・アメリカのオンライン送金サービス会社と、世界的な”元”短距離陸上選手とのパートナーシップ契約
・”最速”の送金サービスと、世界”最速”の男と呼ばれた元選手のイメージが商品イメージと合致
・この選手自身も海外で得た賞金を母国に送るのに苦労したという過去がある(海外で活躍する選手にとってもありがたいサービス)
・企業も元選手も双方が世界中で社会貢献活動を行っているという意味でも親和性が高い
”速い”イメージだけではなく、地元社会への貢献活動でも共通点
アメリカのデジタル送金サービス会社であるXoom社が、2017年に引退した元陸上短距離のウサイン・ボルトと2年間のグローバルブランドアンバサダー契約を締結した。同社は2001年に設立され、2015年に大手オンライン送金サービス企業Paypalが経営権を獲得。現在は同社の送金サービスの一つとなっている。大手銀行に比べて手数料が安いこともあり、近年、世界中でデジタル送金サービスの利用者が増えている。それぞれの企業は、世界中に範囲を広げようとしている中、同社も既に130カ国以上で展開中だ。そして、今回のボルトとの契約はカナダでのサービス提供を開始するタイミングに合わせての発表であった。
五輪で計8個の金メダル獲得記録を持ち、世界最速の男と呼ばれたジャマイカ出身のボルトは、12月にカナダとアメリカで開始された『Money Go Xoom』という同社の世界的なマーケティングキャンペーンへ起用される。この新しいキャンペーンでは”早くて、安心で、便利な”を強調する同社の海外送金サービスがボルトと共に多様なデジタルメディアやTV広告等で紹介される。
We are thrilled to have the world's fastest man @usainbolt as brand ambassador for @Xoom. Download the Xoom app and send money abroad as fast as a lightning bolt. https://t.co/YeR8Q5F5EJ pic.twitter.com/o6nfIbkBvi
— Xoom.com (@Xoom) December 12, 2018
「私たちは顧客に可能な限り最速の送金サービスを提供しており、その点においてボルト氏が我々のグローバルブランドアンバサダーに起用されたのはごく自然な流れと言える」と同社の副社長兼GMは説明する。そしてボルトも「ジャマイカの家族へ送金するのに苦労した経験があり、離れて暮らす家族に早くて便利な送金サービスを提供する企業のパートナーになれてとても喜んでいる」と語っている。
また、Xoom社はボルトが世界中の人々に速さを連想させる、という点だけでなく、彼が2014年に設立した慈善団体『ウサインボルト基金』を通して積極的に地元社会の支援活動を行っている点においても共通していると考えている 。同社は社会貢献活動に力を入れており、13カ国で従業員がボランティアや寄付活動を実施している。
“Gratitude is a must. Blessings fall on me right hand”
?@originalkoffee ? @ishangotv #AnnualChristmasTreat#GivingBack pic.twitter.com/qZBsQa6nc0— Usain St. Leo Bolt (@usainbolt) December 28, 2018
ユニークなキャラクターと話題性もスポンサーを魅了
同社だけではなくボルトは、引退した今も多くのスポンサー契約を締結している。引退後の2018年、経済誌Fobesが毎年発表している世界で最も稼ぐアスリートランキングで、3,100万ドルと算出され45位に入っている。100位までの中でボルトは唯一の陸上競技関係者だ。
人気の理由は、もちろん世界最速の男として長くトップの座を維持した驚異的な身体能力もあるが、それ以外にも彼のクリーンさ、キャラクターが挙げられるだろう。長く陸上界でトップを走り続け多くのタイトルやメダルを手にしてきたが、彼はドーピングの様な疑惑やスキャンダルとは無縁だった。また、自分の得た利益を地元の若者の教育やスポーツ、文化の発展の支援の為に還元するなどの真摯な姿勢も企業から好感を得ている。
そして、彼のキャラクターも大きな要因だ。明るく気さくな性格と、ゴールした後の有名な決めのポーズなど、ユニークな行動でファンを喜ばせる才能を持ち合わせている。引退後、ボルトはかねてからの夢であったプロサッカー選手となる事への挑戦を実行し、オーストラリアのプロチームの練習生となったりと(残念ながら正式契約には至らなかった が)、その言動には世界中が注目している。
企業がアスリートと契約を交わす際には、そのアスリートが①自社のイメージや商品と合っている事、②スキャンダル等と無縁である事、そして③社会に常に話題を提供し、影響力がある事、が考慮されるであろう。Xoom社のサービスは日本でも2016年から開始されている。今後、日本でもボルトを採用した広告を多く目にする機会が増えるかもしれない。大衆はボルトが紹介するサービスとはどの様なものかきっと興味を持つことだろう。