・選手がコロナ救済支援のために寄付した金額10万ドルと同額を寄付
・ファンにトリックショットのチャレンジ動画をハシュタグ投稿させ、1投稿につき1ドル、最大50万ドルを慈善団体に寄付するというSNSキャンペーンを実施
・選手との契約は、彼がSNSを通してトレーニング動画を頻繁に発信し、身体作りのイメージが強く、ブランドイメージに合致したことが要因
ファンのTwitter投稿数に応じた額をコロナ救済支援に寄付
新型コロナウィルスの感染対策、医療事業者への支援目的で多くの企業が寄付を行なっている。このような社会貢献活動は大前提としてやることに大きな意義があるが、その中でより多くの人々を巻き込むものにできれば活動の認知度も高まり、ブランドイメージの向上にも寄与できる。
大手ビールメーカーであるアンハイザー・ブッシュ社の低カロリービールブランド『ミケロブ・ウルトラ』はコロナ支援を目的としたSNSキャンペーンを、パートナーシップ契約を結ぶトップゴルファーのブルックス・ケプカの協力を得て実施した。
まず、ケプカがコロナ救済支援のため寄付した金額10万ドルと同額を寄付。さらにウルトラ・インドアオープンを名付けたファンにゴルフのトリックショット(一風変わった難しいショット)動画を、@MichelobUltra のハンドル、#ULTRAIndoorOpen と #donation のハッシュタグをつけてTwitterに投稿してもらう企画を開催。これで1投稿につき1ドル、最大50万ドルを慈善団体『ユナイテッド・ウェイ』に寄付する。プロモーション動画では、ケプカ自身がトリックショットの実例を示し参加を促した。また、同社から25万ドルの寄付も別途行われている。
Introducing the ULTRA Indoor Open. We matched @bkoepka’s donation to the COVID-19 Response Fund and we want to give more! Post a trick shot with #ULTRAIndoorOpen & #donation. Each post = $1 donated to relief efforts, up to $500k. We’ll get the ball rolling with a $250k donation. pic.twitter.com/utQBxgSudJ
— Michelob ULTRA (@MichelobULTRA) March 20, 2020
契約選手を絡めたキャンペーンで話題を集める
何故、ミケロブ・ウルトラが、ゴルフを通してのキャンペーンを行なったのか。それはアンハイザー・ブッシュ社が1994年から北米男子プロゴルフツアーPGAのスポンサーを務めている中、2002年から同ツアーを主導するブランドをミケロブ・ウルトラに変更したからだ。トリックショット動画を投稿してくれそうなゴルフ愛好者にとっても、同ブランドがこの取り組みを行うことに違和感はない。
そして、ケプカとの関係は、2017年4月にPGAと2020年までのスポンサー契約延長を行なったのと同時期にパートナーシップを結んでいる。当時の彼は、2年連続で賞金4億円近くを稼ぐなど将来有望な若手の1人ではあったが、今のようなトップ選手の地位を確立してはいなかった。それだけにケプカと契約を結んだのは、予想外の抜擢と思われたことも少なくなかった。
しかし、特に健康への意識が高い人々をターゲットにしているミケロブ・ウルトラは、SNSを通してトレーニング動画を頻繁に発信するなど、ゴルファーの中でも身体作りのイメージが強いケプカこそ、ブランドのイメージにあう選手と判断した。そして契約締結後、彼は2017年と18年のUSオープン、2018年、19年のPGAチャンピオンシップとメジャー大会を制覇。2018年、19年と2年連続で世界ランキング1位になるなど華々しい成功を収めてトップ選手へと飛躍。彼の広告バリューは大きく上がり、見事な選択だったことが実証されている。
こういった経緯もあって結び付きの強い両者は、今回の取り組み以外にも、これまでいろいろなアクティベーションを行っている。代表的なものが、2019年のPGAチャンピオンシップ直前にケプカが開催近くニューヨークのハドソン川に浮かべられた約120ヤード先の特設グリーンへとボールを着地させることを目指すもの。3回行なって1回でも成功したら、大会初日の午後3時から6時にかけニューヨーク市内のいくつかのバーで同ビールを一杯無料で提供するもので見事に成功した。
この試みは企画自体の面白さに加え、前年の大会王者が、来るべき戦いに向けて雑音をシャットダウンしたい時期にこういったイベントに参加したこともあって大きな話題となった。
広告塔以上の関係を構築しているからこそ得られる効果
このようにミケロブ・ウルトラとケプカは、商品のプロモーションに出演する広告塔以上のパートナーシップを構築できている。だからこそ、今回のSNSキャンペーンでも、次のような協力体制ができている。
ケプカは自身のTwitterで、投稿された動画をリツィートし、その際にハッシュタグをつけて支援活動を説明するなど積極的にサポートしている。ゴルフファンにとって、自身の動画をケプカが取り上げてくれるのは大きな喜びとなり、投稿をしようと思う動機付けになる。また、6月時点でミケロブ・ウルトラのTwitterのフォロワー数は約8.6万人、ケプカは約27万人と彼が告知してくれることは、取り組みの認知度アップの大きな助けとなる。そして、キャンペーンがより多くの人に知られることは、商品のブランドイメージ向上へとつながっていく。
その時々の旬なアスリートを使ってのプロモーションは、確かに大きなインパクトを生みやすい。しかし、まずは自分たちの理念にあっていて、いろいろな活動に協力的であることをパートナー選びの最優先とするからこそ、単なる広告塔以上のプラス効果は生み出せることもある。そういった関係は一朝一夕に作れるものではないが、ミケロブ・ウルトラとケプカはパートナーシップのあるべき1つ形を示している。
Good for you Glenn Martin.
You Go, Glenn Martin!Keep these going & post a shot with #ULTRAIndoorOpen and #donation. For every post, @MichelobULTRA will donate $1 to the @UnitedWay COVID-19 Recovery and Response Fund! https://t.co/cgE9JB7axg
— Brooks Koepka (@BKoepka) April 5, 2020