・大手スポーツメーカーと海洋保護団体がコラボして行うマーケティング活動
・海洋保護団体と共同で海岸で回収したプラスチック製品からユニフォームを制作
・メーカーの契約選手がPRのためそのユニフォームを着用して、世界的なプロスポーツトーナメントに出場
・トーナメント期間中、活動PRのため有名ビーチの横にある海水プールをテニスコートに模様替え
・上記限定ユニフォームを一般販売するなど、単なるCSRに留まらないCSVを実践


海洋保護団体とアディダスのコラボレーション

2018年1月14日から27日にかけて、テニスの四大大会の1つ全豪オープンがメルボルンで開催された。この大会に先駆けて、大手スポーツメーカーのアディダスは、契約選手に 海岸のプラスチックごみをもとに作成したユニフォームを提供。男子ツアーの年間最終戦ATPファイナルズで優勝経験があるアレクサンダー・ズベレフ、昨年の全豪女子王者であるキャロライン・ウォズニアッキらが実際に着用して出場した。

同社は海岸に捨てられているプラスチック廃棄物を回収し、ウェアとしてリサイクルする取り組みを、海洋保護団体『パーレイ・フォー・ザ・オーシャン』と共同で行っており、今回はその一環だ。もちろん目的は、海洋汚染問題の存在を多くの人々に知ってもらうことであり、以前には欧州サッカークラブのレアル・マドリードやバイエルン・ミュンヘンと同様の取り組みを行っている。

ユニフォームの機能性に疑問に感じるかもしれないが、軽量で伸縮性があり、吸汗速乾性にも優れた素材で作られているため、選手は快適にプレーできる。また、ショーツやシューズ、ソックスなども制作されており、同社のオフィシャルショップで購入することも可能だ。

そして、この活動のPRとしてオーストラリアで最も有名なビーチの1つであるボンダイ・ビーチの南端にある巨大海水プール『ボンダイ・アイスバーグス・クラブ』を、大会期間中にテニスコートに変えてしまう施策も実施している。

CSRを超え、本業で社会課題を解決するCSVとしての活動

アディダスの活動で特筆すべきは、企業が倫理面から積極的に社会貢献活動に取り組むべきと主張する『CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)』の発展系とも言える『CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)』としての側面が強い点である。これは世の中の社会課題をその企業の本業で解決し、自社の成長に繋げていく考え方だ。

今回の取り組みでいうと、同社はただ社会課題を問題提起するだけでなく、実際に海岸のプラスチックごみから開発したユニフォームを選手に提供し、一般消費者への販売も行なっている。まさしくスポーツメーカーの“本業”として、社会課題の解決に努めている。こうした活動は他の企業との差別化に繋がり、環境意識が高い人々へのブランディングとしても有効な手段といえよう。

スポーツを活用した社会貢献活動は増えてきているが、その企業の本業と絡めた事例は多くない。持続的かつ健全な運営体制で社会貢献活動を行なっていく上で、CSVの考え方は必須だ。また、大会スポンサーではないが、出場する自社の契約選手を活用することで、今大会観客数78万人に達した全豪オープンの機会を上手く生かしている。この事例は企業のマーケティングやCSR部門の担当者にとって押さえておくべきではないだろうか。