・ファーストフードチェーンによるNBAドラフトでのアンブッシュマーケティング
・地元チームが1位指名権を保持。最も注目されているスター選手の獲得を見越し、その選手の両手を広げた長さと同じ横幅の箱に入った特注セットを販売


ドラフト全体1位指名権を得たペリカンズの地元で行われたアンブッシュマーケティング

北米プロスポーツの中でもバスケットボールのNBA、アメリカンフットボールのNFLは、オフシーズンに行われるドラフトが本番の数週間前から指名順予想を各スポーツメディアが頻繁に取り上げるなど一大コンテンツとなっている。その大きな要因として、アメリカでは大学バスケットボール、大学フットボールが大人気であり、そこで活躍したスター選手たちの去就に関心を寄せるファンが多いことなどが考えられる。

日本でドラフトといえばプロ野球で、各チームの1位指名選手について選択が重複した場合は抽選となる。しかし、NBA、NFLドラフトは、ともに指名順位に沿って選手を獲得する完全ウェーバー式で抽選はない。全体1位指名権を保持するチームは、確実にお目当ての選手を指名できる。よってチーム、地元メディア、ファンにとっては1位を得られたこと自体が、すでに大きな出来事でドラフト開始前から盛り上がる。

そうなるとチームの地元でビジネスを展開する企業としてはドラフトに絡めたプロモーションを行いたいものだが、NBAドラフトの文言やロゴはNBAの公式パートナーでないと使用できない。そんな中、1位指名権を得たニューオリンズ・ペリカンズの地元ルイジアナ州を拠点とするファーストフードチェーンの『ポパイズ・ルイジアナ・キッチン』が、効果的なアンブッシュマーティングを行なった。

1位指名選手を簡単に連想できる商品を販売

今年のNBAドラフトは圧倒的な身体能力でダンクなど豪快なプレーを次々と繰り出した逸材、デューク大のザイオン・ウィリアムソンが頭1つ抜けた存在と評され、全体1位指名が確実視されていた。そこでポパイズは、ドラフト前にウィリアムソンのウイングスパン(両手を広げた長さ)と同じ208cmの横幅の箱に入った特注コンボセットを74ドル69セント(約8,000円)を販売すると発表したのだ。

フライドチキンが主力商品の同社であり、このセットの中身は77本のチキンウイング、11個のビスケット、11人前のフライドポテトと大量のソースとなっている。セットの幅を身長ではなくウイングスパンとしたのは、チキンウイングと絡めているからだろう。

同社は、この商品発表の際に「ニューオリンズでは、208cmのウイングスパンを持つ大物をドラフト1位指名として地元に連れて来られる可能性について多くの憶測や噂が飛び交っている」とリリースを出した。“NBAドラフト”について直接的に言及はしていないが、ドラフトとウィリアムソンのことをスポーツファンなら簡単に連想できる。

このセットを購入できたのは、ドラフト当日となる6月20日の1日限定で、場所もニューオリンズ市内のわずか1店舗のみ。言うまでもなくこれを目玉商品として売り出すというより、あくまで商品を作ったことで各メディアに取り上げられる露出増がメインであり、それは見事に成功している。また、地元愛をPRすることで、ルイジアナの人々への好感度アップにもつながる施策だ。このような地元に絡んだスポーツトピックに即座に反応できる行動力とアイデアは、スポーツを活用したPRを考えている企業がどんどん見習うべきところだ。