・高級SUV自動車メーカーとマイナー競技大会とのパートナーシップ
・メディア露出は少ないが、来場者にターゲット層である富裕層が多く、期間中約8万人が来場するマーケティング機会
・オフロードでのSUV車試乗イベントの他、子供向けに試乗会や電気で動くレプリカ車を運転する体験を提供。また、テイルゲートパーティーのコンテストなども実施。
ランドローバーがマイナー競技大会を支援する理由
高級SUV車を展開するランドローバーは、4月に行われた複合馬術の米国内最高峰大会の1つであるケンタッキー・スリー・デイ・イベントの冠スポンサーを2年連続で務めた。この複合馬術とは、同一人馬が持久力や障害飛越スキルなどを3日間かけて競うもので、当然ながらアメリカの4大プロスポーツリーグなどと比較したら知名度も低く、メディア露出も少ないのでマイナー競技と言って間違いはないだろう。このようなイベントに、なぜランドローバーがスポンサーとして手を挙げたのか。
その最大の理由は来場者層にある。馬術大会の来場者といえば、馬術の経験者や関係者、馬主や馬の愛好家など比較的富裕層が多く、実に6割の来場者が年収10万ドル(1000万円超)以上で、さらに33%は15万ドル(1500万超)以上というデータもある。こうした観客が大会期間中延べ約8万人も来場する、他に類を見ないスポーツイベントなのだ。ランドローバーとしては、高額な自社製品を購入できるターゲット層が一堂に会する格好のショーケースの機会といえよう。
加えて、8割もの観客が州外からわざわざこのイベントのために来場しているのも特筆すべき点だ。このように来場者のイベントに対するロイヤルティが高いということは、それだけスポンサーに対する好意形成も期待できる。
富裕層とその子供達へ試乗体験を提供しブランドとの接点を作る
そこで、ランドローバーが展開したアクティベーションは、来場者にいかにブランドを深く体験させるかに注力したものだった。会場は馬のクロスカントリーも行われるため、SUVの魅力を体感するにはうってつけのオフロードだ。同社は自社の各種SUV車の試乗機会を提供、来場者は広大な敷地の中で草原や砂が舞う悪路や沼地を、1000万円前後する高級車で駆け抜けることができた。
それだけではなく、同社は一緒に連れて来られた子供たちのためのアクティベーションにも力を入れた。運転免許を持つ前からブランドに触れさせることで、若年層を潜在顧客として囲い込むことが目的だ。そこで行ったイベントが『スタート・オフロード』と題した14歳以上のティーンエイジャー向け試乗会で、専門のインストラクター指導のもと本物のランドローバーのスポーツモデルに試乗できる。10代にして500万円を超える高級車を運転させる思い切ったイベントを行ったのだ。
これに加え、4歳から10歳の子供がランドローバーの人気車をモデルにした電気で動くレプリカ車に乗れるイベント『ジュニア・ドライブ・エクスペリエンス』も実施。小学生からランドローバーに乗った気分を味わえる他にはない特別な体験を提供した。
こうした試乗体験型アクティベーションの他に、新車の展示やコース上への看板露出はもちろん、ブリティッシュ・テイルゲート(車の後部を解放し、駐車場で飲食パーティーを楽しむもの)のコンテストを行うなど、独自の取り組みで来場者を楽しませ、ブランドへの接点とポジティブな印象を創出することに努めた。
一企業やブランドが単独で富裕層を8万人集めようとすればそれは容易ではないだろう。このケースのように、メジャースポーツでなくても高い集客力を持ち、顧客の特性がはっきりしたスポーツイベントはある。企業はスポンサーを検討する際にどうしてもそのイベントの知名度や話題性、メディア露出に気を取られがちになる。しかし、そのブランドが最も効率的にマーケティング活動を展開できるイベントという観点で投資を検討することも重要だ。