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ペプシが最大のライバル、コカ・コーラの地元で展開したユニークなマーケティング戦略とは

https://twitter.com/pepsi/status/1091018202178637826/photo/1


・世界的飲料メーカーと、プロスポーツリーグ(イベント)のパートナーシップ
・イベントスポンサーであるペプシコーラと、大会開催地が発祥地で本社を構えるコカ・コーラが、お互い相手を意識したマーケティングを展開
・ペプシはコカ創始者銅像前に自社の創業者の銅像を設置し、SNSで一時停戦を打診。その投稿が拡散されるたびに地元慈善団体に食料寄付を実施。
・市内をペプシカラーの広告で染め上げ、地域限定ピーチ味の商品を販売。(1年前にライバル企業もピーチ味を販売)
・一方、コカは自社博物館で元選手のトークイベント等を行う。隣接する市民権・人権センターへ寄付を行い入場料を1か月無料に。(アンブッシュ)


北米アメリカンフットボールNFLはアメリカで最も人気のあるスポーツリーグだ。その優勝決定戦であるスーパーボウルが2月3日に開催され、ニューイングランド・ペイトリオッツがロサンゼルス・ラムズを下し最多タイとなる6度目の頂点に立った。実はその裏で、永遠のライバルであるペプシ対コカ・コーラの熾烈な戦いが注目を集めていた。

今回のスーパーボウルはコカ・コーラ発祥の地であるアトランタで開催された。会場のメルセデスベンツスタジアムから約1キロの所には、コカ・コーラの巨大な博物館があり、スーパーボウル関連のイベントが行われる会場とは目と鼻の先だ。さらにその先には本社ビルも構えている。2002年からNFLのスポンサーであるペプシは、コカ・コーラの拠点へ乗り込む格好となった。

通常、イベントの開催地周辺の一定区域は、スポンサー企業以外のロゴや広告が見えないクリーンゾーンに設定されるのだが、博物館を排除することは物理的に不可能だ。そこで、ペプシはこの状況を逆手に取った。

まず行った奇襲は、建物の前に置かれたコカ・コーラ創始者の銅像に向かい合うように、ペプシの創始者の銅像を設置。両者がそれぞれ自社のコーラを手にまるで乾杯しているようなシーンを創り、その様子を「コカ・コーラ、スーパーボウルの素晴らしいホストをありがとう。(コカ・コーラのスローガンである)トゥギャザー・イズ・ビューティフルに賛同し、お互いの創始者を乾杯させて一時停戦を宣言しよう」とTwitterで発信した。そして、このユニークな停戦を拡散させるべく、ペプシのツイートをリツイートするか、#ColaTruce(コーラと停戦)と#Share2Donate(シェアされたら寄付を行う)の2つのハッシュタグをつけたツイートが投稿されるごとに、アトランタの慈善団体を通じ食料を寄付をすると公表した。そしてスーパーボウル翌日、地元新聞に広告を出稿し、アトランタへの感謝を述べるとともに、キャンペーンの結果13万食分が提供するに至ったと明らかにした。

また、ペプシは商品のメインカラーである青色を基調にした広告を市内中心部の350カ所以上に設置。コカ・コーラの赤い領地を侵略するように巨大な看板を街のいたるところに掲げ、それぞれに「アトランタにペプシが。なんて新鮮」「スーパーボウルのために誰がこの街に来たか、見てごらん」といった、この状況ならではのキャッチーなメッセージを添え、市民の注目を集めた。

さらに、ペプシの主力製品はコーラだけにとどまらない。スーパーボウル記念として、アトランタ限定1000本のピーチ味ゲータレードを生産した。およそ1年前にコカ・コーラが地元の名産品であるピーチを使った限定フレーバーのコーラを販売していた。ペプシはこれを踏襲するかのように、あえて「アトランタへの感謝を込めて」ピーチ味を作ったのだ。

もちろん、マーケティング巧者であるコカ・コーラも、ただ静観していたわけではない。「わが町に来るすべての人を歓迎します、ペプシも含めて」とコメントすると、アンブッシュマーケティングを展開した。博物館でフットボールにまつわる企画展や元NFL選手らによるトークイベントを開催するなど、フットボールファンをコカ・コーラの世界に呼び込む施策を講じた。これに加え、通常なら19.99ドルが必要な隣接する市民権・人権センターの入場料を2月いっぱい無料にするため100万ドルの寄付を行った。

大型スポーツイベントにおいて、スポンサーは1業種1社が原則であり、通常は競合他社を排除した独占的なマーケティングを展開できる権利を得るものである。しかし、今回ペプシはあえてコカ・コーラの存在を前提としたコミュニケーションを選択した。これは両者がこれまでお互いを唯一無二の好敵手として、しのぎを削ってきた背景があるからこそ成立したものだ。時にはあえてライバル関係を表面化させることで、話題性に相乗効果をもたらす、大切なマーケティング・パートナーでもあると言えるだろう。

ライター:中澤薫

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