・ニュージーランドのビールメーカーとラグビー同国代表チームのパートナーシップ
・チームカラーの黒にちなんで、自身が持ち込んだ洋服を黒く染めるランドリーをオープン
・自社製品とは関係ないが、体験を通してライフスタイルに浸透し、ファンの母国代表チームとのエンゲージメントを高める施策


ビール会社が服をチームカラーに染めるランドリーをオープン

ニュージーランドの老舗ビールメーカーであるライオン社は、1986年から実に30年以上に渡り、ステインラガーのブランド名でラグビー自国代表のスポンサーを務めている。

そして昨年のラグビーW杯開催に際し、ステインラガーはビールメーカーらしからぬユニークなアクティベーションを展開。『Colour Yourself Loyal (自分自身を忠誠で染めろ)』というもので、ニュージーランド最大の都市オークランドに期間限定のブラック・ランドリーをオープンした。そこでは代表チームの愛称『オールブラックス』にあやかって、衣服を真っ黒に染め上げるサービスが提供されたのだ。

利用を希望する場合はWebサイトから予約をし、1着だけ持ち込むことができる。またキャンペーンが局地的に留まらないよう、遠隔地に住むファンのためにはブラック・メールという配送サービスを用意。応募者の中から期間中毎日1名の当選者が選ばれ、配送料無料でこのサービスを利用できるようにした。

預けられた衣類はプロの手で黒く染め上げられ、乾燥後ステインラガーのロゴをあしらった『Colour Yourself Loyal』のタグを付けて仕上げられた。待ち時間の着替えも提供されるので、着ている服を染めていくことも可能だ。利用者は加工を待つ間、ランドリー内でラグビーの試合を観戦したりビールを楽しむことができる。なお、利用できるのは18歳以上(ニュージーランドでは飲酒は18歳から)とされている。

倒したいライバル国のユニフォームや、仲間でお揃いのウエア、さらには処分に困っていた元夫との結婚式で着たウェディングドレスまで、様々な思いのこもった1着が、チームへの忠誠心を示すシンボルアイテムへと生まれ変わりを遂げた。服を真っ黒に染める見た目のインパクトに加え、それぞれ熱のこもったストーリーを伴ったブラック・ランドリーの体験は、ネットニュースやSNSでも多数拡散されていった。

個人のライフスタイルへ浸透し、エンゲージメントを高める

この企画については、自社の製品とは全く関係のない方法でアクティベーションを行うことは反発もあったのではと推察できる。しかし、ブランドへのエンゲージメントを高めるためには、個々のライフスタイルの中へ浸透することが、非常に効果的だ。今回のキャンペーンはまさにそれを目的とした戦略といえる。

アメリカで大学教授ら有識者が運営するWEBサイト『ミレニアル・マーケティング』では、マーケティング戦略を設計するにあたり、考慮すべき重要なポイントとして次の3点を提言している。

① MAKE THE EXPERIENCE PERSONAL AND INTERACTIVE(個人的かつ相互的な体験を提供する):「自分ごと」として捉えられる、生活の一部となるような体験が、個人で完結するのではなく体験を提供する側との相互コミュニケーションの上で成り立っていること。
② MAKE THE EXPERIENCE SPECIAL(特別な体験にする):その場でしか味わえない、その時しか得られない体験を提供すること。
③ MAKE THE EXPERIENCE SOCIAL(ソーシャルな体験にする):体験したことを周囲に伝えたい、他者と分かち合いたいと思うようなコンテンツであること。

これは元々美術館や博物館関係者向けの提言であったが、現代のマーケティングに求められる本質を突いており、スポンサーアクティベーションにも共通している。今回のステインラガーが行ったキャンペーンは、この3点を満たしているという点から、まさに好事例と言えるだろう。