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スポンサー事例

マクドナルド、“損して得取れ”のNBAラプターズのキャンペーンで効果あり

写真:アフロ


・大手ファーストフードチェーンとプロスポーツチームのパートナーシップ
・アプリ登録者を対象に、チームの試合結果に連動して、地元店舗でポテトを無料で贈呈
・チームの好成績により想定以上の無料配布数になったものの、客単価の上昇やアプリ登録者の増加に繋がった


チームの躍進で予想以上の出費となった無料キャンペーン

プロスポーツにおいて、得点など何らかの数字に絡めたスポンサーアクティベーションは代表的なものとなっている。例えばバスケットボールでホームチームが1試合100点以上を挙げたら、ファーストフードチェーンのサイドメニューが1人につき1つ無料になる取り組みは定番だ。そして、マクドナルドも北米プロバスケットボールNBAのトロント・ラプターズと同様の企画を行なっている。

同社の場合、ラプターズが1試合で3ポイントシュートを12本以上決めると、地元オンタリオ州の店舗で無料フライドポテトを贈呈するもの。一昨年の2017-18シーズンでは、シーズン全体で48試合が、無料ポテトの対象試合となった。そして昨シーズン、マクドナルドは一昨年の数字をベースにして企画の継続を決めた。しかし、オフシーズンにラプターズはトレードでシュート力の強化に成功。そして、勢いに乗って昨季チーム史上初のNBAチャンピオンを達成し、地元でこれまでにない大盛り上がりとなった。

この2つの要素によって、企画の対象試合が増えるだけでなく、一度の企画で無料ポテトを受け取ろうと来店する人も大きく増えた。経済メディア『Financial Post』によると、昨季開幕前マクドナルドがこのプロモーションで想定していた注文数は70万件だったが、実際には上記のような理由によって、約3倍にまで増加した。

目先の収支では測れないプラス効果もある

ちなみに対象となったポテトの値段は2ドル89セント(約300円)であり、レギュラーシーズンだけでも総額で6億円以上となる。少なくともマクドナルドにとっては数億円に渡る予想以上の出費となった訳で、チームの活躍を読み違えた失敗企画と評することも可能かもしれない。

しかし、マクドナルド側はそのような見方をしていない。Financial Postは、「未来の利益につながるものだったと信じている」というオンタリオ州で4店舗を経営するフランチャイズオーナーのコメントを紹介する。

それは、この特典を受けるには、専用アプリ経由の手続きが必要であり、少なくともアプリをダウンロードする人の増加につながる。そして、無料ポテトを受け取るだけではなく、一緒に何らかの注文する人が多い。また、各メディアに取り上げられることで、ラプターズを積極的に応援しているという地域密着の絶好のアピールにつながるなど、様々な理由があり“損して得取れ“と言える状況になっているからだ。

スポーツは結果が決まっていない筋書きのないドラマなので、スポンサー企業にとっても想定外の事態となることは十二分に起こり得る。しかし、だからこそ、逆に予想以上のプラス効果をもたらす力を持っていることを今回の事例が示している。

ライター:鈴木栄一

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