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アンブッシュ

ベン&ジェリーズ、キャパニックを使ったスーパーボウルのアンブッシュマーケティング

https://twitter.com/benandjerrys/status/1356251906537103362


・アイスブランドによる大型スポーツイベント(アメフト)でのアンブッシュマーケティング
・2016年に人種差別への抗議活動を行ったことがきっかけで事実上NFLを追放された選手、キャパニックとコラボした商品を販売。売上の一部を彼の運営するNPO団体に寄付する。
・試合開催地に商品の巨大看板を設置し、試合当日にはドライブスルー形式で、地元住民に食事や新作アイスなどをプレゼントする社会貢献活動を実施。


人種差別撤廃運動の先駆者であるキャパニックをイメージキャラクターに

アメリカ最大のスポーツイベントである北米アメリカンフットボールNFLの王座決定戦、スーパーボウルは現地2月7日に行われ、タンパベイ・バッカニアーズがカンザスシティ・チーフスを撃破した。

スーパーボウルといえば、その圧倒的な人気から試合中に流されるCMの料金は30秒間で5億円以上と言われるほど高額だ。また、開催地は数多くの事前イベントが実施されることで多くのスポーツファンで賑わい、それに伴って様々なスポンサーシップアクティベーションが行われている。そこにはNFLとのスポンサーシップ契約を結んでいない企業もその盛り上がりに便乗し、NFLやスーパーボウルについて直接的な言及を行わないが、人々に想起させるプロモーションを行うアンブッシュマーケティングも多く実施されるのが恒例となっていた。

しかし、今年に限ってはそもそも新型コロナウィルスへの感染対策によって観客数を大幅に制限し、様々なイベントも自粛となった。それに伴いアンブッシュマーケティングもいつもに比べて少なくなかったのは否めないが、その中で目立ったのがアイスブランドのベン&ジェリーズだ。

同ブランドは、12月に元NFL選手コリン・キャパニックをイメージキャラクターにした新作商品を発表。キャパニックはトップ選手として活躍していた2016年プレシーズンに人種差別への抗議活動として国歌斉唱時に起立を拒否した。この行動はアメリカ全土を巻き込んで大きな論争となり、彼を支持する選手は少なくなかった。しかし、2018年にNFLは斉唱時の起立を義務化したようにリーグ上層部では批判的な声が多く、その影響もあってかキャパニックは2017年以降NFLでプレーすることができていない。

しかし、2019年にナイキが同社の定番フレーズ「Just Do It」の30周年を記念して作られたCMで、人種差別に立ち向かうキャパニックを主役に起用すると多くの人々が絶賛した。その後、2020年に人種差別撤廃を目指す「BLACK LIVES MATTER」運動が全米各地に広がる中、キャパニックはその先駆者としてより存在感が高まっている。

新商品のPRと共に社会貢献活動も実施

“Change the Whirled”(騒乱を変えろ)と名付けられたこの新作は、キャパニックと同じビーガン仕様となっている。また、彼が2016年に設立した黒人など有色人種の若者の教育支援などを行うNPO団体「Know Your Rights Camp(KYRC)」に売り上げの一部を寄付する。

そして、ベン&ジェリーズはこの商品の巨大看板をスーパーボウルに合わせ、開催地タンパベイの一角に設置した。また、同じくタンパベイの街中の一角に、KYRCと共同でのメッセージを綴った巨大な壁画を作成。そして、試合当日の正午には、コロナ対策によるドライブスルー形式で、地元住民に食事、新作アイスに地元の理髪店の利用券などをプレゼントする社会貢献活動を行っている。

キャパニックは元NFL選手であり、このタイミングにタンパベイでPR活動を実施することは、典型的なアンブッシュマーケティングだ。新作アイスだけでなく、キャパニックの行う社会貢献活動もしっかり告知することで、同社はブランドイメージ向上も達成している。実際、多くのメディアが今回の取り組みを紹介しており、正しい選択だったことが証明されている。

ライター:鈴木栄一

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