・地方銀行とプロスポーツチームの“LGBTQ”をテーマにしたパートナーシップ
・LGBTQ活動に長年注力してきた地方銀行のブランド戦略の一環としてのスポーツ活用
・試合にLGBTQコミュニティから200人招待し、ハーフタイムショーではLGBTQをテーマにした人気ミュージカルとコラボや、ゲイカップルが映し出されるキスカム等を実施
・試合前にはLGBTQ関係者が集う施設で往年のスター選手が参加するクリニックを実施


アメリカのプロスポーツリーグでは、地球環境問題への注意喚起を促すグリーン・ウィークや、乳がん啓発のピンク・リボン活動など、社会課題に対する取り組みを非常に盛んに行っている。そして、北米プロバスケットボールリーグNBAは、ここ数年日本でも注目が高まっているLGBTQ、性的マイノリティに関する問題についての取り組みで、他のスポーツリーグをリードする動きを見せている。(LGBTQのQはQueerの頭文字で、自身の性自認や性的指向が定まっていない人、あるいは定めたくない人をさす)

この取り組みのきっかけになった人物が、元NBA選手のジェイソン・コリンズだ。彼はボストン・セルティックスに在籍していた2013年、アメリカの4大スポーツリーグの現役選手としては初めて同性愛者であることを公表した。そして、引退後、NBAアンバサダーを務める彼は、LGBTQコミュニティへの理解促進を訴えている。

コリンズの尽力もあり、NBAは2016年に世界最大の同性愛者パレードである『NYCプライドマーチ』にプロリーグとして初めて参加した。また、NBAではチーム単位でもLGBTQ支援となるプライドナイトゲームが開催されている。ちなみに、LGBTQの象徴であるレインボーカラーで彩り、彼らの権利を支持する活動をプライドと呼ぶ。

今回紹介するのは1月19日にシカゴ・ブルズが初めて開催した事例だ。地元のLGBTQコミュニティから200人が招待され、試合前にレインボーカラーに彩られたシャツを着た選手が「ダイバーシティを受け入れ、平等をアリーナの外でも広めていこう」と会場のファンに呼びかけた。

また、マスコットキャラクターはレインボーのヘアバンドをつけ、ハーフタイムには男性が女性の格好をしてパフォーマンスをするドラァグクイーンを描いた人気ミュージカル『キンキー・ブーツ』とコラボレーションしたパフォーマンスを披露。さらにアメリカのプロスポーツではおなじみの、客席カメラで映されたカップルがキスをする『キスカム』ではゲイカップルが映し出される場面もあった。

こうしたイベントは既にNBAでは定番となっているが、この事例がユニークなのは、地元シカゴに本部を置く銀行、BMOハリスバンクが協賛した点だ。
実はこの両者は2016年から共同でシカゴのプライドパレードに参加してきたパートナー関係にある。同銀行は『BMOプライド』を合言葉に長年LGBTQ支援を表明してきた。銀行のディスプレイにレインボーをあしらったり、各地のプライドパレードに参加したり、職場環境にも配慮を行き届かせているという。

こうした活動を通じて支援の姿勢を積極的に訴え、LGBTQの当事者はもちろん支持者の人々にもポジティブな印象を与えてきた。これは社会貢献という側面もあるが、生活インフラの一部であり、お金を預けるという基本的なサービスだけでは他社と差別化が難しい銀行の業態ゆえに、重要なブランディング戦略とも言えるだろう。ハリスバンクは北部を中心に8州に支店を置くいわば地方銀行だが、地元のNBAチームと組むことでその発信力を借り、自分たちの取り組みを全米中に拡散できるメリットは大きい。

一方、ブルズは同銀行のサポートを受け、試合に先立ち年間で約4万5,000人が利用する地元のLGBTQコミュニティセンターにて、バスケットクリニックも開催した。往年のスター選手らが講師役を務め、このセンターが関わっている近隣の学校から70名の学生が参加。ブルズは試合だけでなく、プラスαの活動を連動させることで、より深く地域社会に貢献する姿勢をアピールできた。

銀行としても、当事者のみならず将来の顧客となりうる学生達やその家族らへもリーチできる絶好の機会となったことだろう。こうしたパートナーシップは、スポンサーもコンテンツホルダーもwin-winとなるアクティベーションの好事例と言えるはずだ。