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アンブッシュ事例

ドミノピザ、競合他社のピザも対象にポイント提供を行なった狙いとは

https://youtu.be/R-gFdAa_Oi0


・ピザチェーンによる大型スポーツイベントでのアンブッシュマーケティング
・試合日にピザの消費が大幅に増えることから、試合前日からキャンペーンを実施
・ピザの写真(他社や手作りのピザも対象)をスキャンして獲得できるポイントで、無料ピザがもらえるというキャンペーン


ピザの消費が増えるスーパーボウルに合わせてキャンペーンを開始

アメリカ人のソウルフードの1つピザが大量に消費される日と言われているのが、北米アメリカンフットボールリーグNFLの王座決定戦スーパーボウルが実施された時の日曜日だ。ピザチェーン大手のドミノピザによると、この日は一般的な日曜日に比べて40%も注文が増えるという。そこで、同社は2019年のスーパーボウルに合わせて、試合前日の2月2日から前例を見ないキャンペーン『ポイント・フォー・パイ』(Points for Pies)を展開した。※アメリカではピザをパイと呼ぶことがある。

これは、同社の専用アプリでピザを1回スキャンする毎に10ポイントが付与され、60ポイント集めると無料のピザが1枚もらえるもの。最大の特徴は、スキャンするピザは必ずしもドミノの商品でなくても良い点だ。スーパーの冷凍でも、手作りでも、競合他社のものでさえも対象となり、ポイントが貯められる。アプリのAIシステムが、生地・チーズ・ソースの3点を認識できればどんなピザでも良いという、驚きのものだ。

この特徴を伝えるため、同社CEOはテレビCMに自ら出演し、他社の店舗でそのお店のピザを前にポイント・フォー・パイの企画を語り、「Any Pizza(どんなピザでも)」を繰り返し強調した。

アプリユーザーを拡大することで利益を伸ばす

このキャンペーンの目的は、アプリのダウンロードを促進し自社の潜在顧客のすそ野を広げることだ。同社は業界内でもIT投資で先行しており、今では注文の60%以上がデジタル経由になっているという。コンサルティング会社のデロイトの調査によれば、アプリを介した注文はそうでないときに比べて平均26%も会計額が上がると報告されている。アプリユーザーを拡大することが、さらなる利益をもたらすことは容易に想定できる。加えて、多くのスキャンデータを集めることで、人気のピザの傾向等を商品開発に活かしたり、個々の趣向に合わせたプロモーションを可能にする利点もある。

そのためには、参加の条件を緩和し、最大限敷居を下げることに加え、いわゆる“バズらせる”ことで1人でも多くの人にこの企画を知ってもらうことが必要だ。そう考えれば、多くの国民がピザを消費するスーパーボウルに合わせて、この異例なキャンペーンを開始することは最も理にかなったやり方だ。当然、無料ピザを大量に提供するコストは少なくないが、一方でスーパーボウル公式スポンサーでない同社は、5億円以上するといわれる試合中の30秒CMスポットを購入する費用をユーザーへの特典に回したとも捉えられる。

ただし、ユーザーがポイントを加算できるのは1週間に10ポイントまでと制限されているため、実際は無料ピザを手にするためには最短で6週間アプリを継続的に利用する必要がある。キャンペーンは2月~4月末までの12週間なので、最大で一人2枚までしか獲得できない設計だ。また、無料で提供されるピザはミディアムサイズの2トッピングと決められていることから、売値8ドル程度のものと推定され、決して高価なリワードとは言い難い。そうした条件の中でも多くのユーザーがこの企画に参加し、CEOは「認知度の向上、アプリのDL、会員登録、そして実際のコンバージョン(購買行動)といった全ての項目においてポジティブな効果が示された」ことを明らかにした。

ドミノピザは、こうした斬新なマーケティング戦略や積極的なIT投資により、昨今ではテックカンパニーとして高い評価を受けている。今後も同社の動向に注目していきたい。

ライター:中澤薫

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