・大手自動車販売企業が地元プロスポーツチームの本拠地命名権を獲得
・自社の行う癌の研究と治療への支援キャンペーン『DRIVE PINK』からスタジアム名称を『DRV PNK』と命名。さらに、チームと共同で地元の癌研究に10万ドル(約1,100万円)の寄付を毎年実施予定。
・社会貢献活動のPRにスタジアム命名権を活用
スタジアムの命名権で、癌治療キャンペーンの名前を採用
スポーツチームが使用する本拠地の命名権は、露出効果も高く企業にとって代表的なスポーツスポンサーシップとなる。これまで多くの大企業が、本社を構える地元の人気プロチームの本拠地の命名権契約を結んでいる。しかし、すでにかっこたる知名度を誇る大企業が、自社の名前を大々的にPRしても、認知度の大きな変化を期待するのは難しい。
それによって自分たちが地元のチームを支えていることへのアピールにはなるが、大企業による命名権のより効果的な使い方として徐々に出てきているのが、自分たちが地域貢献のために行っている活動のPRなど企業名以外を提出すること。
その代表的な事例と言えるのが、昨年7月に紹介したシアトルで改修を経て今年の10月、新たにオープン予定となっている「Climate Pledge(気候への誓い)」アリーナだ。
同アリーナは北米アイスホッケーリーグNHLに今秋から参戦する新チーム、シアトル・クラーケンの本拠地で、シアトルに本社を構えるインターネット通販企業のアマゾンが命名件を取得。そして、同社が2040年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることを目指す、気候変動対策への理念として掲げたClimate Pledgeをアリーナの名前に名付けた。この理念に準ずる形で、アリーナは二酸化炭素排出量の実質ゼロに向け、様々な取り組みを行うと発表したことで大きな注目を集めた。
このアマゾンと同様のスポンサーシップを実施するのが、自動車販売業で全米最大規模を誇るAutoNationだ。フロリダを拠点とする同社は地元の北米プロサッカーリーグMLSインター・マイアミの本拠地の命名権を取得。マイアミの本拠地名はAutoNationスタジアムではなく、「DRV PNK」スタジアムとした。
Your Fútbol is Here, at the our newly named Drive Pink Stadium.#InterMiamiCF is proud to join the mission to drive out cancer with @Autonation by harnessing the power of fútbol and our fans. #DRVPNKStadium | #DrivePink pic.twitter.com/D0I8KEhfAr
— Inter Miami CF (@InterMiamiCF) April 9, 2021
スポーツスポンサーシップで、CSRの課題解決へ
DRV PNKとは自分たちが行っている癌の研究と治療への支援キャンペーンで、DRIVE PINKの略称だ。また、ピンクは乳がん検診の早期受診啓蒙活動のピンクリボンなど、同社の行なっている活動と関係の深い色であり、さらにインター・マイアミのチームカラーの1つがピンクと親和性も高い。
そして同社とマイアミで地元の癌研究に10万ドル(約1,100万円)の寄付を、このパートナーシップの契約期間中は毎年実施。他にもAutoNationは乳がん啓蒙月間においてホームゲームで特別スポンサーを務めるなど、両者で協力し様々な社会貢献活動を行なっていく予定だ。
アメリカ南部のマイアミは土地柄、サッカーが人気である中南米出身の人々も多い。また、元スター選手のデイビッド・ベッカムがオーナーグループの一員かつサッカー部門の代表を務めていることでチームの露出度は高く、AutoNationにとって露出するのが難しい社会貢献活動をPRするのに今回の命名権は効果的な使用法だ。
このアクティベーションを通してDRV PNKキャンペーンがより多くの人々に認知されることは、同社のブランドイメージ向上につながるだけでなく、フロリダの地域社会にとっても大きなプラスになるのは間違いない。今、CSR経営は、企業価値の向上につながるとより重視されている。CSR活動を行う上での1つの大きな課題である認知度アップへ、スポーツスポンサーシップは助けとなる大きな可能性を秘めている。