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無観客で開催された全米オープンテニスでのアクティベーション事例

写真:アフロ

観客の平均世帯年収2,000万円超と富裕層が集うスポーツイベント

8月31日から9月13日にかけてニューヨーク郊外で行われたテニス4大大会の1つ全米オープンは、大坂なおみ選手の優勝もあり日本でも大きな盛り上がりを見せた。アメリカスポーツ界の夏を代表するイベントの1つである同大会は、ビジネス面において他の大会と大きく違う特徴がある。

経済誌『フォーブス』の取材に、大会主催者は2019年の観客について男女比は56対44で女性が多い。ファンの78%が学士号以上の学位を持ち、これはアメリカ全体の35%を大きく上回っている。さらに平均世帯年収は21万6,000ドル(約2300万円)と明かしているのだ。

そして、大会には毎年70万人前後が観戦に訪れており、各企業にとっては数多くの富裕層をターゲットに自社商品をPRできる絶好の機会となっている。このファンベースは全米オープンならではの武器であり、それ故に多くのスポンサー企業がパートナーシップを結んでいる。それは新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐため無観客で行われた今年も同じで、この状況下にあっても2社(ボディーアーマー、チャブ損害保険)と新規契約を結んでいる。そこで今回はスポンサー各社がどんな施策を行っていたのか、その一部を紹介していく。

■アメリカンエキスプレス
1997年からスポンサーを務めるクレジットカード大手のアメリカンエキスプレスはこれまで会場に大規模施設を設置したり、カード会員だけが使えるラウンジを用意するなど、特別な体験を提供することでファンとの関係づくりを図るアクティベーションを行っていた。それができない今回は、大会の公式アプリ内で同社の名前を冠した『Fan Cam powered by American Express』を展開。これは試合中の選手にファンの声援を届けるもので、応戦したい選手に向けたメッセージ動画を投稿すると、それがコートサイドに設置されたモニターに投影される試みだ。

また、この応援動画を送ると自動的に、2021年大会の招待券が当たるキャンペーンにも登録される。そしてFan Camは誰でも参加できるが、カード会員限定サービスの『Ask a Player』も用意。これも同じくアプリ経由で試合後のインタビューに使われる選手への質問を募集している。オンラインであっても、ファンが直接選手に応援メッセージを届けたりインタビューできるという特別な体験を提供している。

■グレイグース
スポンサーを務めるウォッカブランドのグレイグースを使った大会オリジナルカクテルの『ハニーデュース』は、大会ロゴが入ったグラスにテニスボールに見立てて丸くくり抜いたメロンをトッピングして提供される。フォーブスによると大会期間中に20万杯以上が売れる人気ドリンクだ。

今年は、ドリンクの材料となるお酒類、ロゴ入りグラス、メロンなどが入った特製キットの配達サービスをニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、サンフランシスコ、ダラス、オースティン、ワシントンの7地域で実施した。また、作り方を説明した動画も制作している。ファンの自宅での観戦体験の向上に寄与するたけでなく、実際に作ってもらうことで商品への愛着度を高めることも狙いだ。

■ボディアーマー
同社の低カロリースポーツドリンク『ボディアーマーライト』が選手に提供される。さらに同社が2019年からスポンサーを務める大坂なおみが、テニスを始めるきっかけとなったニューヨーク市クイーンズにある公立テニスコートの改修工事も契約に含まれている。大会を通して商品の認知を広げるだけでなく、有力選手と共にブランドストーリーを構築し好感度も獲得する狙いが伺える。

■チャブ損害保険
『come backs』をテーマに掲げ、コート脇の看板に社名が掲出される。保険会社の役割は、事故や病気など予期せぬ事態からのカムバックへの支援だ。そして今回の全米オープンは新型コロナウィルスの世界的感染拡大後では初の4大大会と、まさにプロテニス界が通常へとカムバックするための第一歩となるもの。このメッセージ性の強いアクティベーションを行うことで、スポーツファンへのPRを図る。

このように各社、無観客試合でできることや求められることを模索して、それぞれ個性的な取り組みを行っている。この先行きが見えない厳しい状況がいつまで続くのかは不透明であるが、だからこそ新たなアクティベーションが生まれる可能性にも期待していきたい。

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ライター:編集部

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