・ビール会社の世界的スポーツイベントに乗じたアンブッシュプロモーション
・大会スポンサーではなく、デンマークのサッカー代表スポンサーの権利を活用
・大会開催国であるロシアにちなんで、ビールに合う特殊なキャビアを開発したものの、それ自体は商品化せずに、開発ストーリーをPRのネタに利用
・ビールの飲みすぎを抑制するメッセージも同時に発信(CSR的視点)


W杯を連想させるビールキャビアを開発し、アンブッシュマーケティングを展開

デンマークのビール大手メーカー、カールスバーグが2018年のサッカーW杯ロシア大会に合わせてユニークなプロモーションを展開して話題となった。W杯におけるビールカテゴリーの大会公式スポンサーはライバルであるバドワイザーだ。当然ながら、カールスバーグはW杯という名称も、大会ロゴも、使用することはできない。そこで、同社はデンマーク代表チームのスポンサーを務めていることから、デンマークとロシアを結びつけることで間接的にW杯を連想させる戦略をとった。

それが、デンマークで伝統的な自社商品の王道ピルスナーと、ロシア名産のキャビアを掛け合わせた『ビールキャビア』の開発だ。キャビアといっても本物のチョウザメの卵を使用しているわけではなく、人工的に魚卵に似せた粒を作り、その膜の中に同社のビールが包み込まれたもの。この企画に起用されたのはデンマーク国内ではテレビ番組などで活躍する有名シェフで、カールスバーグの開発チームと組み、ビールを主原料としてクエン酸やアルギニン、カルシウムの塩化化合物などを配合することで、試行錯誤の末にあたかもキャビアの食感を再現することに成功したという。

こうして完成したビールキャビアは、サッカー関連のイベントなどで限定的に配布され、その様子がプロモーションとして映像化されるなど活用されたが、あくまで話題作りがゴールであるため商品化はされていない。安くないであろう研究開発費を販売で回収するわけではなく、制作過程のストーリーそのものが価値になると、投資しているところが日本ではなかなか見ないおもしろい点だ。スポーツのスポンサーシップに絡めてドラマ性のある開発ストーリーを打ち立る。プロジェクト自体に高い話題性を持たせるという広報戦略となるが、実はこれこそ同社の得意技で、過去にもたびたび展開している。

キャンペーンにCSR要素をプラスし不可価値を高める

今回のキャンペーンの狙いは、ただユニークなプロジェクトをアピールするものではないのも特筆すべき点だ。同社はビールキャビアを通して「食べながら飲む」ことの重要性を訴えている。ついついスポーツ観戦中はビールを片手に食事を忘れてお酒を飲み続け、結果として飲みすぎてしまうことがありがちだ。それに対して注意を喚起するために「食べながら飲む」を具現化する象徴として今回開発を決めたという。

ビールメーカーでありながらも飲みすぎを抑制するメッセージを発信することは利益相反のようにも見えるが、業界をけん引する大手メーカーとして社会への啓蒙活動をしっかり強調することは、彼らが顧客を気遣う企業であるというブランディングを確立させ、結果的にプラスに働く計算だ。派手なプロモーションを行うだけでなく、そこにCSRの要素も加えることでキャンペーン自体の付加価値を高める手法は、他の企業も学ぶところがある。