・世界的ビールブランドによるスポンサーシップとアンブッシュの巧みな活用法
・ラグビーの国際大会の冠協賛を務め、ラグビーファンに存在感をしっかりアピール。(=スポンサーシップ)
・一方、その直後の大会には協賛せずに、レジェンドを起用し、ビールを飲みながらのTV観戦を誘因する、巧みなTVCMを制作。(=アンブッシュ)


急遽変更した大会日程に合わせてCMを作成

ビールブランドのギネスは、ラグビーの歴史ある国際大会である欧州6カ国対抗戦(シックス・ネーションズ)の冠スポンサーを務めている。本来であれば2月1日から3月14日に開催予定だった2020年大会は、新型コロナウィルスの影響により約7か月中断を余儀なくされたが、現地時間10月31日にようやく最終節の全3試合が行われイングランドが優勝した。

そして続けざまに、11月13日から4週間にわたって今度は8カ国参加によるオータム・ネーションズカップという新たな大会が開催された。これは例年7月と11月を中心に行われる代表の強化試合がコロナの影響で白紙となったことを受けての代替大会。シックス・ネーションズの参加国にフィジーとジョージアを加え無観客で実施された。

ギネスは、このオータム・ネーションズカップの開催に合わせて、『Plea for TV(TVの懇願)』というCMをイギリス国内向けに制作。イングラド、スコットランド、ウェールズの元代表選手を起用し、「週末のチャンネル権を、どうかラグビーファンに譲ってくれ」、「ギネスでも飲みながら良かったら一緒に楽しもうよ」等と、同居人の説得に難航するラグビーファン本人に代わって懇願するユニークな内容となっている。

今、ラグビーファンは会場に行けないだけでなく、パブでの観戦も密を避けるために難しく、試合を見るには自宅でのTV観戦しかない。そのことをレジェンドプレイヤー達が切実に訴えるのだ。見たい試合があるけど家族やルームメイトとのチャンネル権争いに負けて涙をのんだ経験のある多くのスポーツファンにはグっと刺さるCMである。

状況に臨機応変に対応しファンへのイメージを作り上げる

着目すべきは、このCMの中で『オータム・ネーションズカップ』の名称は1度も登場せず、動画を投稿したギネスの公式Twitterのツイートの中にも同様に大会名の言及はない。その代わり、今週末行われる試合と言うことで、大会を暗に指している。つまり、非スポンサーがコンテンツに便乗するアンブッシュマーケティングの手法なのである。実際、大会の公式WEBサイトと見るとそこにギネスはもちろん、大会スポンサーの紹介はない。試合会場への広告掲出はあるものの、急遽開催が決定した経緯から考えると協賛権益の契約規定など詳細ルールの設計が間に合わなかったのか、いずれにしてもギネスは同大会の名称をプロモーションに使用できなかったと考えられる。

直前に行われたシックス・ネーションズでギネスは冠協賛として大会名称はもちろん、ゴールポストやフィールドへの看板露出など、ラグビーファンにその存在をしっかりと植え付けている。その流れを汲み、続くオータム・ネーションズカップでもラグビーファンに寄り添うメッセージをユニークに発信することで、「ラグビー=ギネス」のイメージを長期間にわたって定着させ、ラグビーファンが家で観戦する際のビールはギネスを選びたくなるように誘導したこの事例は、アンブッシュのプロモーションという観点からも参考になるだろう。