・学生アスリートと健康飲料ブランドとのパートナーシップ
・商品PRの協力や商品提供といった一般的なパートナーシップの内容だけでなく、ビシネスパートナーとして選手は同社の株も保有。
・新興ブランドだからこそ、若いアスリートと共に成長していくストーリーを作ることで若い世代の認知と共感を得る狙い。
コネチカット大1年生の逸材、女子バスケのアジー・フッド
7月上旬、NCAAは、学生アスリートが自身の肖像権を使ってスポンサー契約を結ぶことを認めた。Name、Image、Licenseの頭文字をとりNIL契約と呼ばれるこの制度を使い、ここまで多くの学生アスリートたちが様々な契約を結んでいる。
アメリカンフットボール、男子バスケットボールと大学の2大人気スポーツで将来のプロ入りが有望視され、TV、新聞など多くのメディアに露出している世代屈指のトップアスリートたちが、NIL契約を結ぶのは誰しもが予想していた流れだ。
ただ、それだけでなく競技レベルはそこまで高くなくとも、SNSで多くのフォロワーを持つことで大企業と契約した選手もいる。また、地域に根付いたレストランチェーンなどローカル企業が、知名度はなくとも地元の大学で頑張っている選手たちをサポートする小規模の契約を結ぶなど、様々な関わりが生まれている点も見逃せない。(詳しくは「NCAAに激震、学生アスリートの肖像権収入を認めたことで起きた変化」を参照)
プロスポーツ大国のアメリカでは、アメリカンフットボールのNFLを筆頭に野球のMLB、バスケットボールのNBA、アイスホッケーのNHL、サッカーのMLSなどで活躍するスター選手たちが数多くいる。それでも企業が学生アスリートとNIL契約を結ぶのは、上記の選手たちに比べると、全世代的な知名度は低くとも10代、20代と同世代の若者たちへの訴求力が高く、共感してもらえることが主な要因だろう。
また、トップ選手への階段を登っている若き原石たちとのパートナーシップだからこそ作り出せるものがある。女子バスケットボール、コネチカット大1年生のアジー・フッドは高校時代から大きな注目を集めている逸材。それを踏まえると彼女がアスリート向けの健康飲料、サプリメントなどを手がけるBio Steel、メキシコ料理チェーンのChipotleとNIL契約を結んでいるのは驚きではない。
I’m so excited to be a part of the Chipotle family! Thankful for the opportunity. Chipotle is my lifeeee!!
@ChipotleTweets pic.twitter.com/26wRTx5Ltn
— Azzi Fudd (@azzi_35) October 2, 2021
BioSteelとの契約はスター選手と同じく株式の保有を含むもの
ただ、BioSteelとの契約ではビシネスパートナーとして、同社の株も保有しているのは特質すべきことだ。設立から10年弱と新興ブランドのBio Steelでは、他に契約している選手たちも株主になっている。それはパトリック・マホームズ(NFL)、ルカ・ドンチッチ(NBA)など、すでに何十億、何百億円も稼いでいるトップ選手たちと契約を結ぶための大きな武器となっている。しかし、大学生かつスポーツ界全体でいえばマイナーな女子バスケのフッドにこの契約を結ぶのは異例だ。
BioSteelのCEOは、「彼女はどの企業とも契約することができる選手ですが、実際に一緒に活動するブランドの一部を所有することは、普通の契約とは違ったものとなります」と言及。企業が契約金を支払い、選手が商品やサービスをPRするといった一般的なパートナーシップの関係とは違うことを強調する。ブランドの知名度を得るためにトップアスリートを広告塔に使うのは重要だ。ただ、新興だからこそ、まっさらな若いアスリートを一般的な契約を超えた枠組みでサポートし一緒に成長していくストーリーを紡いでいくこともブランドの発展にとって効果的だろう。
特にプロテインやサプリメントなどはアスリートにとって日常的に使用するもの。フッドを通して10代の同世代のアスリートへの認知度、共感度を高めることができれば、同社の商品をこれから長期にわたって使用する可能性が高いファンの獲得にもつながるのは魅力的だ。
また、フッドの場合、もう1つ注目すべき点があり、それはNBAのスーパースターであるステフィン・カリーの経営する会社『SC30 Inc.』の契約アスリートであるところだ。カリーが行っている有望選手を対象とした育成キャンプにフッドが参加していたことから両者の関係は始まっており、SC30 Inc.はスポンサー契約のサポートを含めフッドをコート内外で支えていくことになる。企業にとっては、フッドとの契約を通しカリー側と接点を持てることにつながればそれも1つの魅力になり得る。彼女のNIL契約がどのような効果を生んでいくのかとても興味深い。