・大手航空会社×グローバルスポーツイベントのスポンサーシップ
・有名審判を起用し、マナーの悪い客を注意するプロモ動画を制作
・大会期間中、機内にて全試合のライブ中継を実施
・「ラグビー好き富裕層」をターゲットにした会員獲得・利用促進が狙い


ラグビーの現役審判を起用した機内啓発ビデオを作成

9月20日から11月2日まで開催されたラグビーW杯は、まさに日本列島にラグビー旋風をもたらしたことで記憶に新しい。ラグビーの見どころは激しい体のぶつかり合い、ノーサイドの精神、華麗なパスワーク等様々あれど、その一つが他のスポーツではあまり見られない、審判と選手との独特なコミュニケーションではないだろうか。そこに目をつけたのが、2007年以降W杯の公式スポンサーを務めるエミレーツ航空だ。同社は統括団体であるワールドラグビーの審判スポンサーでもある。

大会初日の9月20日から、同社は機内でラグビーファン達がマナー違反の行為を起こすと、すかさず審判が飛んできて乗客に注意を与える啓発ビデオを公開した。注目すべきは、この審判役を務めたのは2015年には世界最優秀レフリーにも選出されたウェールズのナイジェル・オーウェンスと正真正銘の国際審判である点だ。

ラグビーの審判はマイクを付けているためその発言が観客にも聞こえるが、彼の発言はユニークを交えながら選手を諭す“名言”として注目されるものが多く、発したフレーズがプリントされたTシャツが販売されるほどだ。Twitterでは約38万人ものフォロワーを抱えるオーウェンスは、ラグビーファンの間だけでなく、トーク番組やクイズ番組のMCを務めたり、コラムの執筆を行うなど、タレント的な存在としても世界中で知られている。今回のW杯をもって引退を表明していたことから一層注目されていた。

そんなオーウェンスを起用し、エミレーツ航空が制作したビデオは全5種類。他の乗客の邪魔になる行為や、気分を害する行動を次々に止める内容だが、中でも「フェアプレー」と題したビデオでは、隣の乗客のマフラーが軽く腹部に当たったことで顔面を抑えて過剰に痛がる男性に対し「This is not football!(これはサッカーじゃない!)」と注意するシーンがある。このセリフはかつて実際の試合中に選手に放ったことで彼を一躍有名にした、いわば彼の代名詞であり、ラグビーファンを喜ばせる機転に富んだ遊び心だ。

また、機内にはファーストクラスとビジネスクラスの乗客が利用できるバーカウンターを備えており、そこでのやり取りが収められているビデオもある。同社としてはマナー啓発に絡めて、ハイクラス向けの自社の取り組みもアピールする機会となった。

ラグビーファンを自社ファンへ取り込む

これに加え、機内放送のスポーツ専門チャンネルでもW杯全試合をライブ中継するなど、ファンに寄り添う施策を講じている。今回の日本大会では、44日の大会期間中にヨーロッパやオセアニアを中心に41万人もの外国人が来日したと言われ、さらにその中には富裕層が多いことが特徴だ。同社としては、こうした「ラグビーが大好きな富裕層」をターゲットに、彼らの懐に入り込むコンテンツを提供する。それによってラグビーファンをエミレーツファンに育成し、自社の利用促進につなげる狙いだろう。