・自動車メーカーによる大型スポーツイベントでのアンブッシュマーケティング
・モバイルゲームを開発し、イベント中に長時間プレーした上位3名に自社のサブスクリプションサービスをプレゼントするコンテストを実施
・イベントに関心のない人が多い年齢層と、自社サービス加入者の年齢層が同じことからターゲットへ効果的にアプローチ


モバイルゲームで新型車種やサブスクリプションを宣伝

毎年全米で1億人以上がテレビ視聴すると言われている北米アメリカンフットボールリーグNFLの王座決定戦スーパーボウルは、米国の人々にとって国民的なスポーツイベントだ。当日は家族、友人たちで集まって自宅やスポーツバーなどで観戦する一大イベントであるが、当然のようにアメフト自体に興味がない人々もいる。

自動車メーカーのボルボは、試合に合わせてそんな人々を対象にしたモバイルゲームを開発した。それは、同社の新型セダン『S60』を特設ウェブサイト上で運転できるもの。試合のキックオフ30分前からプレイ可能で、どれだけ長い時間スクリーンから目を離さずにプレイできたかを競うものとなっている。顔認識技術を使用して、プレーヤーがスクリーンから顔の向きを変えるとゲームオーバーになる。

ユーザーは試合中何度でもこのゲームにチャレンジすることができる。そして、最も長い時間スクリーンから目を背けずに遊ぶことができた3人のユーザーに、車を購入せずに月額定額料金を支払うことで新車を運転できるサブスクリプションサービス、『ケア・バイ・ボルボ』の2年間プランを無料でプレゼントするコンテストを実施した。このサービスには車の定期メンテナンスや保険なども含まれており、今回の対象車種はもちろんS60 だ。

最終的に、最も長くプレイしたユーザーは約9時間以上、2番目と3番目も7時間以上と、約3時間の試合時間と言われるアメフトの試合よりも大幅に長くプレイした。ゲーム参加者数も4万人を超え、同社が想定していた以上の成果を生み出すことに成功した。

スーパーボウルに興味がない若年層を狙ったアンブッシュマーケティング

同社はNFLの公式パートナーではないため、その呼称やロゴの使用はもちろん、CMの放映といったマーケティング活動を行うことができない。そのため、この企画では、「Football’s biggest night(アメリカンフットボール最大の夜)」という言葉で試合のことを間接的に表現している。

今回の企画の目的はS60やケア・バイ・ボルボのプロモーションが目的だろう。特にケア・バイ・ボルボは、2018年の6月にスタートし、2020年代半ばを目標に全新車販売台数の半分をこのサービスに置き換える方針を発表している。そうした背景から、自動車ではなくこのサービスをコンテストの賞品に設定することで、認知拡大や利用者増加を狙ったと考えられる。

また、サービス開始1年で加入者の46%が35歳以下で、さらに50%がモバイルやタブレットを通じて申込みをしているという。モバイル広告ネットワーク企業のアド・コロニーの調査によれば、スーパーボウルの視聴者の年齢は83%が35歳から74歳で、35歳以下の若者による視聴は減少傾向にある。試合に興味がない人が多い年齢層と、サービス加入者の年齢層は一致しているのでモバイルゲームを使用して効果的なアプローチを図ったと考えられる。

大勢の人々の注目が集まるスポーツイベントであっても、必ずしも全ての人が興味を持っているわけではない。このボルボの企画は、そういった人々の行動特性を理解することで、効果的なアンブッシュマーケティングが可能になることを示してくれる事例ではないだろうか。