・プロスポーツ団体と時計メーカーのパートナーシップ。
・この時計メーカーがスポンサーするゴルフ大会の中継をテレビCMなしで放送する。
・ゴルフの視聴率が下降傾向にある放送局にとって、競技の特性、ファンの心理を踏まえたこの取り組みに注目が集まる。


 テレビ中継にとってのコマーシャルは、野球、バスケットボール、あるいはサッカーなど、イニングの切れ間、タイムアウト、そしてハーフタイムなどで一定時間プレーが切れるスポーツであれば気にならないが、ゴルフのように、常にどこかで何かが発生しているスポーツとなると、プレイが中断される事でファンの満足度低下を招く恐れがある。

 そんな、CMによる中断のないゴルフ中継という夢のような話が米国で実現された。この度、USGA(全米ゴルフ協会)は世界的に有名な時計メーカーであるロレックスと新たに結んだ長期パートナーシップの一環として、FOXスポーツとFS1ネットワークでテレビ放送されるUSGA主催の9選手権のうち、8つの選手権をCMを挟まない形で放送することを発表した。CMなしでテレビ放送される8大会には、5月31日に第1ラウンドの中継が始まる「全米女子オープン」を皮切りに、「全米シニアオープン」、そして「全米アマチュア選手権」といった注目度の高い大会が含まれ、唯一の例外である「全米オープン」に関しても、シネコックヒルズGCで開催される2018年大会最終日の放送枠最後の1時間はCMを入れずに放送することが決定している。

 今回の発表に際し、USGAのCEO兼事務局長であるマイク・デイビス氏が「このパートナーシップによる勝者はファンである」と述べている。とはいえ、CMなしのテレビ中継を行うことで、視聴者に限らず、主催者側とスポンサー共に、多くのメリットがあると考えられる。

 まず、ロレックスが、“自らスポンサーとなっているゴルフの大会でテレビCMによる露出を一切しない”という視聴者の視点に立った試みを支援することで、企業としての好感度の向上が期待できる。同社は1980年からUSGAのスポンサーとして活動しており、これまでも米国でゴルフ中継と言えばロレックスというイメージは定着してきたが、今回はゴルフというゲームの性質を完全に理解した取り組みであるだけに、多くのゴルフファンやゴルファーからの支持を集めることになるだろう。特にゴルフのファンは、比較的年齢層が高く、視聴者には富裕層が多いとあり、ロレックスがターゲットとする顧客層と大きくオーバーラップしているという事実は、ロレックスの企業イメージアップという点で相乗効果をもたらしそうだ。

 また、USGAやテレビ局側は、今回の試みに対し、テレビ中継コンテンツとしての格式や視聴率の向上を促進する上での起爆剤として期待している部分はあるだろう。事実、フォーブス誌は電子版の記事で「USGAはコマーシャルを制限することで、全米オープンを、大会期間中のテレビ中継で1時間あたり4分間のみのコマーシャルに制限しているマスターズ(USGAの主催ではない)に比肩する放送にする狙いがあるのでは」と分析している。また、「全米オープン」はここ4年連続して視聴率が下落しており、特に前年比5パーセントダウンだった昨年は、大会史上2番に低い最終日の視聴率を記録。2013年にUSGAと12年契約を結んだFOXスポーツにとって、ゴルフの看板番組である「全米オープン」の視聴率を回復させる上で、全ての視聴者が納得する今回の取り組みへの期待は大きいはずだ。

 CMのないゴルフ中継。これは、視聴者、テレビ局(あるいは主催者)、そしてスポンサーの三方がそれぞれ、ウィン・ウィン・ウィンの関係となる新たなフォーマットの出現を意味するのかもしれない。5月31日から6月3日にかけて開催される「全米女子オープン」、そして6月中旬に開催される「全米オープン」最終日最後の1時間のテレビ中継からどのような成果が上がるのか、実に興味深いところである。