミリー感は企業チームの時代から培ってきたもので、これからも伸ばしていきたいです。

――このファミリー感は、アクティベーションを行う上でのプラス効果をもたらしていたりしますか。

プラスに働いていますね。例えば昨シーズンからリクナビNEXTさんがスポンサーしてくださっていて、そこでリクナビNEXTに対してどう感じでいるか、観戦者へアンケートを取っています。そこでは、一般を対象としたアンケート結果と比べて認知や利用意向が高い傾向がありました。これは感覚的なものですが、プロ野球より観客が少なく、一人一人の観客と距離が近い分、ファンの方たちにスポンサーさんも一緒に応援してくれる文化がある。バスケットボールのクラブ経営はプロ野球、Jリーグと比べてもまだまだ厳しいということもあって、クラブを助けてくれるスポンサーも愛する雰囲気を感じます。スポンサーさんにとって、アクティベーションを行うことでブランドイメージが高めやすい部分はあると思います。

NTTドコモとの資本提携で狙う効果

――NTTドコモと資本業務提携し、新アリーナ構想も共同で検討すると発表されました。新アリーナでは、どんなアクティベーションをできたらと想像していますか。

例えば今の公共施設を借りている中ではできない面白い席を作りたいですね。例えばプロ野球の広島東洋カープの本拠地マツダスタジアムにはBBQができる席があり、そこにエバラさんがスポンサーとなっています。このように売上に繋がるような仕掛けをやりたい。この件については、一晩中語れるくらいのアイデアはあります。また、デジタルサイネージ、音響にホログラフなど立体的に見せる技術と、いろいろなテクノロジーを使うことでスポンサー企業さん、その商品の見せ方はかなり変わってくると思います。そこはNTTドコモさんと一緒になってやっていきたいですね。

――NTTドコモはデータ分析に長けた企業でもあります。そのあたりをスポンサーシップにおいてどう活かしていきますか

これはドコモさんとも議論を始めていますが、スポーツのスポンサーは気持ちの部分で応援してくれている企業さんが多くいます。ただ、一方で特にナショナルクライアントさんは、社内で決裁をとる上で定量的な報告を必要とされ、僕らもそれを求められます。その中で単純に今、観戦に来ているファンの皆さんに対してPRしたりアクティベーションするだけでなく、今は来ていないが、今後ファンになり得そうな行動履歴をしている方々が見るようなWEBサイトや媒体に、スポンサーさんと一緒に広告出稿する。それにより新しいファン層を僕らだけでなく、スポンサーさんにとっても開拓できる活動をできないか話しています。

――最後に改めて、スポーツスポンサーシップを考えている企業さんへ川崎ブレイブサンダースだからこそ何ができるのか、メッセージをお願いします。

川崎ブレイブサンダースに共感していただけるなら、一緒に取り組んでいただけるのならば、一番のポイントは共に成長できることです。川崎の街としての成長は、政令指定都市の中では一番だと思っています。そして、Bリーグクラブの中でも成長速度は個人的にはどこにも負けていないと考えています。これから新アリーナ設立に向けてもどんどん成長していきます。今はまだ小さいクラブを一緒に成長させていく、この共同体験をぜひ一緒にやっていただけたらと思っております。

写真提供:川崎ブレイブサンダース

※前編はこちら

ライター:鈴木栄一

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