・お菓子ブランドによる大学スポーツのボウルゲームでのアクティベーション
・対戦する学校のロゴ入りパッケージを制作し、勝利チームの選手に持たせて記念撮影
・お菓子と同じ形の被り物を制作し、被っている観客はTV中継でピックアップ
・勝利チームの選手が監督の頭にシャワーのようにドリンクを浴びせる恒例行事(ゲタレードシャワー)に加えて、お菓子もシャワーのように浴びせる
アメリカスポーツ界、年末年始の風物詩の大学アメフトで注目のスポンサーシップ
年末年始、アメリカスポーツ界の代表的なイベントといえば大学アメリカンフットボールだ。特に年明けに行われるレギュラーシーズンの成績上位4校がトーナメント形式で頂点を争うBCS(ボウル・チャンピオンシップ・シリーズ)の3試合はそれこそ全米中の関心を集めるビッグイベントとなっている。また、それ以外にも、主に温暖な南部の都市を中心に、レギュラーシーズンで対戦しなかった異なるカンファレンスの強豪チームが激突する試合が行われる。これらは通称ボウルゲームと呼ばれ、BCS以外でも多くの観客を集める。
このボウルゲームは基本的に冠スポンサーがついており、BCSの舞台となる一部の試合を除く大半の試合が○○ボウルと企業名がつけられている。そのため、スポンサー変更によって数年単位で試合名が変わったり、企業が別の開催地と命名権契約を締結したことで同じ〇〇ボウルでも場所が違うことなどは珍しくない。ファンにとっては分かりにくい状況ではあるが、これは各企業が大きな告知効果があると認めているからこその頻繁な名称変更と言える。
そして近年、このボウルゲームで存在感を高めているスポンサーシップがお菓子ブランドの『Cheez-It』だ。その名の通り、チーズ味のクラッカーである同ブランドは2018年、19年とアリゾナ州フェニックスで行われる試合の冠スポンサーを務めていたが、今年はフロリダ州オーランドが会場の試合の命名権を取得している。オーランドの方が、フェニックスと比べて強豪が参加する好カードと、よりグレードの高いボウルゲームのスポンサーとなる。これはさらに大きな露出が期待できる訳で、『Cheez-It』がボウルゲームでの広告にさらに力を入れることを意味する。
他にはない独自アクティベーションで露出効果を大きく高める
この決断に至って背景として『Cheez-It』が他のスポンサー企業と比べて、独自のアクティベーションで確固たる存在感を確立できていることもあるだろう。その大きな理由が、スナックという商品の個性をうまくいかし単なる広告掲出にとどまらない施策を打ち出している点だ。
まず、箱型のパッケージで売られている同ブランドだが、ボウルゲームでは対戦する両校のロゴを使った特製パッケージを制作。これは出場する両チームの選手たちにとっても記念になるので喜ばれる。そして、試合に勝った選手たちがこのパッケージを持って写真撮影に応じることで大きな告知となる。また、商品と同じクラッカー型の被り物を作成。それを被っている観客は、目立つのでTV中継によく映される。
#tbt to a great night of college football between @AF_Football & @WSUCougars! #CheezItBowl pic.twitter.com/1KIcbwat0J
— CHEEZ-IT (@cheezit) January 9, 2020
そして最も目立つアクティベーションが『Cheez-It』シャワーだ。アメリカスポーツ界では伝統的にビッグゲームで勝ったチームは試合終了間際や直後、巨大タンクに入ったドリンクを指揮官に頭からかける行為が恒例となっている。これは試合中に飲まれるドリンクとしてゲタレードが定番となっていることで、ゲタレードシャワーと呼ばれる。
Cheez-Itボウルでは、このゲタレードシャワーに続いてタンク一杯のクラッカーを監督の頭にかけるセレブレーションを実施。もちろんこれは他のボウルゲームにないCheez-Itのみのアクションで、試合のハイライト映像などで多く使われる抜群の露出効果を誇っている。
GATORADE BATH FULL OF CHEEZ-ITS! pic.twitter.com/OTO0ZWH8zr
— Yahoo Sports College Football (@YahooSportsCFB) December 28, 2019
こういった様々な仕掛けによって、数あるボウルゲームの中でもCheez-ItはブランドのPRに成功している代表的なスポンサーシップとなっている。試合の冠スポンサーになることで、企業名やブランド名を大きく露出させることはできるが、これはあくまで試合のプレーが止まっている隙間時間であることがほとんどだ。しかし、上記のようなアクティベーションを盛り込むことでCheez-Itは、試合中や試合直後など盛り上げる場面でも違和感なくPRできている。これは多くの企業が参考にすべき視点だ。