・北米での世界的スポーツイベント(アメフト)を利用した、新興スポーツリーグ(ラグビー)の開幕プロモーション
・同じ”フットボール”がつくスポーツだけに、「ワールドチャンピオン」と称した看板広告をイベント開催都市にて掲出
・看板広告を見た現地の住人が異論を唱える動画コンテンツを制作


アメリカで13人制ラグビーリーグ王者が自チームの宣伝

2019年2月に北米アメリカンフットボールリーグNFLの決勝戦、スーパーボウルがアトランタで開催された。この試合に先立ち、オーストラリアとニュージーランドのクラブチームで構成される13人制ラグビーのプロリーグ、ネーションズラグビーリーグ(NRL)がプロモーションを行った(今秋、日本で行われたW杯は15人制で、同じラグビーでも別の競技となる)。

その内容は、スーパーボウルが開催されるアトランタ市内4カ所に、NRL優勝クラブであるシドニー・ルースターズの選手たちと“フットボールのワールドチャンピオン”の文言が入った看板広告を出すというもの。これはアメリカにおいてフットボールかアメリカンフットボールのことを指すが、南半球でフットボールといえばラグビーであることを利用している。

この狙いについて、NRL代表のトッド・グリーンバーグは次のように述べている。「アメリカ人は、NBA(北米プロバスケットボールリーグ)であれMLB(北米プロ野球リーグ)であれNFLであれ、いつも国内リーグの王者をワールドチャンピオンと主張している。彼らがそう主張するのであれば、我々にできないいわれはないだろう。これは我々の2019年へ向けたプロモーションの口火を切る、図々しいながらもおもしろいやり方だ」

要は、NFLに先手を打つ形で“フットボールのワールドチャンピオン”の称号を自らのリーグ王者に冠するプロモーションを行ったのだ。さらに連動して、開催地の人々に看板の内容について街頭インタビューした動画コンテンツを配信した。この動画は「アメリカはもうじき新たなワールドチャンピオンの称号を与えようとしている。しかしそれは違う。すでに昨年、我々が実行済みなのだ」という字幕で始まるものだ。

アトランタの人々は、看板の内容について、「何?フットボール?ワールドチャンピオン?」、「違うわよ。気でもおかしくした?」、「でたらめだ」と、異口同音に異を唱えている。しかし、これはアメリカにおいてラグビーがマイナースポーツであることから当然の反応。ただ、アメリカだけでなく世界中のスポーツシーンが注目するスーパーボウルに絡めて話題を集めるPRを行うことで、シドニー・ルースターズには大きな露出となったことは間違いない。

ちなみにルースターズは、スーパーボウルの約2週間後の2月17日にイングランドで開催されるワールドクラブチャレンジへの出場を控えていた。この試合は、イングランドやフランス、カナダの北半球のクラブで構成されるスーパーリーグの王者と、南半球のNRL王者が対戦するいわば13人制ラグビーの世界一決定戦だ。この大一番を盛り上げるためのプロモーションの一貫として、世界的人気のスーパーボウルを活用したと言える。

他の競技のビッグイベントに便乗する形で、自分たちのPRを行う。これも一つのアンブッシュマーケティング と言える面白い事例だ。