・銀行とテニストーナメントのパートナーシップ
・課題は競合との差別化。サステナビリティ(持続可能性)を推進するため、『Game Changer』というコンセプトを伝える。
・パートナー企業と共同で、テニスボールのゴムとフェルト部分をテニス用品やシューズにリサイクルできる独自技術を開発
・慈善活動に取り組む自国のレジェンド選手を巻き込んで、メディアでの露出も増加
リサイクルが困難なテニスボールを新しい製品に
オランダに本社を構えるABNアムロ銀行は、昨年2月に行われた46年以上に渡って冠スポンサーを務める『ABNアムロ世界テニス・トーナメント』で、テニスボールをリサイクルする取り組みを行った。
現在、年間で約3億個と言われるテニスボールが生産されているが、リサイクルが難しくそのほとんどが廃棄処分されている。そこに着目した同社は、いくつかのパートナー企業と共同で、テニスボールのゴムとフェルト部分をリサイクルできる独自技術を開発。テニスラケットの振動止め、トーナメントをサポートするボールボーイ、ボールガールが履くスニーカー、Bluetooth スピーカー、屋根のタイルへと生まれ変わらせることに成功した。
さらに、大会来場者などから5万個のテニスボールを回収し、それを素材としたテニスコートの作成も進んでいる。これは1996年ウィンブルドン選手権男子シングルス優勝者であるリカルト・クライチェクの慈善団体と一緒に取り組んでいる。また、同社はこの団体への支援も行っている。
同社は、サステナビリティ(持続可能性)の推進を目的に『Game Changer(世界を変える者)』というコンセプトを掲げ、社会課題の啓蒙活動やソリューション開発を行ってきた。今回の企画も、これまで不可能とされてきたテニスボールのリサイクルで変革を起こしている。最終的に、この企画は様々なメディアに取り上げられており、アピールすることに成功した。
サステナビリティ推進をスポーツを活用してPR
銀行はサービス内容が似通ってしまうことから、競合との差別化が難しいビジネスだ。そうした背景から、同社はサステナビリティを推進する活動を行うことで、ブランドイメージを向上させ、差別化を図っていると考えられる。
そして今回のようにスポーツの力を借りることで、環境意識の高い人々だけでなく、テニスファンなどより多くの人に活動を周知させることができる。また、慈善活動に取り組む自国のレジェンドも巻き込むことで、露出効果も高まりを期待できる。
社会課題の解決に取り組むのは難しいが、だからこそ何かを変えることができたらそれは企業の存在感を高める大きなャンスにもなりうる。今回のABNアムロの事例はまさしく、テニスボールのリサイクルという困難な状況を変革した『Game Changer』だ。スポーツを絡めた社会課題解決型アクティベーションの先進企業として今後も注目していくべきだろう。