・ヨットの世界一周レースが「持続可能な環境プログラム」を掲げ、寄港都市で環境会議などの環境に関する活動を実施。
・上記の活動はレース主催者であり冠スポンサーでもあるボルボの社会的責任に対する意思表示。
・浄水、リサイクルといった環境と関連のある企業とのパートナーシップ締結。
3年に一度、ヨットで世界一周をする「ボルボオーシャンレース」が、環境問題に取り組む大手2社とのパートナーシップを相次いで発表した。2社は、ボルボオーシャンレースが取り組む、「持続可能な環境プログラム」のパートナーになっている。同プログラムは、レースの寄港都市に対して、海のプラスティック汚染を防ぐために最大限の行動を起こし、レース開催後の痕跡は最小限に留める事を目的とした物で、大会期間中に環境会議などを開催している。
パートナーシップを通して自社の技術を一般に披露する
一つ目の企業は汚染された水を飲み水へと浄化する浄水器を一般家庭や企業へ販売している、Bluewater(本社:スウェーデン)で、同社はレースの各寄港地で汚染水や排水を同社の浄水器によって、良質で安全性の高い飲み水へと変換し、レース観戦客へ提供する、オフィシャルウォータープロバイダーとなった。
Bluewater社の浄水装置を各都市に設置し飲料水を提供する事で、環境汚染の原因の1つとなっているペッドボトルなど多くの使い捨てプラスティック容器に入った飲料水が不要となり、海水汚染へとつながる廃棄物の削減となる。12月、レースの寄港地の一つである南アフリカのケープタウンにて、同社は最先端技術の浄水器で、厳しい水不足により市営の水源からは水の供給が出来なかった同市において、1日32,000リットルの飲料水を提供し、数にして50,000本分のプラスティック容器の消費を抑えた。素晴らしい成果である。
もう一社は、北欧で業界トップの産業リサイクル企業である、Stena Recycling(本社:スウェーデン)だ。同社は企業の出す産業廃棄物を再び使用可能な原料へとリサイクルするための技術提供など廃棄物マネージメントのコンサルティングを手掛ける企業で、ボルボオーシャンレースでは大会中開催される7回の「オーシャンサミット」への協力を行う。「オーシャンサミット」は各分野の有識者を一同に集め、海におけるプラスティック廃棄の世界的危機について刷新的な解決法について話し合う場で、Stena Recycling社はリサイクル事業専門家をサミットへ派遣する。
普段はあまり知られていない、しかし地球の未来にとっては大切な技術を持つこの2社はオーシャンレースへのスポンサーを通じて、その技術を世界に披露出来る最高の機会を得ている。
「社会的責任を果たす企業」というイメージの構築
最後にボルボオーシャンレースの特異性について触れたい。同レースは1973年にイギリスのビール会社、ウィットブレッドがスポンサーとなってスタートした世界一周のヨットレースで、10月~6月と長期間に渡って行われる。2017-2018シーズンのレースでは11か所の寄港地から寄港地への速さを競い、総合点で優勝者が決定する。そして、なんと優勝賞金はゼロ。トロフィーが授与されるのみである。莫大な費用と労力、時間が必要なためか、全盛期は23チームのエントリーを記録したが、現在は7チームとなっている。
それにも関らず、冠スポンサーであり、レースの運営も行っているボルボは2014年のマーケティング戦略発表の場で、それまで多くのイベントのスポンサーを行ってきたが、今後は、「3年ごとに開催し、9か月の間行われ、4つの海と6つの大陸を30,000マイルかけて横断する、ボルボオーシャンレース」だけにスポンサーを絞って行く方針を示している。彼らはそれを「ボルボのやり方」と表現している。 この大会はボルボにとって、車の販売数増加を狙ったスポンサーシップではなく、昨今、人々が投資の際にその企業が社会的責任を果たす企業であるかを指標にする傾向がある事を意識したスポンサーシップなのかもしれない。
社会的責任を果たさない企業に未来はない、という世間の風潮と共に、ボルボオーシャンレースの様な環境問題などに非常に高い意識を持ったスポーツイベントは今後増えていくかもしれない。