・選手監修のオリジナル商品を発売。
・大会公式パートナーの権利も活用して、大会会場や市内でオリジナル商品を配布。そのキャンペーンに選手を起用。(権利の掛け合わせ活用)
・ターゲットであるミレニアル世代との親和性の高さ(選手の持つイメージや成長性、SNSの活用状況)がアンバサダーとなる選手の選定基準。
米国のアイスクリームブランドであるハーゲンダッツが、ブルガリア人男子テニスプレイヤー「グリゴール・ディミトロフ」とのスポンサーシップ契約を発表している。ディミトロフは、2017年に年間最終戦でランキング上位8名のみが出場できるATPファイナルズに初出場ながら優勝、世界ランキングも3位まで上昇するなど、最も勢いのあるプロテニスプレイヤーの1人だ。ディミトロフはテニス選手で初となるハーゲンダッツのグローバルアンバサダーに就任する。
このスポンサーシップ契約により、ディミトロフによるオリジナルフレーバーも生まれる予定だ。ハーゼンダッツはウィンブルドンや全豪オープンで公式アイスクリームとなっており、昨年のウィンブルドン開催時には限定フレーバーをロンドン市内で配布するキャンペーンも実施している。そのキャンペーンの際にディミトロフを起用したというつながりがある。
2018年1月の全豪オープンのメルボルン会場には、テニスファンがハーゲンダッツを味わうことができる「ハーゲンダッツハウス」が設置された。そこでディミトロフはオリジナルフレーバーを早速ファンに提供するなど、ハーゲンダッツによるディミトロフを起用したアクティベーションはスタートしており、これから様々な取り組みを行なっていく予定だ。
ハーゲンダッツがディミトロフをアンバサダーに選んだ理由
ディミトロフとのスポンサーシップ契約は、ハーゲンダッツがミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭までに生まれた人々)へのアプローチを狙ったものだと考えられる。
ハーゲンダッツは、原料や製造方法にこだわり、高級志向のセレブリティーをメインターゲットにして発展してきた背景がある。価格も普通のアイスクリームよりも高く設定し、値下げをほとんど行わないのもその「高級感」を貫くためだ。その結果、高級なアイスクリームというブランドポジションを確保することができた。
その一方で課題となるのが、あまり裕福ではない若い世代、つまりはミレニアル世代へのアプローチだ。ハーゲンダッツは昨年7月にブランドスローガンを”Everyday Made Extraordinary”に一新している。「Extraordinary」には「特別」という意味があり、ハーゲンダッツのブランドポジションを「高級なアイスクリーム」から「毎日を特別にしてくれるアイスクリーム」にスイッチさせ、ハーゲンダッツを食べることで、日々の暮らしに少しでも特別感を提供したい、とより身近なものに感じてほしいとの想いがこのスローガンには込められている。このブランドスローガンをもとに、「Extraordinary」を強く押し出した、ポップでハーゲンダッツに親近感を抱くような動画コンテンツを配信している。
(動画の中で、若い女性がハーゲンダッツを指ですくって食べる描写などが含まれており、ハーゲンダッツをカジュアルに味わってほしいという意図が伝わってくる。)
ハーゲンダッツがテニスへのスポンサーシップに力を入れる理由もこの「ミレニアル世代」を意識してのものだ。老若男女、幅広い世代から人気のテニスは「紳士のスポーツ」というイメージも強く、ハーゲンダッツのイメージとマッチしつつ、ミレニアル世代へのアプローチの手段として大いに活用できる。
そのテニスプレイヤーの中で、急速なスピードで世界ランキングが3位まで上昇し、端正なルックスを持ち華やかなイメージのあるディミトロフは、今最も世界で注目を集めている若手テニスプレイヤーの一人だ。ミレニアム世代へのアプローチを図るハーゲンダッツにとって、選手のイメージや今後の成長性を考えるとディミトロフへのスポンサードは非常に効果的だろう。
ミレニアル世代はデジタルネイティブとも呼ばれ、インターネットやソーシャルメディアを日頃から活用している世代だ。今後、積極的にソーシャルメディアを通してのハーゲンダッツとミレニアル世代を繋ぐ役割をディミトロフは担っていくと考えられる。ハーゲンダッツがディミトロフを起用しどのようなアクティベーションを仕掛けるか注目していきたい。