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オンライン事例

WEB会議システムTeamsをNBA無観客試合で活用するマイクロソフトの攻めの姿勢

https://twitter.com/Microsoft365/status/1287825267055104002


・IT大手企業がコロナ禍において、プロスポーツリーグとのパートナーシップ契約を更新
・リーグ戦再開に際し、オンライン会議システムによる新たな観戦スタイルの提供。コートサイドを囲む大型モニターに自宅で観戦しているファンを表示。独自の機能でファンが実際に観客席に座っているように見える。
・ファンに対して、独自の機能の知名度を高めるだけでなく、アプリダウンロードを促進したり、その安定性や機能の優位性をアピール。


リーグが中断から1か月後にパートナー契約を締結

3月に選手の新型コロナウィルス感染が発覚したこと等から2019-20シーズンを中断した北米プロバスケットボールリーグNBAは、厳格な感染防止対策を講じた上で、およそ4ヶ月半後となる7月30日にシーズンを再開した。これは出場するチーム、関係者をフロリダ州オーランドのディズニー・ワールド・リゾートに集めて外部との接触を断ち、Bubbleと呼ばれる隔離した状態で実施している。そのため試合は無観客で行われ、アリーナで声援を送ることは叶わない。そこでNBAがタッグを組んだのがマイクロソフト社だ。

実は、マイクロソフトは新型コロナが世界中で猛威を振るっていた4月16日に、NBAとのパートナー契約を発表していた。リーグが中断され先の見えない混乱の中で、契約を見送るどころかプロスポーツのあり方にかつてない大きな転換期が訪れる未来を見越し、そこに自社のテクノロジーの活路を求める攻めの一手を打っていた、ということになる。

マイクロソフトは2020-21シーズンから、NBAおよび女子のWNBA、育成リーグであるGリーグ、アメリカ代表チームにおける、公式AI(人工知能)パートナー兼クラウド&ラップトップパートナーとなることを発表している。同社製品の学習機能とNBAの放送テクノロジーをかけ合わせることで、利用者それぞれの嗜好に合わせた試合放送やコンテンツの提供などが可能となる。それにより、総計18億人にもなる世界中のNBAファン一人ひとりの体験をより充実させるようカスタマイズしていくという。

ファンがバーチャル上で観客席に座って観戦

そうした動きに先んじて行われた取り組みが、マイクロソフトが提供するオンライン会議システムTeamsによる、新たな観戦スタイルの提供だ。昨今では様々なオンライン会議システムがあるが、Teams独自の特徴である『Togetherモード』を活用することで、ファンはあたかも試合会場のコートサイドで試合を観戦するような感覚を味わうことができるというもの。

Teamsと同様のサービスにはZoomやGoogle meetが挙げられるが、複数人がWEB上で集合する場合、ひとり1人の顔が四角いフレームに囲われた状態で表示されるグリッド・ビュー形式が一般的だ。一方でTeamsのTogetherモードは、参加する全員が画面上の仮想空間に集まっているような表示形式で、講義であれば講堂、飲み会であればバーやカフェといった空間を共有している感覚で会話ができるというもの。マイクロソフトによると、これはおもしろいだけでなく、脳内の情報処理をスムーズにしてストレスを軽減させる効果があると科学的にも証明されているという。

NBAではコートサイドを囲むように『ファン・ウォール』と呼ばれる大型のモニターを設置。そこにTogetherモードを通じて試合を観戦するファン約300人を表示し、あたかも客席にファンがいるかのような状況を作り出した。ファンからすれば自分がアリーナにいるように感じられ、選手にとってもファンの表情や声援などの反応がリアルタイムに返ってくるため従来の試合環境とより近い状態で試合に臨むことができる。

このファン・ウォール観戦枠は各クラブにも割り当てられ、運用もクラブに任せられている。シーズンチケットホルダー向けのサービスとして提供するクラブもあれば、HPのフォームから誰でも予約できるケースもある。シャックの愛称で親しまれた元人気選手のシャキール・オニールなど、度々有名人がこのファン・ウォールに登場することも話題を集めている。

マイクロソフトは全世界にファンをもつNBAの観戦スタイルを自社の技術を活用し一新することで、TeamsおよびTogetherモードの知名度を高めるだけでなく、NBAファンのTeamsアプリダウンロードを促進したり、その安定性や機能の優位性をも世界中にアピールすることができる絶好の機会となった。従来通りのやり方が通用せず、様々な改革が差し迫る我々が今置かれたこの状況は、ポジティブに捉えればそれだけ新たなチャンスがある好機にもなり得るかもしれない。

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ライター:中澤薫

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