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エバートンとワトフォード、プレミアチームが小規模ブランドに乗り換えた理由とは?

https://youtu.be/9Ysyb8FVy7s


・プロスポーツチームがユニフォームサプライヤーを大手スポーツメーカーから小規模スポーツメーカーに変更
・ヒュンメルはイギリス人気クラブ・エバートンFCをブランドの顔として同国でのプロモーションを強化
・ケルメは中国でのプロモーションを注力するため、中国でも人気のあるイングランドのクラブと契約


コロナ禍の不透明な状況で協賛金額の上乗せに成功

スポーツ興行の中止や入場者数制限など、世界各国で新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けているスポーツ界だが、そんな中でも協賛金額を上乗せする契約締結に成功したスポーツクラブがある。

その1つが、サッカーのイングランド・プレミアリーグに所属するエバートンFCだ。5月にデンマーク発のスポーツメーカー、ヒュンメルと3年間のユニホームサプライヤー契約を結ぶことが発表された。エバートンは過去6年に渡りアンブロとパートナーシップを組んでおり、2019年には年間400~500万ポンド(約5億4000万円~6億7000万円)の3年契約を更新したと見られていた。その契約を破棄してヒュンメルに乗り換える形となるが、新たな契約ではこれまでのおよそ倍額となる年間950万ポンド(約12億円)が支払われると報じられている。ヒュンメルは80年台後半にこそトッテナムやアストン・ヴィラといったプレミアクラブとスポンサー契約を結んでいたが、現在同社のウエアを採用しているプレミアクラブはない。

ちなみに、今回の契約締結を発表した同社のリリースによると、ヒュンメルとエバートンには古くからの関係がある。1969-70シーズン、エバートンがプレミアリーグの前身フットボールリーグを制した際、主力選手の1人がヒュンメルの白いスパイクを履いていたのが、イギリスで同社の製品が初めて紹介された時だった。このような縁もあり、今後エバートンが、イギリス国内でヒュンメルの顔として、広告への露出や販路拡大の重要な役割を担っていくことが期待される。

同じくイングランドのプロサッカークラブ、ワトフォードFCも、スペインのスポーツメーカーであるケルメとスポンサー契約を締結。現在のパートナーはアディダスで契約金は年間75万ポンド(約1億円)ほどとされていたが、今回ケルメとの契約は250万ポンド(約3億3千万円)と約3倍に跳ね上がると報じられている。特に先週、チームはプレミアリーグから降格が決定したこと考慮すると驚くべきことだ。

ケルメはスペインブランドではあるものの、2018年より実質的には中国の衣料製造会社がオーナーとなっており、中国国内におけるプロモーションの起爆剤として、同国内で絶大な人気を誇るクラブとの契約が進められたとみられる。アディダスという巨大企業だからこその全世界に販路をもつ強みを失うことにはなるが、一方でケルメは、地元スペインはもちろん、前述の通り中国でのマーケティングに力をいれている。すでに、中国国内では200ほどの店舗に今後ワトフォードのユニホーム展開が確約されているとも伝えられており、同クラブの新たなマーケット拡大に貢献することだろう。

小さいブランドだからこそ、共同で丁寧にブランドを創りやすい

今回の2つの事例に共通していえるのは、協賛金額の大幅なアップだけではない。巨大ブランドが抱える多くの取引先の1つとしてではなく、小さなブランドの中で大きな存在になることに、より価値を見出しているという点だ。アンブロにしても今シーズン、プレミアリーグではエバートンを含む4チームと契約を結んでいた。アディダスやナイキのような、世界中で誰もが知っているブランドであれば確かにサプライチェーンの面や知名度が確立されている安定感はあるかもしれない。

だが、その反面すべての契約クラブ1つ1つにじっくりと向き合い、細かな要望を聞くことは現実的ではない。一方ヒュンメルやケルメのような、比較的小さいブランドにとっては1つ1つの契約が命綱であり、まさにパートナーシップの名のとおり共同してブランドを創り上げていくことが求められる。特にこの先が見えないご時世で、信頼できるパートナーと共に近い距離で対話をしながら時流に合わせた臨機応変な戦略を打っていくことはとても重要だ。こうした中で、クラブの発信したいメッセージやイメージをより鮮明に反映させたウエアやグッズを生み出していくことは、クラブとメーカー双方にとって前向きな取り組みといえるだろう。

ライター:中澤薫

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