・通販大手アマゾンが地元に新設されるプロスポーツチームの本拠地命名権を購入
・昨年、2040年までに二酸化炭素の排出量ゼロを目指すと自主的誓約『Climate Pledge』を発表。新アリーナにはこの名称から『Climate Pledge Arena(気候への誓いアリーナ)』と命名。
・ごみ箱を設置せず、生ゴミを堆肥にする装置のコンポストとリサイクルボックスのみを置いたり、アリーナの使用電力を施設内外のソーラー発電でまかなうなど、新アリーナはこの理念を体現すべく二酸化炭素の排出ゼロを目指す。


新アリーナの名称は『Climate Pledge(気候への誓い)Arena』に

世界最大のインターネット通販企業アマゾンが、2021年に北米アイスホッケーリーグNHLに新規参入するシアトルを拠点とする新チームのホームアリーナ命名権を取得した。長らくキーアリーナの名称で親しまれてきたこのアリーナは現在、総額9億3000万ドルをかけて大規模な改修中。NHLだけでなく、女子プロバスケットボールリーグWNBAシアトル・ストームの本拠地も兼ね、さらにコンサートなど様々な興行が実施される。

アマゾンにとってシアトルは本社を構える地元となる。大企業が、地域貢献などCSR活動の一環としてこのように地元施設に関わりを持つのは珍しいことではない。ただ、今回のパートナーシップの中身は異例であり、革新的だ。まず、一般的に命名権を取得した企業は、大きな露出効果を得られる施設の名前に自社、もしくは売り込みたい自社のブランド名をつけるもの。しかし、今回の契約によって生まれた名前は『Climate Pledge Arena』だ。

Climate Pledge(気候への誓い)とは、もちろんアマゾンの新しいサービスやブランドではない。これは昨年9月、同社が社会や環境改善に取り組む慈善団体『Global Optimism』と共同で宣言した自主誓約。2040年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることを目指す、気候変動対策への方針を示すものだ。

環境保護を体現するアリーナとして数々の施策を実施

そしてもう1つ、注目すべきことは新アリーナでClimate Pledgeの理念を体現するためアマゾンが協力。二酸化炭素の排出量実質ゼロ(Net Carbon Zero)を目指す世界随一の環境に優しい施設であることだ。同社のCEOを務めるジェフ・ベゾスは自身のインスタグラムでこのプロジェクトに対する熱意を自身のインスタグラムでこのように語っている。

「アマゾンが、以前はキーアリーナとして知られていたシアトルの歴史的なアリーナのネーミングライツの獲得を発表できることに興奮しています。アマゾンアリーナという名称ではなく、気候変動対策が緊急に必要であること定期的に思い起こさせるためClimate Pledge Arenaの名称にしました。このアリーナは、世界初のカーボンゼロ認証を受けたアリーナとなります。施設運営、イベント実施による廃棄物をゼロにし、アイスリンクの作成には雨水を再利用することで、NHLで最も環境に優しい氷を作ります」

新アリーナでは二酸化炭素排出量の実質ゼロに向け、具体的な取り組みとして2024年までにアルミや生分解性のボトルのみを使用し、いかなるプラスチック製品の使用も完全に廃止する計画だ。そして、会場内には生ゴミを堆肥にする装置のコンポストとリサイクルボックスのみが置かれ、ゴミ箱は設置しない。アリーナの使用電力は、施設内外のソーラー発電でまかなう予定となる。

他にもアリーナの飲食で使用する食べ物の少なくとも75%は、地元の生産者から調達。そして、未使用分は地元コミュニティーの食料支線プログラムに寄付される。NHLとWNBAストームのチケット保有者は、試合当日に会場付近を走行する改装されたモノレールなど公共交通機関を無料で利用できるなど、環境保護のために様々な施策を行っていく。

自社のPRだけでない、命名権の新たな活用方法として注目

昨今、企業は社会的責任を果たすことがより求められる流れになっている。また、地球環境問題をどれだけ熱心に取り組んでいるのかは、特に若い世代におけるブランドイメージの向上に少なくない影響を与えているだろう。ただ、これからの取り組みは、地道な草の根活動であり、メディアの注目を集めにくい。そして、商品と違って目に見えるものではないことから、人々に認知してもらうことは難しい。

しかし、スポーツチームの本拠地の名称となれば多くの露出が見込める。また、この名称を継続的に目にすることでClimate Pledgeとは何かと、それこそモバイル端末で調べてくれることも期待できるだろう。そして、自分たちの行っている社会貢献活動がどんなものなのか、アリーナを使って可視化できることも大きな意味を持つ。

今回のアマゾンの取り組みは、スポーツを通しての知名度向上だけでない活用方法を示すものであり、果たした新アリーナが同社の環境保護活動の啓蒙にどれだけの効果をもたらすのか興味深い。