・プロサッカーチームと地域スポンサーがSNSでオリジナルコンテンツ配信。
・コンテンツ側のメリット:SNSでの動画コンテンツの量・質ともにUP(アカウント増大、ファンエンゲージメント向上に寄与)。
・スポンサー側のメリット:SNSユーザー(主に若年層)へのアプローチ。
・SNS側のメリット:広告事業に繋がるユーザーの増加。
スペイン、リーガ・エスパニョーラの強豪レアル・マドリードが、韓国の総合電機メーカー「Samsung(サムスン)」と共同でTwitter上でのコンテンツ配信を行うことを発表している。Samsungはこれまで地域パートナーとしてレアル・マドリードと契約を結んでおり、それに加えてこの配信コンテンツのスポンサーとなる形だ。契約期間は1年間となる。
このパートナーシップにより、チームの公式Twitterで試合後のロッカールーム内での独占インタビュー、監督記者会見、過去の試合映像、トレーニングの模様などのハイライト映像を配信することが決定している。
レアル・マドリードにはスペイン語のTwitterアカウントだけでも約3,000万人のフォロワー(2018年4月14日現在)おり、その大勢のファンに質の高い自チームのコンテンツを配信することができる。
Twitterはそのリアルタイム性に強みのあるソーシャルメディアであり、ライブイベントであるスポーツとの親和性は非常に強い。スポーツの試合を見ながらスマホを片手に ツイートし自分の気持ちをシェアする観戦スタイルは、若い人々を中心に浸透してきている。こうした質の高いコンテンツをリアルタイムで見ることができるのは、ファンにとっては嬉しい取り組みと言える。
三者間にメリットがある戦略的な取り組み
このコンテンツ配信は、レアル・マドリード、Samsung、Twitterの三者にメリットがある戦略的な取り組みだ。
まず、レアル・マドリードとしては大勢のファンにTwitterを通してアプローチを図ることができる。ファンが日常的に使うSNSにビデオコンテンツを配信することでファンとの接点が増え、常にレアル・マドリードの存在を想起させることができる。こうした常にファンとのコミュニケーションを図っていこうとする姿勢はファンエンゲージメントを考える上で非常に重要と言える。
また、今回のコンテンツ配信の注目すべき点は、Samsungがスポンサーとして入っていることでマネタイズに繋がっている点だ。TwitterなどSNSの公式アカウントには大勢の人々の関心を集めるため、その広告価値は非常に高い。そのためスポンサー企業に新たな価値を提供することができ、新たな収益源を生み出すことに成功している。このような自チームの持つ資産を収益UPに繋げていく取り組みは、多くのスポーツチームにとって参考になる事例であろう。
そして、このコンテンツ配信のスポンサーとなるSamsungにもたらされるメリットは、レアル・マドリードのファンに向けたブランディング効果だ。レアル・マドリードの公式アカウントには大勢の人々の関心が集まるため、コンテンツ配信をするたびにそのファンにアプローチを図ることができる。また質の高いコンテンツを可能にしているのはSamsungの技術であることからも非常に好感が持たれやすい上に、自社の技術力のアピールの場としても活用できる。
さらには、コンテンツ配信するプラットフォーム側であるTwitterにもユーザー増加が期待できる点でメリットがある。Twitterの大きな収入源は広告事業だ。そのためより多くのアクティブユーザーを増やすことが重要となる。Twitter上でレアル・マドリードのコンテンツが配信されるとなると、ファンはTwitterを利用する大きな動機ができ、それを目的とした新規ユーザーや継続的に利用するアクティブユーザーの増加が見込める。そして最終的には自社の広告事業の収益UPにつなげることが狙いだろう。多くの人々の関心が集まるスポーツとの取り組みは、ユーザーを引きつける上で非常に効果的であるため、こうした事例は増え続けていくだろう。
このようにこのコンテンツ配信は、レアル・マドリードにはファンエンゲージメントの向上とマネタイズ、Samsungには世界中のファンに向けたブランディング、Twitterには広告事業に繋がるユーザーの増加と、三者にとってメリットのあるwin-winな取り組みと言える。
レアル・マドリードだけでなく、世界中のあらゆるスポーツチームでSNSを活用したコンテンツ配信は進んでおり、近年のスポーツビジネスのトレンドとも言える。今回の取り組みはコンテンツスポンサーと言う形を設けた点が特筆すべきポイントだ。こうしたスポーツチームの持つコンテンツにスポンサー企業が関わっていく事例は今後も増えていくだろう。そこにTwitterだけでなくあらゆるSNSがどのように絡み、新たな革新的な事例が増えていくのか非常に楽しみだ。